2011.01.10
「形式科学」なる概念があるそうだが、数学は科学なのか?
ウィキペディアを見ていて、「形式科学」なる概念があることを知った。

ウィキペディア - 形式科学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%A2..

<形式科学(けいしきかがく、英: formal science)とは形式体系に関係する学問の総称である。論理学、数学、システム理論に加え、計算機科学、情報理論、ミクロ経済学、統計学、言語学のうち理論的な研究分野がこれに含まれる>。

<形式科学を自然科学と比較すれば、形式科学が理論上のアイデアから他のアイデアを推論(純粋な思考の過程)のみによって導き出すのに対し、自然科学は現実の観測・観察から得られた知識をもとに現実世界を簡潔に表すモデルとして、現実と整合するように示される>。

<私たちは形式科学だけでは現実の世界について何も知ることはできず、また現実についての何かしらの事実を証明することもできない>。

現実世界について何も語らず、現実世界によって反証される可能性のない純粋な理論体系は、「科学」ではないというのが私の理解である。それはむしろ「言語」だろう。

この話は以前、「数学と科学の違い」というエントリで書いたことがある。

数学と科学の違い
http://mojix.org/2008/05/07/math_and_science

<分析的(analytic)な言明は、その真偽が言語の無矛盾性のみで決まる。
 総合的(synthetic)な言明は、その真偽が現実世界の状態によって決まる>。

<数学は言語体系なので、すべての言明は分析的である。
 よって、数学が現実世界について何かを述べることはない。
 数学の言明の真偽を判定するために、現実世界と照合する必要はないし、それは無意味である>。

<科学は言語体系と世界記述の混合であり、分析的な言明と総合的な言明がある。
 よって、科学はその世界記述の側面で、現実世界について何かを述べる。
 科学の総合的な言明の真偽を判定するには、現実世界と照合する必要がある>。

「分析的(analytic)」と「総合的(synthetic)」の区別は、要するに「言語体系」と「現実世界」の区別である。

「言語体系」は人間が自由に作れるものだが、「現実世界」は人間が作るものではない。「科学」とは、「現実世界」がどうなっているかを解明することだ。

数学も科学に含める「形式科学」なる概念は、単に学問分類の便宜上から出てきたものかもしれない。しかし、数学を科学に含めてしまうと、無矛盾な言語体系は全部「科学」になってしまうだろう。これでは「科学」という概念がひろがりすぎて、無意味化するように思う。


関連エントリ:
ルールと法則の違い
http://mojix.org/2008/05/26/rule_and_law
数学と科学の違い
http://mojix.org/2008/05/07/math_and_science