2012.07.10
投資に対する免疫力
以前、投資とビジネスの違いについて書いたことがある。

投資とビジネスの違い
http://mojix.org/2008/05/14/investment_business

<「投資」は、自分で結果を動かせない。
結果を動かせないから、結果がどうなるかを「見通す」しかない。
この「見通し」の力で決まるのが投資だ>。

<「ビジネス」は、自分で結果を動かせる。
売上も利益も、自分で何らかの価値を作り出した結果だ。
「価値を生み出す」力で決まるのがビジネスだ>。

投資とビジネスでは、結果を動かせるかどうかも違うのだが、利益を生み出す原理も違う。

投資は「利回り」なので、あるていど元手(もとで)がないと儲からない。投資の場合、元手の1割も儲かれば大成功である。むしろ、損をしてしまうことが少なくないし、手数料もとられる。投資を薦める業者というのは、多かれ少なかれ、この手数料を得ることを目的にしている。

いっぽうビジネスは「収益」であり、生産した価値を売るので、少なくとも自分の労働力さえあれば、元手なしで収益を生み出せる。ビジネスにもコストはかかるが、よほどの大バクチをしない限り、元手が減ることは少ない。

株や不動産をはじめ、世の中には投資を薦めてくる業者がたくさんいる。私は投資そのものが悪いとは思っておらず、どちらかといえば好きなくらいなのだが、あまりお金がない人は、投資はやめておいたほうがいいと思う。その理由は、少ない元手で投資をやっても、リスクやコストが大きすぎて、単純に儲からないからだ。

あまりお金がない人は、投資でなくビジネスに集中したほうがいい。投資のことを考えるのは、あるていど金持ちになってからでいいと思う。

しかし一方で、これまで投資に縁のなかった人が、急に大金を得て投資に手を出し、大失敗するというのもときどき聞く。40年間ずっとマジメに働いてきたサラリーマンが退職して、投資で退職金をなくしてしまうようなケースだ。こうならないためには、最低限のマネーリテラシーは、普段から持っておく必要がある。

そのためには、あくまでも勉強として、少しだけ投資をやるというのがちょうどいいかもしれない。投資に対する「免疫力」をいくらか持っていれば、おかしな話を見分けたり、過大なリスクを取らないよう防御することができる。

「免疫力」というのは、完全に拒絶するのではなく、「あるていど受け入れる」ことだ。「投資はおそろしい」「投資はいかがわしい」というような完全拒絶は、投資に対する知識も拒絶してしまうので、おかしな儲け話などの「攻撃」に対して、むしろ脆弱である。退職金をなくしてしまうようなケースは、まさにこれだろう。


関連エントリ:
ポール・グレアム「財産を失う理由の大部分は浪費をしたからではなく、誤った投資をしたせいだ」
http://mojix.org/2010/07/14/paul-graham-money
投資とビジネスの違い
http://mojix.org/2008/05/14/investment_business