2008.11.08
「オーストリー」への表記変更は消滅?
以前、「オーストリア」から「オーストリー」への表記変更が話題になった。

オーストリア : オーストリー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA..

<2006年10月、駐日オーストリア大使館商務部は、オーストラリアとの混同を防ぐため、国名の日本語表記を「オーストリア」から「オーストリー」に変更すると発表した。オーストリーという表記は、19世紀から1945年まで使われていた「オウストリ」という表記に基づいているとされた>。

<発表は大使館の一部局である商務部によるものだったが、署名はペーター・モーザー大使(当時)とエルンスト・ラーシャン商務参事官(商務部の長)の連名(肩書きはすでに「駐日オーストリー大使」「駐日オーストリー大使館商務参事官」だった)で、大使館および商務部で現在変更中だとされ、全面的な変更を思わせるものだった>。

しかし、これはあまり進んでいないようで、なんか自然消滅っぽい雰囲気だ。

<しかし2006年11月、大使は、国名表記を決定する裁量は日本国にあり、日本国外務省への国名変更要請はしていないため、公式な日本語表記はオーストリアのままであると発表した。ただし、オーストリーという表記が広まることにより、オーストラリアと混同されることが少なくなることを願っているとされた>。

<その後、大使館商務部以外では、大使館、日本の官公庁、マスコミュニケーションなどに「オーストリー」を使う動きは見られない。たとえば、2007年5月4日の朝日新聞の記事では、同国を「オーストリア」と表記している>。

<大使館商務部の公式サイトは、しばらくは一貫して「オーストリー」を使っていた。しかし、2007年のサイト移転・リニューアルと前後して(正確な時期は不明)、大使館商務部のサイトでも基本的に「オーストリア」を使うようになった>。

う~ん、残念。「オーストリー」、いいと思うけどなあ。

名前というものの最も重要な機能は「識別」だ。異なるものに異なる名前をあてるからこそ、名前の意味がある。

「オーストリア」と「オーストラリア」という名前の類似は、2国の識別性を低下させている。

これは、オーストリアやオーストラリアの関係者にとって機会損失やコストになっているだけでなく、そのまぎらわしい名前を使いつづける日本人・日本語使用者の全員にとってコストになっている。それは「日本語」の一部だからだ。

オーストリア大使が<国名表記を決定する裁量は日本国にある>と言っている通り、これは日本語なのだから、日本人が決めるべき問題だ。オーストリアから言われなくたって、日本語はつねに改良していくべきだろう。

日本語をひとつの「設計」と見なせば、日本語の改良は「リファクタリング」だ。たしかに設計変更のコストはかかるが、かかるコスト以上に利便性が向上するなら、ぜひとも断行すべきだ。

外務省や大手マスコミなど、この変更に関して決定力や影響力を持っているところは、ぜひとも「オーストリー」への変更を再度検討してほしい。これで2国の混同や間違いが減れば、誰もがトクをするのだ。


関連:
Österreich - 「オーストリー」表記はまだ検討段階みたい
http://revivalgate.net/social/2006-11-15a.html
「オーストリー」呼称問題へのマスコミ各社の対応
http://d.hatena.ne.jp/YUYUKOALA/20061117/Austria