IT業界がいいのは、つねに勉強せざるをえないこと
先ごろ「10年は泥のように働け」というフレーズ(略称「10年泥」)がネットの一部で大流行して、IT業界の悪いイメージを象徴するキャッチフレーズのようになってしまった気もするが、それでもIT業界はやっぱり面白いところだと思う。
IT業界は、ITという新しいものを扱うビジネスなので、業界自体が未成熟な部分が多い。しかし逆にいえば業界が硬直しておらず、働いている人も若く、会社も若く、人材も比較的流動していて、産業としてもまだまだ成長している。他の業界と比べれば、若くて柔軟で、有望な業界なんじゃないだろうか。
なかでも私がIT業界でいちばんいいと思うところは、IT自体がすごい勢いで発展しつづけており、「いつも新しい」ので、つねに勉強せざるをえないことだ。
私はもうすぐIT業界に入って10年になるのだが、この10年は私の人生のなかでも、いちばん必死に勉強した10年だった感じがする。私なりの「10年泥」かもしれない。
1日あたりの勉強時間だけで言えば、高3・浪人の大学受験の頃がいちばん多かったと思うが、その頃よりもこのIT業界での10年のほうが「必死な感じ」が強くて、学習体験としては強烈だった。
私は1996年、27歳のときに初めてコンピュータを買い、29歳でIT業界に入ったという「遅れてきた人間」だ。それほど出遅れてもIT業界に入ろうと思ったのは、それだけITに惚れ込んだのと、自分の学習能力を信じていたからだった。しかし実際に入ってみて、ITというのは私の想像以上に広大な世界で、かつ技術革新によって新しい知識がどんどん増えていくという、強烈な世界であることがわかった。
さらに、IT業界にいる人というのは基本的にコンピュータが好きで、子供の頃からコンピュータをいじっていたような人が普通にゴロゴロいる。ピアノやバレエを幼少の頃からやっているような感じで、子供の頃からコンピュータに親しんでいるわけだ。ITという広大かつ強烈な世界で、遅れてきた私がどうやってそういう人たちに追いつけるのか。IT業界に入ってしばらくは、私は何度も途方にくれた。
ITの勉強をしつつも、ビジネスにも興味が出て、マネジメントを経験したり、独立したりして、だんだん「ITビジネス」という立場にシフトしていった。私はITそのものを極めていくというよりも、ITと別のスキルを組み合わせるというのが自分の持ち味であり、またそれが「遅れてきた」ことを強みに転化する方法であることを悟って、だんだんそういうポジションになっていったように思う。
もともと私はスペシャリストというよりもジェネラリスト的な人間で、興味がたくさんの方向にひろがっていくのを止められないタイプだ。その私にしては、この10年というのは大部分、ITに集中していた10年だった。ITという世界はそれだけフトコロが大きく、面白くて飽きない世界だったのだ。つねに勉強できて、かつそれを仕事として成立させながら、楽しむことができた。
社会に出ると、日々の仕事に追われて、「勉強する」という機会が減りやすい。学生のときは勉強せず遊んでいた人でも、社会に出ると勉強の余裕がなく、学生時代を悔やんだりする。勉強熱心な人は、忙しい仕事のあいまになんとか時間を作って、大学の社会人コースや専門学校、資格学校などに通ったりする。社会に出て忙しくなって初めて、「勉強する」ことの価値や喜びを理解するのだ。
IT業界というのは、日々勉強していないとやっていけない世界なので、イヤでも勉強させられる。勉強と仕事が切り離せないわけで、勉強が仕事みたいなものだとも言える。そのうえ、もともとコンピュータやネットが好きな連中が大半であって、家でも、休日でもコンピュータをいじっている(もちろん私もそう)。これは人間的なバランスとしては問題があるかもしれないが、やっぱり好きなことを仕事にできて、勉強と仕事が一体化しているのは、幸運なことだと思う。私もそういうふうにこの10年を過ごすことができて、幸運だった。私はもともと勉強自体が好きで、かつコンピュータとネットにハマったのだから、申し分ない。
たいていの業界は、楽しかったり華やかだけれども収入は低いか、逆に収入は高いけど精神的には苦しいか、そのどちらかが多いような気がする。IT業界は仕事と勉強が一体化しているうえに、収入もわりと良いのだから、相対的にはやはりいい業界だろうと思う。
IT業界にいると、そのダメなところばかり見えやすい。それはきっと、日本という国にいると、日本のダメなところばかり見えてくるのと似ている。IT業界はたぶんまあまあマシな業界だし、日本もまあまあマシな国だろうと思う。もちろん、つねに改善はすべきであり、現状に甘んじる必要はないが、過度に批判したり、過小評価しすぎるのもよくない。IT業界も日本も、まあまあマシだという前提で、どうやればもっと良くなるのかを考えるべきなのだろう。
IT業界がどうあれ、ITを仕事にしている限り、日々勉強せざるをえないことは間違いない。勉強熱心な人にとっては、少なくともそこはIT業界のアドバンテージになると思う。
仕事外の時間に学校に通ったりするのももちろん有意義だが、IT業界では仕事そのものが勉強にもなっていて、給料をもらいながらITという普遍的なスキルがつく。こんなにトクな業界はあまりないんじゃないか。そのうえまだまだ人員不足で、未経験でも入れる会社がけっこうある。そういう会社は、仕事の過酷さから「ブラック会社」なんて呼ばれたりすることもあるが、ともかく未経験でもIT業界に入ることができて、給料をもらって学べるんだから、ありがたいとも言えるんじゃないかな。
関連:
雑種路線でいこう - 10年泥が嫌ならITお勧めだよ
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080717/it
