2005.11.10
「Web 2.0」 は 「イケメン」 と同じく、格付けのための概念だ
このブログでは何度か書いているが、「Web 2.0」とは、あたらしいWebの動向を総称する概念にすぎない。

「Web 2.0」の中心的な提唱者であるティム・オライリーは、サービスベースの新しいWebを意味する「インターネットOS」論を何年も前から唱えていて、「データが大事」といった基本主張も以前から言っていた。そこにWikiとかタギングとか、その他の新動向をたくさんつけていって、ふくらませたものが「Web 2.0」だ。

それは技術タームというにはあまりにも包括的で漠然としており、むしろ「マーケティング用語」だ。オライリー自身が主催する「Web 2.0カンファレンス」を盛り上げるための「バズ(buzz)・マーケティング」という側面もあった。

それが広まって一般化し、ニュースやブログで「Web 2.0」というタームが氾濫した。「このサービスはWeb 2.0っぽい」「これは古いのでWeb 1.0だ」といったおしゃべりに便利な概念になった。

それはちょうど、会社で女性社員が「あの人イケメンだよね~」「あの人はダサい」などと男性社員を論評するのに近い。それは一種の「採点」であり、「格付け」だ。つまり「Web 2.0」とは、「イケメン」みたいなものであり、「格付けのための概念」なのだ。

最近、日本でも「Web 2.0に取り組む」という企業が出てくるようになった。それ自体は素晴らしいことで、Web 2.0など聞いたこともないという企業に比べれば、もちろんはるかにマシだ。しかし「Web 2.0に取り組みます」なんていう声明を自ら出すのは、どうもカッコ悪い気がする。そのカッコ悪さは、男が自分で「私はイケメンです」「私はイケメンを目指します」と言っているようなものではないだろうか。ほんとうのイケメンは、そんなことを言わない。「結果で示す」のであり、「そう言わせる」のだ。

GoogleやAmazon、あるいは37signalsやAdaptive Path、del.icio.us、Flickrといった、Web 2.0の文脈で頻繁に語られる会社やサービスが、「わたしたちはWeb 2.0に取り組みます」などと自ら言っているのは聞いたことがない。「Web 2.0」も「イケメン」も、そう言われることに意味がある「格付けのための概念」であって、自分から言うものではない。


関連エントリ :
Webのターニング・ポイントをとらえた重要文献、ティム・オライリーの 「Web 2.0とは何か」
http://mojix.org/2005/10/01/183828
Web 2.0は 「ニューウェイヴ」 なのだ
http://mojix.org/2005/10/03/155810
日本のネットベンチャーが技術革新よりも 「ネット財閥」 をめざす理由
http://mojix.org/2005/10/30/233716
CNET Japan 「オライリーのインターネットOS論」
http://mojix.org/2004/01/20/120400