2005.10.24
クリエイティヴなロジック - 将棋ソフトとMemeorandum
先日のこのニュースには驚いた。

asahi.com : ソフトと対局に「待った」 日本将棋連盟が全棋士に通知
http://www.asahi.com/shougi/news/TKY200510140274.html

<日本将棋連盟理事会は14日、同連盟所属のすべての棋士と女流棋士に、公の場で許可なく将棋ソフトと対局しないよう通知したと発表した。「プロ対ソフト」をビジネスチャンスと捕らえている理事会が、なし崩し的にプロが敗れることがないよう歯止めをかけた。
 きっかけは9月に石川県小松市であった公開対局。五段の棋士が途中まで不利な戦いを強いられた。危機感を持った理事会は「企画がある場合は必ず事前に申し出をお願いします」と10月6日付の会報で通知。会見で米長邦雄会長は「破った者は除名」と強い決意を示した>。

プロ五段が不利になるときもあるほど、いまの将棋ソフトが強いとは、まさに驚異というしかない。
そして、こちらは昨日のニュース。

YOMIURI ONLINE - 将棋ソフト、森内名人に「角落ち」で善戦
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20051023it11.htm

<将棋の森内俊之名人(35)とコンピューター将棋ソフトの公開対局が23日、東京都江東区の「ホテルイースト21東京」で行われた。プロのタイトル保持者がソフトと一般公開の場で戦うのは初めて。
 ハンデは、トッププロがトップアマと戦う時と同じ「角落ち」で、ソフトが中盤まで善戦したが及ばなかった。
 22日から開かれていた第3回国際将棋フォーラム(日本将棋連盟主催)のイベントとして行われ、約300人のファンが観戦した。対戦したソフトは、23日の「コンピュータ将棋王者決定戦」で優勝した「YSS」(商品名・「AI将棋」=開発者・山下宏氏)。
 対局は初手から1手30秒の早指し。中盤、ソフトが意表をつく勝負手を繰り出して森内名人を動揺させたものの、最後は127手で投了に追いこまれた>。

私は子供の頃、将棋のプロになりたかったくらい将棋が好きだったので、
将棋のプロというのがどのくらい強いのか、多少わかるつもりだ。

そのプロの頂点である「名人」を、角落ちだとしても、将棋ソフトが<動揺させた>というのは信じがたい。

なんともすごい時代、そして、面白い時代だ。
将棋連盟が<「プロ対ソフト」をビジネスチャンスと捉えている>のもわかる。

将棋ソフトというのは、大ざっぱに言えば、大量のデータとロジックの集積だろう。
そのロボットみたいなものが、(角落ちだとしても)森内名人を動揺させる手を指すのだ。
ロジックもそこまで行けば、「クリエイティヴ」な感じがする。

先日、Memeorandumというサイトについて書いた(「Webの見方を変える 「Memeorandum」」)。
これを書いて以来、私はこのユニークなサイトにますますハマりつつある。

Memeorandumの概要についてはそのエントリを読んでほしいのだが、
私はこのMemeorandumをしょっちゅう見ながら、この面白さはなんなのか?とぼんやり考えてきた。
「5分おきに自動的に表示しているだけなのに、それをただ見ているだけで面白い」
というのは、タダごとではないと思うのだ。

そして、冒頭の将棋ソフトのニュースを見て、ああ、これはどこか将棋ソフトに近いものがあるな、と思った。
ロジックで自動化されているが、それが精巧にできているので、「クリエイティヴ」なレベルに達しているのだ。

私は先日「「ロジカル」 はコモディティ化し、 「クリエイティヴ」 が浮上する」というエントリを書いたが、
ロジックとクリエイティヴは単なる反対概念ではない、という気がしてきた。

ロジックという部品を精巧に組み上げていけば、クリエイティヴなものに到達しうるし、
またクリエイティヴなものを作りあげるにも、ロジックという足場は大きな助けになるのだ。

Web 2.0なんていっても、それを支えている「ロジック」は、まだきわめて単純なものだろう。
将棋ソフトみたいな精巧さで、Web上を徘徊するロボットを作れば、危険なほど面白いものになりそうだ。

名人さえも動揺するような。