2008.12.04
システム内製化のメリットはコスト削減ではなく、ITリテラシーが高まること
ITpro - ヒトもカネもなくともシステム内製はできる
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081202/320537/

<「ヒトもカネもない中小企業でも,やればできる」---菅雄一氏は関西のある企業のたった一人のシステム担当である。従業員約200人の製造業で,ほぼ独力でネットワークを引きサーバーを立て,社内向けのグループウエアや顧客向けのQ&A情報検索システム,販売システムなどを構築してきた。
 ミドルウエアとして使っているのは,すべてオープンソース・ソフトウエア。ハードウエアの代金と回線料を除けば,費用はほぼ菅氏の人件費だけだ>。

「Linux好き事務員」として一部では有名な菅雄一氏の事例紹介を軸にした面白い記事。

この菅氏のような熱心な人材がいる中小企業はやや例外的だと思うが、システム内製化の動きが進んでいるのは間違いないようだ。

ITpro - システム内製が,日本の国力を底上げする
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20081016/317019/

<「最近,システムを自社で内製する企業が増えていない?」
 2008年10月15日号の日経コンピュータで特集した「システム内製化 再び!~自社開発を強化する12社の決断」は,編集部内のある記者が発したこの一言が始まりだった。部内の記者や編集委員などから続々と「システム内製」の情報が集まってきた。かく言う筆者も内製回帰への兆しを感じていた。ベンダーの評判を聞いても“要領を得ない”ユーザーに最近連続して出会っていたからだ>。

ITpro - システム内製化 再び! 自社開発を強化する12社の決断
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NC/20081009/316585/

<金融機関など一部の企業を除き、IT部門の縮小や技術の複雑化を前にギブアップし“絶滅”したかに見えた「システム内製」。ところがここにきて、あちらこちらの企業で“復活”しているのを本誌はキャッチした。時代のあだ花か、それとも大きな潮流となるのか──。インターネット系のベンチャー企業から、伝統的な製造業や流通業まで。幅広い業種で、内製化に転換した企業あるいは当初から内製を貫く企業12社を選び、彼らの証言から内製化の“真相”を探る>。

システム内製化(システムを使いたいユーザ企業が、ベンダーに外注せず、自分でシステムを作ること)の流れが復活してきているとのことで、これはとてもいい動きだと思う。

システムを内製する最大のメリットは、コスト削減ではなく、「ITリテラシーが高まる」ことだと思う。真のコスト削減とは、ただ見かけの数字を安くすることではなく、「間違った買い物」をしないことだ。ITリテラシーが高まれば、ただ有名な大手ベンダーに頼めばいいとか、逆にとにかく安い見積もりを出してくるベンダーに頼むといった安直さがなくなり、あるていど中身を見て判断できるようになる。

そして上の記事にもあるように、社内に人材が育つというのも大きい。とはいえ、まったく資質のない人間をゼロから育てて、冒頭の記事に出てくる「Linux好き事務員」菅雄一氏のようにする、というのは現実的ではないから、社内を探して資質のある人間がいない場合は、採用する必要があるだろう(すると、やはり雇用の問題に行き当たるのだが)。

私はシステムを提供するベンダー側の人間だが、ベンダーの立場からも、システム内製化の動きは歓迎だ。けっきょく、「日本のITリテラシー」が全体的に向上すること、<日本の国力を底上げする>ことが重要なのだ。これによって、ユーザ企業も「正しい買い物」をするようになり、社内にIT人材も育てば、ITベンダーは不要になるのではなく、より高度な仕事ができるようになるだろう。


関連エントリ:
「米国のCTO」がうらやましい
http://mojix.org/2008/11/19/us_cto
雇用規制撤廃と減税で日本経済は再生する
http://mojix.org/2008/05/28/revive_japan_economy