2012.08.12
「マンションの末路」=「建て替え」というのは日本ならではの特異な発想
NIKKEI住宅サーチ - マンション管理サテライト 第155回 老朽化すれば建て替えればいいという発想に、ちょっと待った!
http://sumai.nikkei.co.jp/edit/kanri/detail/MMSUm0000003082012/

<わが国にはリゾート型マンションを含め、現在およそ10万棟の分譲マンションがあるが、国土交通省の調査によると建て替えできた分譲マンションは149件(2010年4月現在)しかない。全体のわずか0.15%にとどまっている。建て替えを成功させるには、いくつもの好条件が重なる必要がある。せっかく住民の合意形成がなされても、参画してくれる協力事業者が見つからず、事業の中止を余儀なくされるケースは珍しくない。採算が合わなければデベロッパーは見向きもしないのだ。“現実”という壁がマンションの再生を阻んでいる>。

<そこで、新たな解決手段の1つとして選択肢に加えたいのが「区分所有権の解消」という方法だ。建物はすべて解体し、敷地は持分割合に応じて換価処分し、解散してしまおうというのだ。日本では馴染みがないが、諸外国では決して珍しいことではない。これにより建て替えという呪縛から逃れることができる>。

<今後、高経年マンションの管理組合は「大規模修繕による延命」「建て替えによる再生」、そして「区分所有権の解消」という3 つのパターンの中から自宅マンションの末路を選ぶことになる。老朽化すれば建て替えればいいという発想はベストアンサーではないのだ。このことを管理組合の皆さんには、ぜひとも知っておいてもらいたい>。

これはマンションを持っている人や、マンション購入を考えている人は、たしかに知っておくべき話だろう。

日本では、老朽化したマンションは「大規模修繕による延命」か、「建て替えによる再生」しか想定されていないが、諸外国では「区分所有権の解消」がむしろ一般的だとのこと。

<アメリカの場合、5分の4以上の賛成で区分所有権の解消を認めており、他方、老朽化による建て替えは予定(想定)されていない。ドイツやフランスでも建て替えは予定されておらず、区分所有権の解消については客観的な要件をもって行うことが認められている。アメリカは積極的に所有権の解消を認め、ドイツとフランスは消極的に所有権の解消を認めるという違いはあるものの、3国とも建て替えは想定していない。建物の利用に限界が来たら区分所有権を解消して土地を換価処分し、別の場所に住み移ればいいという考え方が定着しているからだ>。

しかし日本では、この「区分所有権の解消」がきわめて困難なため、東日本大震災で被災したマンションでも問題になっているとのこと。

<日本では昨年3月の東日本大震災の発生を受け、日本マンション学会が被災したマンションの処理の円滑化の観点から、区分所有関係の解消に関する制度の創設を提案している。「被災マンションが放置されることは、区分所有者の財産権のあり方として不合理であり、被災地の円滑な復興を著しく妨げることにもなる」。「現行制度では区分所有関係の解消には全員の合意が必要とされるため、事実上、その実現は困難」として、特別多数決により解消を認める案や、スラム化したマンションを買い取る公的機構の創設などを提案している。わが国も“欧米化”の必要性が迫っているといえよう>。

こんな問題があったとは知らなかった。法制度が現実とフィットしていないために、復興の妨げになってしまうわけだ。

<繰り返しになるが、「老朽化すれば建て替えればいい」という発想はベストアンサーでもファイナルアンサーでもない。マンションストック数は2011年末現在で約579万戸、このうちの100万戸が築30年を経過している。老朽マンションの終末期問題は、もはや先送りできないのだ。日本再生戦略を打ち出した「フロンティア国家」日本として、マンション再生の新たな道筋を切り開く必要性がある>。

マンションの老朽化も問題だが、日本の場合、なんといっても法制度が老朽化しているのだろう。いまの時代にフィットしない古い法制度が残りつづけており、それが足かせになって、前向きな変化を阻(はば)んでいるのだ。


関連エントリ:
日本の集合住宅・マンションの歴史がわかる「集合住宅博物館」
http://mojix.org/2009/05/14/housing_museum
日本の賃貸住宅ではなぜ保証人を要求されるのか 「保護」がむしろ「弱者」を生む日本の構造
http://mojix.org/2009/04/02/chintai_hoshounin