関連エントリ:
好きなことは仕事にすべし
http://mojix.org/2005/01/06/234745
IT業界は、ITという新しいものを扱うビジネスなので、業界自体が未成熟な部分が多い。しかし逆にいえば業界が硬直しておらず、働いている人も若く、会社も若く、人材も比較的流動していて、産業としてもまだまだ成長している。他の業界と比べれば、若くて柔軟で、有望な業界なんじゃないだろうか。
なかでも私がIT業界でいちばんいいと思うところは、IT自体がすごい勢いで発展しつづけており、「いつも新しい」ので、つねに勉強せざるをえないことだ。
私はもうすぐIT業界に入って10年になるのだが、この10年は私の人生のなかでも、いちばん必死に勉強した10年だった感じがする。私なりの「10年泥」かもしれない。
1日あたりの勉強時間だけで言えば、高3・浪人の大学受験の頃がいちばん多かったと思うが、その頃よりもこのIT業界での10年のほうが「必死な感じ」が強くて、学習体験としては強烈だった。
私は1996年、27歳のときに初めてコンピュータを買い、29歳でIT業界に入ったという「遅れてきた人間」だ。それほど出遅れてもIT業界に入ろうと思ったのは、それだけITに惚れ込んだのと、自分の学習能力を信じていたからだった。しかし実際に入ってみて、ITというのは私の想像以上に広大な世界で、かつ技術革新によって新しい知識がどんどん増えていくという、強烈な世界であることがわかった。
さらに、IT業界にいる人というのは基本的にコンピュータが好きで、子供の頃からコンピュータをいじっていたような人が普通にゴロゴロいる。ピアノやバレエを幼少の頃からやっているような感じで、子供の頃からコンピュータに親しんでいるわけだ。ITという広大かつ強烈な世界で、遅れてきた私がどうやってそういう人たちに追いつけるのか。IT業界に入ってしばらくは、私は何度も途方にくれた。
ITの勉強をしつつも、ビジネスにも興味が出て、マネジメントを経験したり、独立したりして、だんだん「ITビジネス」という立場にシフトしていった。私はITそのものを極めていくというよりも、ITと別のスキルを組み合わせるというのが自分の持ち味であり、またそれが「遅れてきた」ことを強みに転化する方法であることを悟って、だんだんそういうポジションになっていったように思う。
もともと私はスペシャリストというよりもジェネラリスト的な人間で、興味がたくさんの方向にひろがっていくのを止められないタイプだ。その私にしては、この10年というのは大部分、ITに集中していた10年だった。ITという世界はそれだけフトコロが大きく、面白くて飽きない世界だったのだ。つねに勉強できて、かつそれを仕事として成立させながら、楽しむことができた。
社会に出ると、日々の仕事に追われて、「勉強する」という機会が減りやすい。学生のときは勉強せず遊んでいた人でも、社会に出ると勉強の余裕がなく、学生時代を悔やんだりする。勉強熱心な人は、忙しい仕事のあいまになんとか時間を作って、大学の社会人コースや専門学校、資格学校などに通ったりする。社会に出て忙しくなって初めて、「勉強する」ことの価値や喜びを理解するのだ。
IT業界というのは、日々勉強していないとやっていけない世界なので、イヤでも勉強させられる。勉強と仕事が切り離せないわけで、勉強が仕事みたいなものだとも言える。そのうえ、もともとコンピュータやネットが好きな連中が大半であって、家でも、休日でもコンピュータをいじっている(もちろん私もそう)。これは人間的なバランスとしては問題があるかもしれないが、やっぱり好きなことを仕事にできて、勉強と仕事が一体化しているのは、幸運なことだと思う。私もそういうふうにこの10年を過ごすことができて、幸運だった。私はもともと勉強自体が好きで、かつコンピュータとネットにハマったのだから、申し分ない。
たいていの業界は、楽しかったり華やかだけれども収入は低いか、逆に収入は高いけど精神的には苦しいか、そのどちらかが多いような気がする。IT業界は仕事と勉強が一体化しているうえに、収入もわりと良いのだから、相対的にはやはりいい業界だろうと思う。
IT業界にいると、そのダメなところばかり見えやすい。それはきっと、日本という国にいると、日本のダメなところばかり見えてくるのと似ている。IT業界はたぶんまあまあマシな業界だし、日本もまあまあマシな国だろうと思う。もちろん、つねに改善はすべきであり、現状に甘んじる必要はないが、過度に批判したり、過小評価しすぎるのもよくない。IT業界も日本も、まあまあマシだという前提で、どうやればもっと良くなるのかを考えるべきなのだろう。
IT業界がどうあれ、ITを仕事にしている限り、日々勉強せざるをえないことは間違いない。勉強熱心な人にとっては、少なくともそこはIT業界のアドバンテージになると思う。
仕事外の時間に学校に通ったりするのももちろん有意義だが、IT業界では仕事そのものが勉強にもなっていて、給料をもらいながらITという普遍的なスキルがつく。こんなにトクな業界はあまりないんじゃないか。そのうえまだまだ人員不足で、未経験でも入れる会社がけっこうある。そういう会社は、仕事の過酷さから「ブラック会社」なんて呼ばれたりすることもあるが、ともかく未経験でもIT業界に入ることができて、給料をもらって学べるんだから、ありがたいとも言えるんじゃないかな。
関連:
雑種路線でいこう - 10年泥が嫌ならITお勧めだよ
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080717/it
関連エントリ:
好きなことは仕事にすべし
http://mojix.org/2005/01/06/234745