2009.06.10
ウラ・アオゾラブンコ これぞ「情報デザイン」のお手本
ウラ・アオゾラブンコ
http://uraaozora.jpn.org/



著作権の切れた昔の文学作品などを公開している「青空文庫」という素晴らしいプロジェクトがあるが、この「ウラ・アオゾラブンコ」は、<インターネットの電子図書館、青空文庫を、より利用しやすいものとなるよう手助けする目的>で作られたサイトだ。

このサイトがすごくよくできていて、文学が好きな人はもちろん、それほど文学が好きというほどでもない人でも、えんえんクリックして読ませてしまうような魅力がある。

トップには作家の顔写真が並んでいて、そのどれかをクリックすると、作家別のページになる。例えば、横光利一(よこみつりいち)のページを見てみよう。

ウラ・アオゾラブンコ - 横光利一
http://uraaozora.jpn.org/yokomitsu.html

まず冒頭に数行の解説文があるのだが、これが実によくまとまっていて、ウィキペディアの「横光利一」よりも簡潔で見やすいくらいだ。他のどの作家のページを見ても、同じように数行で簡潔にまとめられているので、おそらくサイト主が自分で書いているのだろう。この数行の解説文だけでも価値があるくらい、水準が高い。

解説文の下には、ウィキペディアの「横光利一」ページと、「文学者掃苔録図書館」の「横光利一」ページへのリンクがある。

次の「著作目録」のセクションには、「小説・戯曲」と「エッセイ・その他」の一覧ページへのリンクがある。一覧ページでは作品が発表年順に並んでいて、ここがこのサイトの本来の狙いである「作家別の発表年順による作品一覧」にあたる。この一覧ページから、「青空文庫」にある各作品のページにリンクしている。

その下は「回想録」で、井伏鱒二や大岡昇平、川端康成などが横光利一について語っている文章が抜粋されている。この「回想録」の部分が実に良くて、その作家について語っている言葉を読むことで、その作家への興味がかき立てられるようになっている。この「回想録」が、サイトの魅力を大きく高めている。

いちばん下には、横光利一の写真が時代順に3枚並んでいる。

ざっと以上のような作りで、他のどの作家のページも同じ構成のようだ。

このサイトは、まさに「情報デザイン」というもののお手本になっていると思う。大ざっぱにいえば、「青空文庫」にある作品に対して「一覧・インデックス」をつけたサイト、ということになるが、その仕事の水準がきわめて高い。

1)トップページ、2)作家別ページ、3)作品一覧、という大きく3レベルのインデックス(一覧)ページを提供して、そこから最終的なコンテンツ(「青空文庫」内の作品)に導いているわけだが、特に2)の作家別ページの一貫した構成と、写真や回想録によってその作家のイメージを高める作りが素晴らしい。これによって、「作家」を軸とした明快さが生まれている。各ページの作りもスッキリしていて、きわめて読みやすい。

もちろん、こうした「情報デザイン」に加えて、このサイト主自身が書いていると思われる解説文をはじめ、サイト主の文学的教養・センスが大きな役割を果たしていることは言うまでもない。

「デザイン」にもいろいろあるが、「情報デザイン」とは、まさにこのサイトのような「わかりやすさ」「明快さ」を作り出すということだろう。ワーマンの「理解を創造する」という言葉をあらためて思い出す。

学習や教育という観点で見ても、「いかに興味をかき立てるか」「いかにわかりやすく見せるか」という点で、このサイトは大いに参考になるだろう。


関連:
ウィキペディア - 情報デザイン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85..

関連エントリ:
面白い歴史的文献が満載 日本ペンクラブの「電子文藝館」
http://mojix.org/2009/04/14/japanpen_bungeikan
学習とは何がおもしろいかに気づくこと - ワーマン 『情報選択の時代』
http://mojix.org/2003/10/12/2158