2013.02.02
オーウェルの「六つの規則」 わかりやすい文章を書くために
ウィキペディア - 政治と英語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF..

<政治と英語(Politics and the English Language)は、1946年に発表された、ジョージ・オーウェルの随筆である。この随筆の中で、オーウェルは執筆当時の醜悪で不正確な英語の書き言葉を批判し、それは愚劣な思考と不誠実な政治の結果であると同時に、原因であり、曖昧さと全くの無能さが当時の英語の文章、特に当時の政治的な文章の最も顕著な特徴であると主張している>。

ジョージ・オーウェル(1903-1950)は、小説『1984年』『動物農場』で有名だが、エッセイの名手でもあった。「政治と英語(Politics and the English Language)」(1946年)は、オーウェルの有名なエッセイで、「悪文」がテーマである。

オーウェルはこのエッセイで、政治では抽象的な言い回しが多用され、それは不誠実で、人をだますのに使われている、といったことを述べている。オーウェルは、良い文章の例として、「コヘレトの言葉」の一節を引用している。

<I returned and saw under the sun, that the race is not to the swift, nor the battle to the strong, neither yet bread to the wise, nor yet riches to men of understanding, nor yet favour to men of skill; but time and chance happeneth to them all. (私は再び陽の下に見た。速い者が競走に勝ち、強い者が戦いに勝つとは限らず、賢い者がパンにありつくのでも、聡い者が富を得るのでもないし、器用な者が好意に恵まれるのでもない。しかし時と機会は誰にでも与えられている)>

(注:日本語訳はウィキペディアにあるものをそのまま載せている。以下も同様)

これを、現代英語でよく見られるような最悪の文章に書き直してみると、こんなふうになる。

<Objective considerations of contemporary phenomena compel the conclusion that success or failure in competitive activities exhibits no tendency to be commensurate with innate capacity, but that a considerable element of the unpredictable must invariably be taken into account. (現時点での諸現象の客観的な問題は競合的活動における成否が生得の能力に見合う傾向を示さないという帰結を強制するが、予測不能な要素の可能性を普遍的に考慮せねばならない)>

こういう、抽象的でわかりにくい文章を避けるために、オーウェルは「六つの規則」を提示している。

1. Never use a metaphor, simile, or other figure of speech which you are used to seeing in print.
印刷物で見慣れた暗喩や直喩、その他の比喩を使ってはならない。

2. Never use a long word where a short one will do.
短い言葉で用が足りる時に、長い言葉を使ってはならない。

3. If it is possible to cut a word out, always cut it out.
ある言葉を削れるのであれば、常に削るべきである。

4. Never use the passive where you can use the active.
能動態を使える時に、受動態を使ってはならない。

5. Never use a foreign phrase, a scientific word, or a jargon word if you can think of an everyday English equivalent.
相当する日常的な英語が思い付く時に、外国語や学術用語、専門用語を使ってはならない。

6. Break any of these rules sooner than say anything outright barbarous.
あからさまに野蛮な文章を書くぐらいなら、これらの規則のどれでも破った方がいい。

このオーウェルのエッセイは英語について書かれたものだが、日本語にもほぼあてはまるように思う。

気取った言い回しや、むずかしい言い回しは、内容が伝わりにくい。読者をだまそうとか、わざと難解にしようというつもりはなくても、つい気取った言い回しや、むずかしい言い回しを使ってしまうことはよくある。そんなときは、このエッセイと「六つの規則」を思い出したい。


関連:
Politics and the English Language 1946(英語の原文)
http://www.resort.com/~prime8/Orwell/patee.html
ウィキソース - 政治と英語(日本語訳)
http://ja.wikisource.org/wiki/%E6%94%BF..

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