2009.06.21
グローバル・イルミネーションは「光学エンジン」である
3Dアニメーションの作成に用いられる、「物理エンジン」と呼ばれる種類のソフトウェアがある。

3Dの中の世界には、現実の世界と異なり、「物理法則」がない。どんなものでも、現実にはありえないような仕方で動かせる。3Dとは結局のところ「絵」に過ぎないから、それは当然のことだ。

しかし、「現実にはありえないような仕方で動かせる」ことは、時にはメリットにもなるが、どちらかというと、「現実と同じように動かしたい」ことのほうが多い。

3Dの中の「物体」を「現実と同じように動かす」には、その「物体」を勝手に動かすのではなく、重力場などの制約を与えて、現実の物理法則に沿って動かす必要がある。

どんな3Dアニメーションを作りたいかは、人や場合によってさまざまだが、「現実の物理法則」はあらかじめ決まっている。つまり、どんな3Dアニメーションを作る場合でも、「現実の物理法則に沿って動かす」ことをやろうとすれば、似たような計算をすることになる。これを助けるのが「物理エンジン」だ。

「物理エンジン」を使うと、3Dの中の「物体」が、「現実と同じように動く」。これによって、3D動画にある程度の「現実っぽさ」が生まれるわけだ。

つまり「物理エンジン」とは、「現実っぽい動き」を生み出すものだ。

この「物理エンジン」の役割と、グローバル・イルミネーションの役割はよく似ている。

グローバル・イルミネーションは、物理法則によって「光の動き」を計算する。いわば「現実と同じように光を動かす」のだ。

グローバル・イルミネーションによって描かれる3Dは静止画であり、その中の「物体」は止まっている。その静止した光景を、「光を動かす」ことによって精緻に描き出していくのが、グローバル・イルミネーションだ。

グローバル・イルミネーションによって生成される3D画像は、どこにも存在しない光景なのに、まるで写真のように「現実っぽい」。その理由は、「光の動き」が物理法則に従っており、「光が現実と同じように動いている」からだ。

グローバル・イルミネーションの「現実っぽさ」を支えているのは、光が従う物理法則、すなわち光学である。つまりグローバル・イルミネーションとは、いわば「光学エンジン」なのだ。


関連:
ウィキペディア - 物理演算エンジン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%..
ウィキペディア - グローバル・イルミネーション
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0..
ウィキペディア - 光学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E5%AD%A6

関連エントリ:
「光」がこんなに面白いものだったとは
http://mojix.org/2009/05/26/sunflow_light
「現実は光でできている」 グローバル・イルミネーションの威力
http://mojix.org/2009/05/24/reality_light
中嶋謙互の「ワールド・シンセサイザー」構想
http://mojix.org/2005/08/31/092511