mojix.org
バーナンキがオーストリア学派に「思想転換」した？
池田信夫氏が「バーナンキの懐疑主義」で紹介している、以下のエントリが面白い。
Murray Hill Journal - 思想転換を迎えたバーナンキ
http://wholekernel.blogspot.com/2009/05/blog-post_24.html
FRB議長のバーナンキが最近のスピーチで「思想転換」を告白したというもの。The Daily Capitalistという経済ブログの「Bernanke: A Stunning Revelation」というエントリ（英文）が原文で、Murray Hill Journalがその全文を日本語に訳して、解説・補足を加えている（以下の引用は、この日本語訳からのもの）。
バーナンキはスピーチで、経済の予測は天気の予測より難しいかもしれない、なぜならば‥として、こんなことを言っている。
＜経済というものは物理学の法則にしたがって行動する分子の集合体ではなく、おのおのが未来を考えおのおのが独自の予測に影響されて行動を起こす人間の集合体である＞。
原文：an economy is not made up of molecules whose behavior is subject to the laws of physics, but rather of human beings who are themselves thinking about the future and whose behavior may be influenced by the forecasts that they or others make.
人間は分子と違い「予測する動物」であり、「自分や他者の予測によって行動が影響される」。分子と人間はさまざまに異なるが、特に「予測」というものが行動に影響を与えるという点が、人間の大きな特徴なのだ。その人間の集合体である経済を「予測」するというのは、確かに困難だろう。
「Bernanke: A Stunning Revelation」では、このバーナンキのスピーチにあらわれている見方は、オーストリア学派（フォン・ミーゼスやハイエクなど）の見方に近いとして、ハイエクの発言などを紹介し、詳しく解説している。
オーストリア学派というのは、政治的にはリバタリアニズムと重なる考え方で、経済への政府介入は無意味あるいは有害だと主張するような立場だ。
バーナンキ自身はオーストリア学派の名前を出していないようだし、オーストリア学派に「転向」したとも思えないので、「思想転換」は大げさかもしれない。しかし、かつては「ヘリコプター・ベン」と呼ばれ、自己のインフレターゲット政策に自信満々だったバーナンキが、金融危機を経験してその自信を失い、いまやオーストリア学派のような懐疑主義をわずかでも示すに至ったというのは、注目すべきことだろう。
The Daily CapitalistのJeff Hardingは、こう書いている。
＜諸君、これは極めて重要な話ではないか。もしFRB連銀が金融政策の経済へのインパクトの結果を正確に予測しえないと信じているならば、金融刺激策ほか連銀が扱うポリシーに、いったい何の意味があるのか？正確な計量経済モデルを持たずして、いったい何を基準にして金利水準を決定するのか？ケインズ派の財政出動が効果があるかどうかをどう判断するのか？
それに対する簡単な答えは、こうである。これらポリシーには効果はないし、これまでも効果はなかったし、解決よりもむしろ更なる問題を生むだけだ。ブームが来たらまた暴落が来る、そのサイクルを延々と繰り返してきた理由は、そこにあるのである＞。
バーナンキが経済を計量的に予測することの困難を認め、オーストリア学派のような見方を示したということは、金融政策というものの根拠が怪しい、ということを暗に意味しかねないのだ（実際、FRBの経済予測はたいがい外れてきたとスピーチで認めている）。その一挙一動が世界経済を左右するFRBトップの発言としては、確かに驚くべき率直さかもしれない。
関連：
Murray Hill Journal - 思想転換を迎えたバーナンキ
http://wholekernel.blogspot.com/2009/05/blog-post_24.html
池田信夫blog - バーナンキの懐疑主義
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/bc75e1c5cd62d8b464a68843d4bf93d7
The Daily Capitalist - Bernanke: A Stunning Revelation
http://dailycapitalist.com/2009/05/24/bernanke-a-stunning-revelation/
経済思想の歴史 - オーストリア学派 (The Austrian School)
http://cruel.org/econthought/schools/austrian.html
ウィキペディア - ベン・バーナンキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99..
