コンビニのPB(プライベートブランド)がNB(ナショナルブランド)を飲み込む
毎日新聞 - コンビニ:PBに注力 発言力増し製造側も一目(2012年11月21日 21時32分)
http://mainichi.jp/select/news/20121122k0000m020085000c.html
サッポロビールとセブン&アイHDのPBビール発表会=東京都中央区で2012年11月19日、岡田悟撮影
<コンビニエンスストア各社が、食品や飲料などでプライベートブランド(PB)導入を競っている。消費者の低価格志向が背景だが、販売力のあるコンビニの発言力が増していることも、メーカーがPB製造を請け負う動きを加速させている。高級化など、商品展開も多様化してきた。
「いずれは(現在最大の)アサヒビールの『スーパードライ』を(販売量で)超えることを目指す」
セブン&アイ・ホールディングスの鎌田靖常務執行役員は19日、サッポロビールから初めて供給を受け、セブン‐イレブンなどで27日に発売するPBビール「セブンプレミアム 100%MALT」について、こう述べた。メーカーが自社ブランドにこだわりを持つビールもPBの例外でないことに業界では驚きが広がる>。
コンビニがプライベートブランド(PB)の商品を増やしており、これまでナショナルブランド(NB)の独壇場だったビールにまでそれが及んだ、という記事。これは注目すべき動きだと思う。
<大手コンビニでPB展開をリードするのがセブン。PB「セブンプレミアム」は07年8月に調味料など6品目で始まり、現在では商品の約3割、800品目に増加。売り上げに占めるPB比率も1.8%(08年度)から7.1%(11年度)に伸びた。ローソンは10年7月から「ローソンセレクト」を展開し、今では300品目に増加。ファミリーマートも10月末から新PB「ファミマコレクション」を順次導入し、今年度中に500品目を投入する>。
たしかに、最近のコンビニではPB商品が目につく。セブンでは、PBの売り上げ比率が3年間で4倍近くに増えているとのことで、これはもう激変と言っていいスピードだろう。この調子で行けば、14年度にはPBの売り上げ比率が30%くらいになる。
<PB拡大の背景には、百貨店やスーパーの売上高が前年割れを続けるのを尻目に、女性や高齢者の需要を取り込み昨年の主要チェーンの既存店売上高が前年比6.1%増となるなど、成長を続けるコンビニの発言力が増したこともある。「利幅は減るがPBを作れれば工場を動かせる」(食品メーカー)と製造受託を目指す企業も少なくない。特に「業界トップより3、4位のメーカーが積極的」(コンビニ幹部)。メーカーとして強力なブランド力がなければ、自社製品を店頭に置いてもらえないからだ>。
<PBに詳しい富士通総研のシニアマネジングコンサルタントの西田武志氏は「PBが進展すればするほど、ナンバーワンメーカーしか生き残れなくなり、業界再編も進む可能性がある」と指摘する>。
メーカー側から見れば、コンビニの「下請け」になったとしても、仕事をもらって、工場を稼動させられるだけマシだ、ということのようだ。生き残りのためにはしょうがない。
ナンバーワンメーカーしか生き残れない、というのはその通りだと思うが、ヘタすると、ナンバーワンメーカーすら生き残れないのではないか。販売をコンビニが押さえてしまっているのだから、もしナンバーワンメーカーの売れ筋商品があれば、それに似たPB商品を安く作って、売り場で大きく扱えばいい、ということになりそうだ。
コンビニは、顧客とじかに接する「販売」の立場を最大限に生かした結果、ただ商品を売るという従来的な「店」のモデルから離れて、一流メーカーすら「下請け」として取り込み、みずから商品開発するというモデルに至ったわけだ。一種の「垂直統合」かもしれない。
記事の末尾には、「【キーワード】PBとNB」という解説もある。
<小売業者などが企画・開発した商品がプライベートブランド(PB)、メーカーの自社ブランド商品がナショナルブランド(NB)と呼ばれる。PBは卸を通さず広告宣伝費もあまりかけないため、NBより割安。製造委託先のメーカーとの交渉で仕入れ価格を抑えられ、発注する小売り側の利益率も高い>。
<NBは大規模な広告を展開することが多く、消費者に広く知られる。しかし消費者の低価格志向などからPB化が進み、NBの存在感は下降気味。調査会社の富士経済によるとPB食品の市場規模は07年の1.6兆円から10年に2.4兆円に成長。欧米各国ではPBの市場シェアは2?5割に達するなど浸透している>。
ナショナルブランド(NB)が縮小するということは、大規模な広告を打つスポンサーが減るということなので、この動きは広告業界にも少なからぬ影響がありそうだ。
逆に消費者目線で見れば、広告やブランドなんて別にいらないから、ただ「ビール」を安く買えればいい、ということだろう。
全体的な構図をかんたんに言えば、コンビニと消費者が直接つながるようになって、メーカーは下請けになり、広告は減る、といったところか。これでコンビニと消費者はハッピーだが、メーカーと広告業界、広告媒体はたいへんである。
関連エントリ:
コンビニの出店戦略
http://mojix.org/2012/11/18/konbini-shutten
コンビニのおでんはなぜ70円なのか マーケティング技術の最先端
