2011.04.30
軽いコップのメリット・デメリット
10数年前、どこかの喫茶店でアイスコーヒーか何かを頼んだとき、半透明のプラスチック製のコップに入って、飲みものが出てきた。

このコップがじつに軽くて持ちやすく、「軽いコップというのはこんなにいいものか」と気に入ってしまった。その後、似たようなコップを店で探して買い、それいらいずっと使っている。

しかし、使っていくうちに、軽いコップにはデメリットもあることがわかった。机の上に置いたとき、コップに手がぶつかって、倒してしまいやすいのだ。この軽いコップで、飲みものを何回ぶちまけたか、数え切れない。

コップの役割とは、それを使って飲みものを飲むことだ。よって、「飲みやすい」「持ちやすい」といったものが最も重要な機能だろう。飲み口を薄くしたり、素材を軽くしていけば、「飲みやすい」「持ちやすい」という点では性能が上がっていく。しかし、それによって、置いたときの安定感が失われたり、壊れやすくなったりもする。

コップに限らず、何かを作るということは、軽くするのか、重くするのかといった選択、設計判断の積み重ねだ。その選択、判断をどのようにおこなっても、そこから導かれるメリットとデメリットがあり、完璧なものはない。そこで何を基準に判断するかは、どういう機能や性能や求められていて、それがどのような比重で重要なのかによる。

軽いコップに手がぶつかって、飲みものをぶちまけるという事故を繰り返していくうちに、私は次のような運用方法を確立した。

1)軽いコップを使うときは、あまり手の近くに置かない。
2)軽いコップを使うのは、なるべく水を飲むときだけにする。

この2点に配慮すれば、飲みものをぶちまけるという事故を減らし、事故が起きたときも被害を小さくすることができる。

どんなものにでも、想定されている運用方法、「使いかた」がある。その「使いかた」を逸脱して、どんなふうに使っても完璧なものというものは存在しない。


関連エントリ:
設計とは「制約の管理」である
http://mojix.org/2008/07/10/management_of_constraints