2006.01.14
群集がいつも賢いとは限らない 「Wisdom of Crowds」の成立条件
O'ReillyのエディターがDiggのCSSをパクったという疑いで、Diggで糾弾されるという事件が先ごろ起きた。

Digg - O'Reilly writer Steve Mallett has stolen digg's code
http://digg.com/security/O_Reilly_writer_Steve_Mallett_has_stolen_digg_s_code

これに対して、まもなくO'Reilly側から説明が出た。

O'Reilly Radar - Digging The Madness of Crowds
http://radar.oreilly.com/archives/2006/01/digging_the_madness_of_crowds_1.html

実情は、直接パクったわけではなく、彼が使っていたツールの元を辿っていくと、DiggのCSSに行き当たるということだったようだ(つまり「間接的に」使っていた)。

これに関して、Rashmi Shinhaが見事な指摘をしている。

Rashmi Shinha - Digg and the wisdom of the crowds
http://www.rashmisinha.com/archives/06_01/digg-crowd-psychology.html

James Suroweickiの『The Wisdom of Crowds』によれば、「Wisdom of Crowds」(群集の英知、集団の知恵)が成立するための条件は、以下の4つであるという。

(1) diversity of opinion (意見が多様なこと)
(2) independence of members from one another (メンバーが互いに独立していること)
(3) decentralization (中心を持たないこと)
(4) a good method for aggregating opinions (正しい方法で意見を集約すること)

(これはWikipediaの解説にもまとめられている)

この4つのうち、Diggは2番目の条件を満たしていない、としている。

<People digg stories and comment with reference to what other members have already done. So, people are highly influenced by what others are doing.>
(人々はストーリーをディグ(投票)し、他のメンバーのコメントを参照しながら、コメントを書く。よって、人々は他の人がやっていることに大きな影響を受けることになる)

このRashmi Shinhaのエントリは、以下のエントリを受けて書かれている。

atomiq - How much wisdom is there in Digg?
http://atomiq.org/archives/2006/01/how_much_wisdom_is_there_in_digg.html

「Diggにどれほどのwisdomがあるのか?」というタイトルのこのエントリで、著者Gene Smithは上記のO'Reilly側の説明にある、以下の部分を引用している。

<This is a classic Web 2.0 problem: it's hard to aggregate the wisdom of the crowd without aggregating their madness as well.>
(これは古典的なWeb 2.0の問題だ:群集の知恵だけを集めて、狂気を集めないようにするのは難しい)

これを引きながら、このような

<people start imitating others' choices rather than making their own>
(人々が自分で選択するのではなく、他の人の選択を真似しはじめる)

という行動は、「information cascade」(情報カスケード、情報の「なだれ」)あるいは「bandwagon effect」(バンドワゴン効果、流行などに皆が「飛び乗る」現象)に似ている、としている。情報カスケードはWeb 2.0固有の問題ではなく、メディアやマーケットでも起きており、ただWebでは人々の選択をより効率的に集められるのだ、とある(だから、その問題が強いかたちで出やすい)。

まったくその通りだと思う。これはWebとかネットに限らず、人間の集団的行動によく見られる、ほとんど基本的な行動パターンのひとつと言ってよさそうだ(「バブル」から「いじめ」まで)。これが、多数を巻き込むWeb 2.0的な仕組みによって、より強く表出した一例が、今回の話だろう。

「Wisdom of Crowds」の成立条件とされる、他の人の意見に左右されず自分で考えるという「独立性」、人間を集団としてみた場合の「多様性」などは、人間の集団が道を誤らないための「システム設定」みたいなものだという気がする。多様性を失うと人類は生き残れないという話は、ノーバート・ウィーナーやバックミンスター・フラーも言っていたように思う。

この反対に、みんなが他の人の真似ばかりする「従属性」、異なる人を排除していく「同質性」などが強い人間の集団は、「wisdom」とは反対の方向、愚かさや狂気に向かって走ることになる。


関連エントリ :
ミーハー、ヒネクレ、コダワリ
http://mojix.org/2005/12/10/230724
「みんなと同じことをする」人しかいない国
http://mojix.org/2005/12/06/181109