Googleマップのストリートビュー機能に思うこと
Internet Watch - 「ストリートビュー」のプライバシー問題、グーグルが方針説明
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/08/05/20489.html
CNET Japan - Google マップ日本版にも「ストリートビュー」機能--道路に立って街中を見渡せる
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20378334,00.htm
Google マップ ストリートビューのまとめ
http://google-streetview.seesaa.net/
Googleマップのストリートビュー機能が公開され、ネットの一部は話題騒然という感じだ。
私も見てみたのだが、たしかにこれは強烈だ。
いろいろ思うことがあり、考えがうまくまとまらないので、やや断片的なかたちだがメモしておきたい。
■ 路上の自動撮影で先行していたのはAmazon
路上の自動撮影で先行していたのは、Amazonの「A9 Yellow Pages」だった。
私はこれについて、2005年に書いている。
A9.com Maps - ミラーワールド時代の到来
http://mojix.org/2005/08/17/110815
A9 Yellow Pages
http://mojix.org/2005/01/31/163117
<ここまで来れば、ASIMOみたいなロボットが街を闊歩し、自動で街を撮影しはじめるのもそう遠くないだろう。
そのときわたしたちには、得るものと、失うものがある。
テクノロジーとはつねにそういうものだ>。
予想通り、Googleのストリートビュー機能はプライバシー問題で騒がれているようだが、このくらいはまだまだ序の口だろう。
ロボットを歩かせるのはまだ先にしても、固定カメラが設置されたり、飛行船などで撮影したりするのは、もうすぐだと思う。
■ まもなく人力による補完へ
Amazonは、「A9 Yellow Pages」で自動撮影した写真から「いいもの」を抽出するために、「Amazon Mechanical Turk」を考え出した。
Amazon Mechanical Turk
http://mojix.org/2005/11/05/112320
現時点のソフトウェア技術では解決できないタスクを人間向けに切り出して、システムを組み上げた。
Googleのストリートビュー機能も、必ずここへ向かうだろう。自動撮影した写真から抽出させたり、メタ情報を入れさせるのはもちろん、少額のギャラを出して、人間に撮影させるところまで行くと思う。
特に日本はみんなケータイを持っていて、そこにカメラがついているから、「Google取材班」を世界一つくりやすい国だろう。
■ GoogleはAmazonの後を追う
路上撮影だけでなく、Amazonは本のスキャンも早く、Googleがその後を追った。
Google App Engineにしても、AmazonのEC2やS3の後追いという側面がある。
Googleのストリートビュー機能は、これらにつづいて、GoogleがAmazonの後を追うもうひとつの例になった。
そもそもサーチエンジンとしても、Googleは一番手ではなかった。いいサービスを提供できれば、別に一番手でなくてもそのうち勝てることを、Googleはよくわかっているのだろう。
■ Googleの行動原理は同じ
Googleのストリートビュー機能は、実世界をターゲットにした写真なので強烈だが、やっていることはGoogleのキャッシュ、YouTubeなどとほぼ同じだ。
Googleのキャッシュにしても、YouTubeにしても、「事前の断りなしにコピーする」ということで成立しているところがある。いくら不適切なものをあとで消すといっても、ほとんど事実上追いつけないわけだ。Googleのストリートビュー機能も、まさにこの延長上にある。
なぜこんな傍若無人なやり方が許され、支持されるかというと、それで間違いなく「人類が便利になる」面が大きいからだ。
その「人類が便利になる」という判断、それが「正しい」のだという決定を、Googleは自分でおこなう。その実現のために、Googleの影響力・技術力・資金力・リーガルパワーなどを総動員して「強行突破」してしまうわけだ。
そのアメリカっぽい独善的な感じは、たしかに怖い面もあると同時に、法にとらわれたり、いちいち許可をとっていては、世界を大きく変えられないことも確かで、その勇気と行動力にエールを送りたい面もある。
実際、GoogleやYouTubeは「世界を変えた」といってもいいと思う。もしGoogleがもっと奥ゆかしくて、事前にいちいち許可をとっていたら、GoogleもYouTubeも存在していなかったはずだ。
■ 法や常識、考え方は、技術にあわせて変わらざるをえない
Googleのストリートビュー機能は、たしかに問題をはらんでおり、私にもアンビバレントな気持ちはある。しかし、これがもたらす利便性を考えると、おそらくGoogleがやはり正しいような気がする。
法や常識、そして人間の考え方は、そのときに何ができるかという「技術」に条件づけられている。「技術」が変われば、人間の考え方は変わらざるをえないし、その変化は遠からず法や常識にも及ぶ。
技術がもたらす負の側面は決して無視されるべきではないが、負の側面ばかりにとらわれて、技術そのものを否定してはならないと思う。
Googleのストリートビュー機能は、情報技術がこれから本格的に実世界と結びつきはじめていく、その動きの最初のきざしではないだろうか。こういう動きは、これからますます本格化していくと思う。こんなもので驚くのはまだ早く、もっともっと進んでいくわけだ。
