電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だ
昨日「音楽CDのような「デジタル本」が欲しい」というのを書いたが、ちょうどこの話題にドンピシャのニュースが出ていた。
朝日新聞デジタル - 手塚全集を「大人買い」? 電子版と端末、セット販売(2013年3月24日16時21分)
http://www.asahi.com/culture/update/0322/TKY201303220082.html
<【上原佳久】「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫の電子版全集400冊とタブレット端末が22日、セットで発売された。大幅な割引価格で「大人買い」を誘い、漫画の電子書籍を広める狙いだ>。
<漫画の電子書籍の品ぞろえで国内最大級の、約6万5千点を扱うイーブックイニシアティブジャパン社が発売。手塚治虫の電子版全集には「火の鳥」「鉄腕アトム」「ブラック・ジャック」などの漫画作品に対談・エッセーなども加えた>。
<通常は電子版全集だけで12万5475円(税込み)だが、台湾エイスース社製の新タブレット端末とセット購入すると、割引されて計10万3050円(同)になる。イーブック社のウェブサイトから購入できる>。
手塚治虫の電子版全集400冊、というのもインパクトがあるが、それをタブレット端末とセットで買わせようとしている、というのがおもしろい。
この手塚治虫の電子版全集400冊、12万5475円(税込み)を「大人買い」しそうな潜在顧客は、どういう人たちだろうか。すでにタブレットや電子書籍リーダーを使いこなしていて、電子書籍をバンバン買っているような、わりとITリテラシーが高い人たちだろうか。そうではないと思う。むしろ、タブレットも電子書籍リーダーもまだ持っておらず、それどころかPCの操作ですら苦手意識があるような、中高年の層ではないだろうか。ITはあまり得意ではないが、お金と時間はいくらかある、といった人たちが主要なターゲットだと思う。だから、タブレットとセットで買わせようとしているのだろう。
タブレットは、フル機能のPCに比べれば、操作はそれほど複雑ではない。しかしそれでも、ただ本を読みたいだけの人にとっては、なんだかよくわからなくて、面倒なものだろう。私のように、ITを仕事にしている人間から見ても、電子書籍まわりはまだ環境が固まっていないので、いろいろ面倒くさい。だから、これはPCが苦手だとか、ITリテラシーの問題というよりも、単に電子書籍の環境が未熟なので、まだ使いにくく、わかりにくいというだけの話だろう。
ここでもし、昨日の「デジタル本」のようなものが出てくれば、この状況を打破できるかもしれないと思う。昨日のエントリでは、音楽CDやCD-ROMを例に出したが、形態は別にCDでなくてもいい。SDカードみたいなものでもいいし、ファミコンのカセットみたいなものでもいいのだ。とにかく、コンテンツが物質のパッケージになっていればいい。それが店頭で売っていて、買ったあとは棚に並べたり、保存・管理しやすいかたちになっていればいい。
肝心なのは、PCやタブレットの操作のような心理的負担をいっさい感じさせない、ということだ。ファミコンのように、ただカセットを挿せば動くというわかりやすさ、そして信頼性が、何よりも重要である。
現状の電子書籍では、PCやタブレットの中にデータがあるので、PCやタブレットを操作しないと、コンテンツを見たり、管理したりできない。もし、そのコンテンツのデータが物質にパッケージ化されていれば、その物質をそのまま移動したり、保存したりできる。音楽のCDや映画のDVD、ファミコンのカセットなどは、物質のパッケージになっているので、それができる。しかし、いまの電子書籍はそうなっていないので、それができないのだ。
電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だと思う。電子書籍リーダーがファミコンのようになり、「デジタル本」のカセットみたいなものを買って、それを挿せば読めるというふうになれば、そこそこ売れるのではないか。PCやタブレットのわかりにくい操作はいっさい不要、というのが重要である。
ただし、ここでまたデータが独自規格だったり、互換性がないものだったりすると、まるで意味がない。独自規格や囲い込みは、もうウンザリである。データはEPUBやHTMLになっていて、USBなどを経由して、他の機器に容易にコピーできるのでなければならない。このようにデータがオープンで、使いやすいかたちになっていればこそ、「これなら大丈夫だ」という安心感が生まれる。この安心感があればこそ、お金を出して買ってもいい、という気になるのだ。
データはデジタルでも、物質のパッケージがあったほうがいい、という今回の話は、広い意味での「ユーザビリティ」や「ユーザインターフェイス」の話である。本や音楽、映画などのコンテンツは、けっきょくのところ、データのかたまりである。それをどのようなかたちにしておけば、人間にとって、操作や管理、保存がしやすいのだろうか。データ自体はデジタルでも、物質化されたパッケージのほうが、操作や管理、保存がしやすいのではないか、というのが、ここでの要点である。
