2008.06.17
なぜマスコミがネットに注目しているのか
セーフティネットは会社の外に置き、「身分制度」をなくせ」の末尾で、私は次のように書いた。

<マスコミはすでに、かなりネットを意識しはじめている>

私はマスコミの人間でもないし、あくまでも私が目にする限られた範囲での、最近のテレビや雑誌を見た印象に過ぎないのだが、マスコミがネットに注目していることは間違いないと感じる。

それはネットで流行りのネタを探すとか、取材するための専門家を探す、あるいは放映したテレビ番組・出した雑誌の感想を見るなど、いろいろな目的で活用しているだろう。

それらをすべてひっくるめて、要するに「なぜマスコミがネットに注目しているのか」というと、「一般人の考えがわかるから」だと思う。

そんなことあたりまえじゃないか、と言われてしまいそうだが、こんなことが可能になったのは「ネット以降」であり、もっといえば「ブログ以降」のことだ。

ネットもブログもなかった頃は、マスコミではないごく普通の人が、自分の考えや意見を広く発信するなんてほぼ不可能だった。

よってその頃のマスコミ人は、「一般人の考え」や、「視聴者・読者からの反響」などを得るのが実にむずかしかった。視聴率や販売部数はわかったかもしれないが、そこから先がわからない。

反響をつかむためにプレゼントを出したりして、その応募ハガキに番組や雑誌の感想を書かせたりしていた。しかしそんなハガキをわざわざ送ってくれる人はごく少数であり、たいした情報にならなかっただろう。

しかしいまは、自分の番組名や雑誌名でキーワード検索するだけで、反響がわかる。ネタ探しや、特定テーマの専門家探しも、キーワード検索でできてしまう。もちろん、メールで直接意見を送ってもらうこともできる。

マスコミは「人気」が命の商売だから、「お客さん」である一般人が何を考えているのか、何が流行っているのか、番組や特集がどう受け止められたのか、その情報収集がきわめて重要だろう。その情報収集のコストが、ネットによって一気に下がった。コストが下がっただけでなく即時性も上がり、番組を放送した直後、雑誌が出た直後から、すぐに反響がわかる。

ネットが出てくる前は、「情報発信」はほとんどマスコミが独占するものだった。ネットはそこに割り込んできた大きな脅威であり、「商売敵(しょうばいがたき)」である。

しかし同時に、ネットで一般人の声をすぐにつかむことができるようになって、もはやマスコミ人にとっても「なくてはならないもの」になりつつあるものと思う。

関連エントリ:
パブリック空間が開放され、マスメディアの危機が訪れている
http://mojix.org/2005/10/31/233644