2005.10.08
なぜ学校より塾や予備校が優秀なのか
asahi.com : 「学校より塾や予備校が優秀」親の7割 内閣府が初調査(2005年10月07日02時50分)
http://www.asahi.com/life/update/1007/001.html

<保護者の7割が、学校よりも塾や予備校の方が優秀と思っている――。内閣府が6日に発表した学校制度に関するアンケート結果から、親たちが現状の制度に強い不満を抱いている様子が浮き彫りになった>。

<子どもの学力向上の面で、学校より「学習塾・予備校の方が優れている」と答えた人が70.1%に上り、「学校」の4.3%を圧倒。現在の学校教育に「不満」「非常に不満」と答えた人が43.2%いた。教員に「不満」な人が28.4%で、「満足」の27.3%を上回った>。

保護者だけでなく、子供本人の意見も聞いてみたいところ。
たぶん、同じような結果じゃないかな。

私はIT業界に入る前、予備校の講師をやっていた。なぜ予備校の講師になったかというと、高校の頃、予備校の授業を受けて初めて、学問の面白さに開眼させられたからだ。

「学問の面白さ」というよりは、実際のところは、「受験ゲーム」に近かったと思う。力をつけて、それが模試の得点や順位として、数字に出てくる。それが面白かった。

ゲーム感覚で勉強していたなんて、けしからんと叱られるかもしれない。しかし、それでもいいと思うのだ。まずは、「楽しい」と思えることが大切だ。楽しいから持続するし、楽しくなければ続かない。そもそも、高校で学問を本当にやりはじめれば、逆に受験などできないだろう。受験は野球や陸上などの大会と同じ、数字や結果の出るゲームだと思ったほうがいい。

学校より予備校のほうが面白いとすれば、それは予備校の講師のほうが「優秀」なのではなく、「楽しさを伝える」のがうまいからだろう。そして、予備校とは「受験ゲームの道場」以外の何ものでもない。

以前「秋山仁の思い出」で書いたことがあるが、予備校業界というのはどこか芸能界にも似た、「人気商売」の世界である。人気のある講師はまず間違いなく、芸能人顔負けの「エンターテイナー」だ。「わかりやすく伝える」ことと、「楽しませる」ことは、実は似ているのかもしれない。

こんな話を聞いたことがある。「人に魚を与えると、それを食べればなくなってしまうが、人に魚の釣り方を教えれば、その人は自分でやっていける」。

学校では、勉強を「与えている」感じがする。生徒のほうも、好きでもないのに、仕方なく食べている感じだ。いっぽう予備校では、「楽しさ」を伝えて、生徒をやる気にさせてしまう。楽しいと感じてしまえば、あとは勝手に勉強するのだ。

ワーマンが言うように、<学習とは何がおもしろいかに気づくこと>だ。

どんな分野だって、勉強や学習というのは、本来おもしろいものだ。何らかのきっかけでそれに「気づく」ことさえできれば、その世界に入り込める。勉強を教えるのではなく、「面白さ」を教える必要がある。そして、「面白さ」を教えることは、勉強を教えるよりも、おそらくむずかしいだろう。

学校の先生は概して真面目で、優秀なんだと思う。それは小・中・高だけでなく、大学の先生もそうだ。しかし本人がいくら優秀でも、「面白さを伝える」「わかりやすく教える」ことは、また別のスキルだ。学者ならば、本人が優秀でさえあればいいが、教師は「伝える」ことが仕事なのだ。

学校に不足しているのは、きっと「エンターテイメント」じゃないかな。
これからの時代、学校も、会社も、もっと「おもしろい場所」になる必要がありそうだ。