これから何が起こるのか、もっと想像し、思考訓練しておく必要がありそうだ。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/08/05/20489.html
CNET Japan - Google マップ日本版にも「ストリートビュー」機能--道路に立って街中を見渡せる
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20378334,00.htm
Google マップ ストリートビューのまとめ
http://google-streetview.seesaa.net/
Googleマップのストリートビュー機能が公開され、ネットの一部は話題騒然という感じだ。
私も見てみたのだが、たしかにこれは強烈だ。
いろいろ思うことがあり、考えがうまくまとまらないので、やや断片的なかたちだがメモしておきたい。
■ 路上の自動撮影で先行していたのはAmazon
路上の自動撮影で先行していたのは、Amazonの「A9 Yellow Pages」だった。
私はこれについて、2005年に書いている。
A9.com Maps - ミラーワールド時代の到来
http://mojix.org/2005/08/17/110815
A9 Yellow Pages
http://mojix.org/2005/01/31/163117
<ここまで来れば、ASIMOみたいなロボットが街を闊歩し、自動で街を撮影しはじめるのもそう遠くないだろう。
そのときわたしたちには、得るものと、失うものがある。
テクノロジーとはつねにそういうものだ>。
予想通り、Googleのストリートビュー機能はプライバシー問題で騒がれているようだが、このくらいはまだまだ序の口だろう。
ロボットを歩かせるのはまだ先にしても、固定カメラが設置されたり、飛行船などで撮影したりするのは、もうすぐだと思う。
■ まもなく人力による補完へ
Amazonは、「A9 Yellow Pages」で自動撮影した写真から「いいもの」を抽出するために、「Amazon Mechanical Turk」を考え出した。
Amazon Mechanical Turk
http://mojix.org/2005/11/05/112320
現時点のソフトウェア技術では解決できないタスクを人間向けに切り出して、システムを組み上げた。
Googleのストリートビュー機能も、必ずここへ向かうだろう。自動撮影した写真から抽出させたり、メタ情報を入れさせるのはもちろん、少額のギャラを出して、人間に撮影させるところまで行くと思う。
特に日本はみんなケータイを持っていて、そこにカメラがついているから、「Google取材班」を世界一つくりやすい国だろう。
■ GoogleはAmazonの後を追う
路上撮影だけでなく、Amazonは本のスキャンも早く、Googleがその後を追った。
Google App Engineにしても、AmazonのEC2やS3の後追いという側面がある。
Googleのストリートビュー機能は、これらにつづいて、GoogleがAmazonの後を追うもうひとつの例になった。
そもそもサーチエンジンとしても、Googleは一番手ではなかった。いいサービスを提供できれば、別に一番手でなくてもそのうち勝てることを、Googleはよくわかっているのだろう。
■ Googleの行動原理は同じ
Googleのストリートビュー機能は、実世界をターゲットにした写真なので強烈だが、やっていることはGoogleのキャッシュ、YouTubeなどとほぼ同じだ。
Googleのキャッシュにしても、YouTubeにしても、「事前の断りなしにコピーする」ということで成立しているところがある。いくら不適切なものをあとで消すといっても、ほとんど事実上追いつけないわけだ。Googleのストリートビュー機能も、まさにこの延長上にある。
なぜこんな傍若無人なやり方が許され、支持されるかというと、それで間違いなく「人類が便利になる」面が大きいからだ。
その「人類が便利になる」という判断、それが「正しい」のだという決定を、Googleは自分でおこなう。その実現のために、Googleの影響力・技術力・資金力・リーガルパワーなどを総動員して「強行突破」してしまうわけだ。
そのアメリカっぽい独善的な感じは、たしかに怖い面もあると同時に、法にとらわれたり、いちいち許可をとっていては、世界を大きく変えられないことも確かで、その勇気と行動力にエールを送りたい面もある。
実際、GoogleやYouTubeは「世界を変えた」といってもいいと思う。もしGoogleがもっと奥ゆかしくて、事前にいちいち許可をとっていたら、GoogleもYouTubeも存在していなかったはずだ。
■ 法や常識、考え方は、技術にあわせて変わらざるをえない
Googleのストリートビュー機能は、たしかに問題をはらんでおり、私にもアンビバレントな気持ちはある。しかし、これがもたらす利便性を考えると、おそらくGoogleがやはり正しいような気がする。
法や常識、そして人間の考え方は、そのときに何ができるかという「技術」に条件づけられている。「技術」が変われば、人間の考え方は変わらざるをえないし、その変化は遠からず法や常識にも及ぶ。
技術がもたらす負の側面は決して無視されるべきではないが、負の側面ばかりにとらわれて、技術そのものを否定してはならないと思う。
Googleのストリートビュー機能は、情報技術がこれから本格的に実世界と結びつきはじめていく、その動きの最初のきざしではないだろうか。こういう動きは、これからますます本格化していくと思う。こんなもので驚くのはまだ早く、もっともっと進んでいくわけだ。
これから何が起こるのか、もっと想像し、思考訓練しておく必要がありそうだ。