Murray Hill Journal - 思想転換を迎えたバーナンキ
http://wholekernel.blogspot.com/2009/05/blog-post_24.html
FRB議長のバーナンキが最近のスピーチで「思想転換」を告白したというもの。The Daily Capitalistという経済ブログの「Bernanke: A Stunning Revelation」というエントリ（英文）が原文で、Murray Hill Journalがその全文を日本語に訳して、解説・補足を加えている（以下の引用は、この日本語訳からのもの）。
バーナンキはスピーチで、経済の予測は天気の予測より難しいかもしれない、なぜならば‥として、こんなことを言っている。
＜経済というものは物理学の法則にしたがって行動する分子の集合体ではなく、おのおのが未来を考えおのおのが独自の予測に影響されて行動を起こす人間の集合体である＞。
原文：an economy is not made up of molecules whose behavior is subject to the laws of physics, but rather of human beings who are themselves thinking about the future and whose behavior may be influenced by the forecasts that they or others make.
人間は分子と違い「予測する動物」であり、「自分や他者の予測によって行動が影響される」。分子と人間はさまざまに異なるが、特に「予測」というものが行動に影響を与えるという点が、人間の大きな特徴なのだ。その人間の集合体である経済を「予測」するというのは、確かに困難だろう。
「Bernanke: A Stunning Revelation」では、このバーナンキのスピーチにあらわれている見方は、オーストリア学派（フォン・ミーゼスやハイエクなど）の見方に近いとして、ハイエクの発言などを紹介し、詳しく解説している。
オーストリア学派というのは、政治的にはリバタリアニズムと重なる考え方で、経済への政府介入は無意味あるいは有害だと主張するような立場だ。
バーナンキ自身はオーストリア学派の名前を出していないようだし、オーストリア学派に「転向」したとも思えないので、「思想転換」は大げさかもしれない。しかし、かつては「ヘリコプター・ベン」と呼ばれ、自己のインフレターゲット政策に自信満々だったバーナンキが、金融危機を経験してその自信を失い、いまやオーストリア学派のような懐疑主義をわずかでも示すに至ったというのは、注目すべきことだろう。
The Daily CapitalistのJeff Hardingは、こう書いている。
＜諸君、これは極めて重要な話ではないか。もしFRB連銀が金融政策の経済へのインパクトの結果を正確に予測しえないと信じているならば、金融刺激策ほか連銀が扱うポリシーに、いったい何の意味があるのか？正確な計量経済モデルを持たずして、いったい何を基準にして金利水準を決定するのか？ケインズ派の財政出動が効果があるかどうかをどう判断するのか？
それに対する簡単な答えは、こうである。これらポリシーには効果はないし、これまでも効果はなかったし、解決よりもむしろ更なる問題を生むだけだ。ブームが来たらまた暴落が来る、そのサイクルを延々と繰り返してきた理由は、そこにあるのである＞。
バーナンキが経済を計量的に予測することの困難を認め、オーストリア学派のような見方を示したということは、金融政策というものの根拠が怪しい、ということを暗に意味しかねないのだ（実際、FRBの経済予測はたいがい外れてきたとスピーチで認めている）。その一挙一動が世界経済を左右するFRBトップの発言としては、確かに驚くべき率直さかもしれない。
関連：
Murray Hill Journal - 思想転換を迎えたバーナンキ
http://wholekernel.blogspot.com/2009/05/blog-post_24.html
池田信夫blog - バーナンキの懐疑主義
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/bc75e1c5cd62d8b464a68843d4bf93d7
The Daily Capitalist - Bernanke: A Stunning Revelation
http://dailycapitalist.com/2009/05/24/bernanke-a-stunning-revelation/
経済思想の歴史 - オーストリア学派 (The Austrian School)
http://cruel.org/econthought/schools/austrian.html
ウィキペディア - ベン・バーナンキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99..