2012.08.29
日本人は部屋全体を明るくしすぎる
昨日の「黒を使うな」につづき、「」ネタということで、照明の話題を。

マスタープラン一級建築士事務所 - タスク・アンビエント照明
http://reno.mpl.co.jp/post_314.php

<火曜日に受けた住宅評論家の南雄三さんのセミナーでも言われてましたが、『日本人は部屋全体を明るくしすぎる』傾向があると言われてます。最近読んだ宮脇先生の本でも書かれてました>。

<天井の真ん中に蛍光灯のシーリングライトで部屋を煌々と明るく、というパターンが多い。暗いのが貧乏臭いという感覚があるような気がしますが、欧米は室内が圧倒的に暗いことで有名>。

<黒目の日本人に比べ青い目の欧米人は光に敏感。明るすぎるのが苦手(だからサングラス必須)>

これは兵庫県西宮市の建築家、小谷和也氏のブログ。

日本人は部屋全体を明るくしすぎる。たしかにそんな気がする。

欧米人がよくサングラスをかけているのも、<黒目の日本人に比べ青い目の欧米人は光に敏感>だからなのだ。

All About:照明・LED関連情報 - 明るさ好きの日本人(2007年04月12日)
http://allabout.co.jp/gm/gc/28823/

<同じ照度でも光源の光色(色温度)によって明るさ感は異なります。新品の蛍光ランプで白色光と電球色を見比べた場合、大半の人が白色光のほうが明るいと答えます。同じ明るさのものでも、人の目にはそのように見えるから不思議です>。

<実際、電球色は暖かな光で家庭的な雰囲気が得られるので、私はお客さまにアドバイスする段階で電球色を薦めることがよくあります。しかし、人によっては電球色が暗くみえるのでイヤだ、と言うこともありました>。

<もともと、私たち日本人は暖かい電球色よりさわやかで活動的な白色の光色を好む傾向があります。これにはいろいろな理由が考えられますが、現に住宅の照明で白色光の比率が多いことは紛れも無い事実です>。

日本人は、蛍光灯の白色光を好む傾向が強いそうだ。

これを書いている中島龍興氏は、元ヤマギワの照明デザイナーとのこと。All Aboutで10年近く、照明に関するコラムを書かれているようで、おもしろいものがたくさんある。

All About:照明・LED関連情報 - 歴史から見る日本の住宅照明(2008年04月03日)
http://allabout.co.jp/gm/gc/28787/

<日本の住宅照明は天井の真ん中に大形の蛍光灯シーリングライトをつけて部屋を万遍無く明るくすることが代表的なパターンであることは以前にも記事で取り上げました。しかし何故このような照明が私たち日本人に受け入れられているのかについて、今回はちょっと視点を変えて、歴史的な背景から検証してみました。そこには幾つかの理由が見え隠れします>。

<戦後しばらくしてから蛍光灯が普及し始めました。昭和31年に日本で開発された100ボルト点灯の30W環型蛍光ランプが小型で、当時の3畳とか4.5畳といった部屋の間取りに器具の大きさが調和していました。(明かり文化と技術 照明普及会編参照)
 さらに明るさも採れたことで、蛍光ランプ環型の器具が普及し、その影響が今日にまで及んでいると考えられます>。

All About:照明器具・間接照明 - 光源のよもやま話2 蛍光灯の起源(2003年06月20日)
http://allabout.co.jp/gm/gc/28962/2/

<日本の住宅照明は、蛍光灯の普及率が約80%と言われています。先進国の中では無類の蛍光灯好きの民族といえるでしょう。何故これほどまで蛍光灯が住宅に普及したか、いろいろな説がありますが、ここでは有力説を4つほどご紹介しましょう。

1)少ない電力で明るい。
2)ランプ寿命が長い。
3)高温多湿の気候風土にあの白い光が涼しげである。
4)影の少ない柔らかな光は明かり障子の光に似て感覚的に受け入れられる。

