2012.11.18
コンビニの出店戦略
コンビニの出店戦略は、どことなく囲碁っぽいと思う。

需要があるのに、コンビニがないエリアがあったら、そこに出店する。すると、そのエリアをごっそり「獲得」できる。これはわかりやすい。

おもしろいのは、駅前などの激戦区に出店する方法だ。すでにコンビニが1~2軒あるのに、さらに「ぶつけてくる」パターンをときどき見かける。そんなに過剰出店して大丈夫なのかと思いきや、意外にうまくいったりする。

駅の周辺は、そこから人がいろいろな方向に散っていく。この人の流れを徹底的に読めば、すでにコンビニが1~2軒あったとしても、出店する余地がある場合が少なくないようだ。

もっと極端な例では、既存のコンビニのすぐ隣に、より駅に近い側に出店すれば、既存のコンビニから客を奪える。これはもっとも「敵対的」な出店戦略かもしれない。実際にこの戦略で、既存のコンビニのほぼ隣に、駅に近い側にあたらしいコンビニができて、既存のコンビニがつぶれたのを見たことがある(つぶれたのは立地だけでなく、店の品揃えやサービスも原因だったかもしれないが)。

同じコンビニチェーンが、わりと近くに何軒もあるパターンもよく見かける。これは「ドミナント戦略」というそうで、そのエリアをいわば独占的に獲得し、他店を参入させないための方法のようだ。

コンビニに限らず、出店戦略というものの基本は、すでにあるていど店が分布している前提で、どこに出店すれば最大の需要を獲得できるかを、いわば「計算」するものだろう。需要はエリアに貼り付いている、という「商圏」的な見方だ。これは「領地の獲得」に近い話なので、これが囲碁に似てくる理由かもしれない。

いっぽうで、駅前や繁華街、オフィス街などでは、大きな人の流れがあり、時間帯によっても需要がかなり変動する。エリアの特性によって、需要の中身も異なるだろう。こういう「ホット」な場所では、単に領地的な把握を超えて、よりダイナミックな人の流れや、需要の中身まで読む必要がありそうだ。コンビニの出店戦略では、特にこのダイナミックな把握がより重要になるのだろう。

オフィス街の昼どきなど、コンビニに大行列ができているのを良く見かける。これだけコンビニがたくさんあるのに、その大行列があちこちで、毎日繰り返されているわけだ。行列を見て、あきらめて帰る人もいるだろうし、商品が売れすぎて、棚がカラになっているのもときどき見かける。供給が追いつかないくらい、需要があるわけだ。場所によっては、コンビニにはまだまだ大きな需要があるのだろう。

コンビニどうしの戦いだけでなく、スーパーや飲食店もライバルと見なせば、出店戦略はより複雑になるだろう。最近、都市部ではスーパーも小型化しつつあり、よりコンビニに近づいている。いっぽう飲食店も、牛丼チェーンなどはメニューの多様化が進み、テイクアウトも充実している。

コンビニはスーパーよりも品揃えが少なく、値段も高い。飲食店と比べても、コンビニの弁当や惣菜はおいしくない。それでもコンビニに需要があるのは、路面にあってアクセスしやすいこと、オペレーションが効率的で買い物が早く済むこと、いろいろなものがひととおり揃っていること、ブランディングが確立していて清潔感や安心感があること、などがあるだろう。こういった特性があわさって、コンビニの「便利さ」が生まれている。これがコンビニの強み・競争力になっているのだろう。


関連:
ウィキペディア - コンビニエンスストア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3..
ウィキペディア - ドミナント戦略
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89..

関連エントリ:
『ガイアの夜明け』 スーパーマーケットの「小型化」特集
http://mojix.org/2011/01/03/gaia-supermarket
コンビニのおでんはなぜ70円なのか マーケティング技術の最先端
http://mojix.org/2010/11/24/oden-70yen