関連エントリ:
音楽CDのような「デジタル本」が欲しい
http://mojix.org/2013/03/24/cd-digital-book
朝日新聞デジタル - 手塚全集を「大人買い」? 電子版と端末、セット販売(2013年3月24日16時21分)
http://www.asahi.com/culture/update/0322/TKY201303220082.html
<【上原佳久】「漫画の神様」と呼ばれた手塚治虫の電子版全集400冊とタブレット端末が22日、セットで発売された。大幅な割引価格で「大人買い」を誘い、漫画の電子書籍を広める狙いだ>。
<漫画の電子書籍の品ぞろえで国内最大級の、約6万5千点を扱うイーブックイニシアティブジャパン社が発売。手塚治虫の電子版全集には「火の鳥」「鉄腕アトム」「ブラック・ジャック」などの漫画作品に対談・エッセーなども加えた>。
<通常は電子版全集だけで12万5475円(税込み)だが、台湾エイスース社製の新タブレット端末とセット購入すると、割引されて計10万3050円(同)になる。イーブック社のウェブサイトから購入できる>。
手塚治虫の電子版全集400冊、というのもインパクトがあるが、それをタブレット端末とセットで買わせようとしている、というのがおもしろい。
この手塚治虫の電子版全集400冊、12万5475円(税込み)を「大人買い」しそうな潜在顧客は、どういう人たちだろうか。すでにタブレットや電子書籍リーダーを使いこなしていて、電子書籍をバンバン買っているような、わりとITリテラシーが高い人たちだろうか。そうではないと思う。むしろ、タブレットも電子書籍リーダーもまだ持っておらず、それどころかPCの操作ですら苦手意識があるような、中高年の層ではないだろうか。ITはあまり得意ではないが、お金と時間はいくらかある、といった人たちが主要なターゲットだと思う。だから、タブレットとセットで買わせようとしているのだろう。
タブレットは、フル機能のPCに比べれば、操作はそれほど複雑ではない。しかしそれでも、ただ本を読みたいだけの人にとっては、なんだかよくわからなくて、面倒なものだろう。私のように、ITを仕事にしている人間から見ても、電子書籍まわりはまだ環境が固まっていないので、いろいろ面倒くさい。だから、これはPCが苦手だとか、ITリテラシーの問題というよりも、単に電子書籍の環境が未熟なので、まだ使いにくく、わかりにくいというだけの話だろう。
ここでもし、昨日の「デジタル本」のようなものが出てくれば、この状況を打破できるかもしれないと思う。昨日のエントリでは、音楽CDやCD-ROMを例に出したが、形態は別にCDでなくてもいい。SDカードみたいなものでもいいし、ファミコンのカセットみたいなものでもいいのだ。とにかく、コンテンツが物質のパッケージになっていればいい。それが店頭で売っていて、買ったあとは棚に並べたり、保存・管理しやすいかたちになっていればいい。
肝心なのは、PCやタブレットの操作のような心理的負担をいっさい感じさせない、ということだ。ファミコンのように、ただカセットを挿せば動くというわかりやすさ、そして信頼性が、何よりも重要である。
現状の電子書籍では、PCやタブレットの中にデータがあるので、PCやタブレットを操作しないと、コンテンツを見たり、管理したりできない。もし、そのコンテンツのデータが物質にパッケージ化されていれば、その物質をそのまま移動したり、保存したりできる。音楽のCDや映画のDVD、ファミコンのカセットなどは、物質のパッケージになっているので、それができる。しかし、いまの電子書籍はそうなっていないので、それができないのだ。
電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だと思う。電子書籍リーダーがファミコンのようになり、「デジタル本」のカセットみたいなものを買って、それを挿せば読めるというふうになれば、そこそこ売れるのではないか。PCやタブレットのわかりにくい操作はいっさい不要、というのが重要である。
ただし、ここでまたデータが独自規格だったり、互換性がないものだったりすると、まるで意味がない。独自規格や囲い込みは、もうウンザリである。データはEPUBやHTMLになっていて、USBなどを経由して、他の機器に容易にコピーできるのでなければならない。このようにデータがオープンで、使いやすいかたちになっていればこそ、「これなら大丈夫だ」という安心感が生まれる。この安心感があればこそ、お金を出して買ってもいい、という気になるのだ。
データはデジタルでも、物質のパッケージがあったほうがいい、という今回の話は、広い意味での「ユーザビリティ」や「ユーザインターフェイス」の話である。本や音楽、映画などのコンテンツは、けっきょくのところ、データのかたまりである。それをどのようなかたちにしておけば、人間にとって、操作や管理、保存がしやすいのだろうか。データ自体はデジタルでも、物質化されたパッケージのほうが、操作や管理、保存がしやすいのではないか、というのが、ここでの要点である。
関連エントリ:
音楽CDのような「デジタル本」が欲しい
http://mojix.org/2013/03/24/cd-digital-book