省エネ、経済的、雰囲気といったところがポイントでしょうか。どれか1つというより、全てに関係しているといえるでしょう>。

<最近の日本の住宅照明を見ると、ちょっとした異変が起こっています。20年前をピークに住宅照明への蛍光灯の普及率は微妙に低下しています。たしかに、集合住宅の窓明かりを見ていると、それまで白っぽい光で生活していた様子が電球のような暖かな光に少しづつ変ってきています>。

たしかにそんな気がする。<先進国の中では無類の蛍光灯好きの民族>である日本人も、最近は白っぽい光から少しずつ脱しつつあるようだ。

日本人の特殊性 - 照明に対する意識(2007-02-13)
http://eldama.exblog.jp/5143552/

<昭和25年生まれの私の世代に共通することかも知れませんが、小さい頃は明るい照明に憧れたものです。幼い頃に40Wや60Wという暗い電球で過ごしたからだと思います。電球に傘をつけたら部屋が明るくなったり、100W電球が登場してその明るさに驚いたり、蛍光灯の白くて明るい照明には感動すらしたものです>。

<そういう時代を過ごしたせいでしょう、とにかく部屋を明るくすることが好きでした。贅沢というか豊かな気分になったものです。日本が経済的に豊かになってくると、次は照明器具や照明の色を気にするようになりました。青白い蛍光灯の色が嫌になったんですね。それで、太陽光に近い光を放つ蛍光灯が開発されるようになったのでしょう>。

これは渡航国数40か国という「国際人えるだま」さんのブログ。たしかに、団塊くらいの世代は特に、<小さい頃は明るい照明に憧れた>といった体験によるところも大きそうだ。

<私には、長い間、明るさへの憧れと経済性というものがいつも意識下にあったと思います。白熱灯がいい感じの照明だと分かっていても、消費電力が気になって仕方がありませんでした。私のこの意識が変わったのは、外国でのアパート住まいの経験からだと思います>。

<イランのアパートの照明は基本的に白熱灯でした。蛍光灯もありましたが、トイレとか間接照明に使われている程度でした。居間などにはシャンデリアが主照明でしたが、いずれも白熱灯でした。間接照明やらシャンデリアなどすべてを点灯すればかなり明るくなりますが、かなりの電力消費になったはずです>。

<そんな生活をしているうちに私の照明に対する意識が目覚めました。明るいだけでは面白くないということです。やや暗くても陰影のある照明はいい雰囲気が出るものです。それと気分的にも落ち着きますね>。

<やや暗い電球などの照明による陰影のある表情を好きになったのは、年齢だけのせいではないでしょう。昔の貧しい頃の体験がまともな感性の邪魔をしたんじゃないかと思っています。暗いレストランは今でも好きではありませんが、明るいだけの照明では味気ないですね。日本ではないでしょうけど、外国の暗いレストランって料理が見えないくらいのもありましたからねぇ>。

えるだまさんは、小さい頃の体験や憧れ、また経済性への配慮から、当初は蛍光灯派だった。しかし、イランなどでの海外経験を通じて照明に対する意識がめざめ、間接照明やシャンデリアなどの白熱灯が好きになった、とのことだ。

こうして関連するものをいくつか読んでみても、日本人は蛍光灯の白色光が好きで、欧米に比べると部屋を明るくしすぎる、という傾向があるのは間違いなさそうだ。

最近は日本もインテリアに凝る人が増えてきて、間接照明などもじょじょに広まってきているようだが、それでもまだ、一般レベルに普及したとは言えないだろう。照明という分野は、日本はまだこれからなのかもしれない。


関連:
ウィキペディア - 蛍光灯
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9B%8D%E5%85%89%E7%81%AF

関連エントリ:
3Dのレンダリングをやりはじめて、静物画の面白さがわかった
http://mojix.org/2009/06/02/seibutsuga
「光」がこんなに面白いものだったとは
http://mojix.org/2009/05/26/sunflow_light