2013.06.11
エスカレーターの片側あけ むしろ効率悪いことが知られていないのでは
毎日新聞 - エスカレーター:片側開けへの対応、鉄道会社で分かれる(2013年06月06日 15時00分)
http://mainichi.jp/select/news/20130606k0000e040205000c.html

<駅のエスカレーターで片側を開けて、急ぐ人が歩く--。都市部で常識化しているこの慣行について、エスカレーター業者などが「事故のもととなり危険」として、止まって乗るよう呼び掛けている。業者の調査によると、高齢者の約3割が、エスカレーターでの転倒に不安を感じ、歩行をやめてほしいと考えていた。だが、片側開けをマナーと考える乗客も多く、3大都市圏で運行するJRと主な私鉄・地下鉄23社に「片側開け」への対応を尋ねたところ、歩かないよう明確に呼び掛けている社は11社にとどまった>。


「歩く人のために」右側を開け、左側には多くの人が並ぶエスカレーター=都営大江戸線新宿駅で2013年6月6日午前9時27分、武市公孝撮影

<6日朝の都営地下鉄大江戸線新宿駅ホーム。改札口につながるエスカレーターの右側のレーンを、大勢の客が歩いて上り下りする一方、左側は立ち止まって乗る人が長蛇の列を作っていた。都市部でよく見られる光景だ>。

エスカレーターの片側あけ問題。この記事では、事故につながるとか、高齢者や障害者に危険、という切り口だが、これだけではおそらく、なかなか解決しないだろう。

エスカレーターの片側あけは、危険なのもそうだが、「輸送効率が悪くなる」のが最大の問題ではないだろうか。これについては、2008年にいちど書いたことがある。

エスカレータの片側空けで、ほとんど全員が損をする
http://mojix.org/2008/07/21/escalator_katagawa

<この3点のうち、(2)の「危険」だというのは掲示やアナウンスでもときどきあるので、それをわかってやっている人には効果がなさそうだ。しかし(1)の「効率が悪い」というのは、意外に知られていないのではないだろうか>。

<特に、JRや地下鉄の長いエスカレータなどで、右側が空いているばっかりに、左側に長い待ち行列ができてしまっているのはアホらしい>。

<そういうとき、右側を歩いて上がっていく人がいるのは、「急いでいる」というよりも、「左側の長い待ち行列にえんえん並びたくない」という場合が大半だろう。本来ならエスカレータで歩くほどは急いでいなくても、長い待ち行列にえんえん並ばないと左側に乗れないために、しぶしぶ右側を歩いていくのだ>。

<そして、左側の長い待ち行列に並ぶ人だって、しぶしぶ並んでいる。特に急いでいるというほどでなくても、誰だって無駄な待ち時間はなくしたいものだ>。

<右側を空けるのが「正しい」、「マナー」だと考えられてしまった結果、このようにほとんど全員が損をするという愚かなことになってしまっている>。

エスカレーターの片側をあけると、運ばれる人の数が半分になるので、輸送効率が半分になる。気づいている人には、あたり前のことだろう。

しかし私も、増井俊之さんの指摘を読むまで、そんなことは考えたこともなかったのだ。かつての私のように、片側をあけることのバカバカしさに気づいていない人が、きっとたくさんいると思う。

「危険だ」という切り口だけでは、人間はなかなか動かないだろう。「効率が悪くて、むしろ時間のムダだ」という切り口をもっと出していけば、片側あけのバカバカしさに気づく人が、もっと増えると思う。

片側あけは効率が悪い、という認識があるていど広まってきたら、エスカレーターでの歩行・駆け上がりは、ルールで禁止するしかないだろう。片側あけがむしろマナーだと思われてしまっている以上、これはマナーや意識向上だけでは解決せず、ルール化するしかないと思う。


関連エントリ:
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http://mojix.org/2008/07/21/escalator_katagawa
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