2008.04.19
東京都の塾代融資を考える
先日、東京都が低所得世帯へ塾代を融資するというニュースが出ていた。

NIKKEI NET - 塾代を低所得層に融資・東京都、教育機会の格差防ぐ
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080417AT1G1602T16042008.html

<東京都は16日、低所得世帯を対象に受験生の学習塾代や大学などの受験料を今秋にも無利子で貸し付ける制度を始めることを決めた。親の経済力で子どもの教育機会に格差が生じるのを防ぐことが狙い。都では受験合格者の返済を免除することも検討しているという。
 都によると、低所得世帯への塾代の無利子融資は全国初の試み。対象は所得課税が年60万円以下(3人世帯で年収約320万円以下)の世帯で、対象生徒は中3生と高3生で人数は約5500人と推定している。
 保護者に貸し付け、中3生は年15万円、高3生は年20万円を上限に無利子融資する。受験料は高3生が対象で、大学や専門学校の入試で1校につき3万5000円を貸し付ける。上限額は未定。
 塾代・受験料とも、高校や大学などに合格した場合には、返済の免除をすることも検討しているという。(16日 23:07)>

これに対し、山内康一衆議院議員が異論を述べている。

衆議院議員 山内康一の「公募新人奮闘記」 - 東京都の塾代融資の本末転倒
http://yamauchi-koichi.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_9d25.html

<親の所得格差が、子どもの教育格差につながるのは、
なんとしても避けるべきだと思います。
そういう意味で出発点の問題意識には共感します。

しかし、だから地方自治体が学習塾代を融資する、
という発想はまったく理解できません。
それより先に自治体がやるべきことは、
学習塾に行かなくても学力がつくようにすることです。
地方自治体が考えるべきは、公教育全体の底上げです。
学習塾に頼らないと、学力を保証できないのであれば、
公教育のあり方を見直すことを考えるべきです。

融資と言っても無利子融資であれば、税金を投入するわけです。
同じ税金を投入するのなら、教員の人数を増やしたり、
教員研修の予算を増やしたり、別の使い道を考えるのが普通です>。

私もこのニュースを聞いたときは、「なんだそりゃ?」と思った。
新銀行東京の問題で叩かれている東京都が、汚名挽回を考えてのことかもしれない。

理想論をいえば、山内議員の言うとおりだと私も思う。しかし現実的には、<公教育全体の底上げ>というのは長期的な課題であり、またその(行政的な意味での)投資効果の測定もむずかしい気がする。

これに対して、子供を塾や予備校に通わせたいが余裕がない、という世帯は確実に一定数いるだろうから、そこをピンポイントで狙った(行政的)投資というのは、投資対効果が高いだろう。

たしかに、教育の質そのものを上げるのに比べれば、やや芸がない政策という気もするが、民間の塾や予備校を超える教育サービスを公教育に期待するのも、現実的にはむずかしいだろう。民間へ教育をアウトソース・市場化する動きと考えれば、それほどひどい政策ではない気もする。

しかし本当にいちばんいい政策は、減税だ。新銀行東京にしても、これにしても、税金を集めておこなうべき公共サービスとは到底思えない。こんなことをやるほどカネが余っているなら、減税すべきだろう。

関連エントリ:
なぜ学校より塾や予備校が優秀なのか
http://mojix.org/2005/10/08/090449