http://mojix.org/2010/11/24/oden-70yen
http://mainichi.jp/select/news/20121122k0000m020085000c.html
サッポロビールとセブン&アイHDのPBビール発表会=東京都中央区で2012年11月19日、岡田悟撮影
<コンビニエンスストア各社が、食品や飲料などでプライベートブランド(PB)導入を競っている。消費者の低価格志向が背景だが、販売力のあるコンビニの発言力が増していることも、メーカーがPB製造を請け負う動きを加速させている。高級化など、商品展開も多様化してきた。
「いずれは(現在最大の)アサヒビールの『スーパードライ』を(販売量で)超えることを目指す」
セブン&アイ・ホールディングスの鎌田靖常務執行役員は19日、サッポロビールから初めて供給を受け、セブン‐イレブンなどで27日に発売するPBビール「セブンプレミアム 100%MALT」について、こう述べた。メーカーが自社ブランドにこだわりを持つビールもPBの例外でないことに業界では驚きが広がる>。
コンビニがプライベートブランド(PB)の商品を増やしており、これまでナショナルブランド(NB)の独壇場だったビールにまでそれが及んだ、という記事。これは注目すべき動きだと思う。
<大手コンビニでPB展開をリードするのがセブン。PB「セブンプレミアム」は07年8月に調味料など6品目で始まり、現在では商品の約3割、800品目に増加。売り上げに占めるPB比率も1.8%(08年度)から7.1%(11年度)に伸びた。ローソンは10年7月から「ローソンセレクト」を展開し、今では300品目に増加。ファミリーマートも10月末から新PB「ファミマコレクション」を順次導入し、今年度中に500品目を投入する>。
たしかに、最近のコンビニではPB商品が目につく。セブンでは、PBの売り上げ比率が3年間で4倍近くに増えているとのことで、これはもう激変と言っていいスピードだろう。この調子で行けば、14年度にはPBの売り上げ比率が30%くらいになる。
<PB拡大の背景には、百貨店やスーパーの売上高が前年割れを続けるのを尻目に、女性や高齢者の需要を取り込み昨年の主要チェーンの既存店売上高が前年比6.1%増となるなど、成長を続けるコンビニの発言力が増したこともある。「利幅は減るがPBを作れれば工場を動かせる」(食品メーカー)と製造受託を目指す企業も少なくない。特に「業界トップより3、4位のメーカーが積極的」(コンビニ幹部)。メーカーとして強力なブランド力がなければ、自社製品を店頭に置いてもらえないからだ>。
<PBに詳しい富士通総研のシニアマネジングコンサルタントの西田武志氏は「PBが進展すればするほど、ナンバーワンメーカーしか生き残れなくなり、業界再編も進む可能性がある」と指摘する>。
メーカー側から見れば、コンビニの「下請け」になったとしても、仕事をもらって、工場を稼動させられるだけマシだ、ということのようだ。生き残りのためにはしょうがない。
ナンバーワンメーカーしか生き残れない、というのはその通りだと思うが、ヘタすると、ナンバーワンメーカーすら生き残れないのではないか。販売をコンビニが押さえてしまっているのだから、もしナンバーワンメーカーの売れ筋商品があれば、それに似たPB商品を安く作って、売り場で大きく扱えばいい、ということになりそうだ。
コンビニは、顧客とじかに接する「販売」の立場を最大限に生かした結果、ただ商品を売るという従来的な「店」のモデルから離れて、一流メーカーすら「下請け」として取り込み、みずから商品開発するというモデルに至ったわけだ。一種の「垂直統合」かもしれない。
記事の末尾には、「【キーワード】PBとNB」という解説もある。
<小売業者などが企画・開発した商品がプライベートブランド(PB)、メーカーの自社ブランド商品がナショナルブランド(NB)と呼ばれる。PBは卸を通さず広告宣伝費もあまりかけないため、NBより割安。製造委託先のメーカーとの交渉で仕入れ価格を抑えられ、発注する小売り側の利益率も高い>。
<NBは大規模な広告を展開することが多く、消費者に広く知られる。しかし消費者の低価格志向などからPB化が進み、NBの存在感は下降気味。調査会社の富士経済によるとPB食品の市場規模は07年の1.6兆円から10年に2.4兆円に成長。欧米各国ではPBの市場シェアは2?5割に達するなど浸透している>。
ナショナルブランド(NB)が縮小するということは、大規模な広告を打つスポンサーが減るということなので、この動きは広告業界にも少なからぬ影響がありそうだ。
逆に消費者目線で見れば、広告やブランドなんて別にいらないから、ただ「ビール」を安く買えればいい、ということだろう。
全体的な構図をかんたんに言えば、コンビニと消費者が直接つながるようになって、メーカーは下請けになり、広告は減る、といったところか。これでコンビニと消費者はハッピーだが、メーカーと広告業界、広告媒体はたいへんである。
関連エントリ:
コンビニの出店戦略
http://mojix.org/2012/11/18/konbini-shutten
コンビニのおでんはなぜ70円なのか マーケティング技術の最先端
http://mojix.org/2010/11/24/oden-70yen