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「科学技術」か「科学・技術」かは、政策でなく日本語の問題
日本経済新聞 - 科学者vs官僚 「科学・技術」と「科学技術」違い巡り論争（2011/4/19 7:00）
http://www.nikkei.com/life/family/article/g=..
＜原子力発電所事故への対応など、国の安全面でも重要な役割を担うべき科学技術行政。この「科学技術」の表記を「科学・技術」に変えようとする動きがあり、科学者と官僚らが論争しています。「・」は同格や並列を表すので、「科学・技術」と書いた場合「科学」と「技術」は別物であることが明確になります。今後の科学技術政策にまで影響しかねない「・」に込めた思いとは――＞。
まだ引っぱっているらしいこの話題。これについては、これまでに２回書いているが（「「科学技術」じゃなくて、「科学・技術」にする？」、「「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい」）、今回の記事もどうも納得いかないので、再度コメントしたい。
＜科学者の代表機関である日本学術会議は昨年８月、科学技術基本法を改正して同法で使われる「科学技術」という用語を「科学・技術」に変えるよう菅直人首相に勧告しました。勧告は同会議で最も重い意思表示。「科学技術」のままでは、「科学と技術」ではなく「科学に基礎付けられた技術」の意味に取り違えられ、政策が成果主義に偏り、科学軽視・技術重視になりかねないとの危惧があるからです。一例を挙げれば「科学はロケット発射技術のためだけに存在するわけではない」ともいえます＞。
＜国の科学技術政策の方針を決める総合科学技術会議も同じ立場。１年前に閣議決定された政府の新成長戦略で「科学・技術」が採用され、同会議のホームページにも「科学・技術関係予算の重点化」などと表記し始めました。しかし順調に事は進みません。今回の原発事故で見直しが決まりましたが、昨年末に答申した「第４期科学技術基本計画」(2011～15年度)では従来案にあった「・」を抜き、「科学技術」に戻されたことで法改正への歩みが後退しました＞。
日本学術会議や総合科学技術会議が、「科学・技術」にしろという立場らしい。＜「科学技術」のままでは、「科学と技術」ではなく「科学に基礎付けられた技術」の意味に取り違えられ、政策が成果主義に偏り、科学軽視・技術重視になりかねないとの危惧がある＞とのことだ。
＜「日本語としておかしい」「『総合科学・技術会議』といった表記にするのか」。官僚側の根強い反発もあります。総合科学技術会議の議員を兼ねる日本学術会議の金沢一郎会長は「『科学技術』のままでは（当面の実用を前提としない）基礎科学だけでなく、（本来は文系の領域である）人文・社会科学も『科学技術』の一部として不当に扱われてしまう。だからまず法律で明確に区別し、誤解を招かないようにすべきだ」と法改正の意義を訴えます＞。
いっぽう、官僚側が根強く反発しているとのこと。このように、この記事ではおよそ、
科学者側：「科学・技術」にしろ
官僚側：「科学技術」でいい
というふうに、立場の違いを図式化している。
以前の「「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい」で採り上げたasahi.comの記事では、金田一秀穂教授（日本語学）のコメントがあり、「・」は必ずしも入れなくてもいい、と述べていた。
今回の日経の記事では、「科学技術」陣営は＜官僚側の根強い反発＞と書かれているだけで、具体的な人名も、コメントもない。「科学・技術」にしろという科学者側のコメントばかり載せていて、まるで「科学技術」側はワルモノ扱いである。
私は新聞が公平であるべきとは思っておらず、むしろ偏るのが当然だと思っているので、この日経の記事が「不公平だ」とは思わない。単に、「この記事はわかってないな」と思うだけである。
新聞の論調という意味でいえば、私は朝日よりも日経に共感することのほうが多いが、この話題については、朝日の昨年12月の記事のほうがはるかに良かったと思う。今回の日経の記事は、「科学・技術」側に寄るのは別にいいとしても、あまりにも雑だ。
「科学技術」と「科学・技術」のどちらがいいかというのは、政策ではなく、むしろ日本語の問題だろう。日本学術会議とか、総合科学技術会議といった人たちは、単に政策提言をしているつもりかもしれないが、これはむしろ、日本語を改変しようとしているのに近い。
別に日本語を一切変えるなとは思わない。変えたほうが便利になるならば、どんどん変えればいいと思う。しかし、「科学技術」を「科学・技術」に変えて、便利になるのだろうか。むしろ、不便になるような気がする。
「科学技術」か「科学・技術」かというのは、政策論争というよりは、日本語の話だろう。ましてや、科学者と官僚の対立といった安直な図式におさまるはずもない。私は官僚の味方でもなんでもないが、日本語を使う１人の日本人として、「科学技術」のままでいいと思う。
関連エントリ：
「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい
http://mojix.org/2010/12/17/kagaku-gijutsu2
「科学技術」じゃなくて、「科学・技術」にする？
http://mojix.org/2010/03/09/kagaku_gijutsu
http://www.nikkei.com/life/family/article/g=..
＜原子力発電所事故への対応など、国の安全面でも重要な役割を担うべき科学技術行政。この「科学技術」の表記を「科学・技術」に変えようとする動きがあり、科学者と官僚らが論争しています。「・」は同格や並列を表すので、「科学・技術」と書いた場合「科学」と「技術」は別物であることが明確になります。今後の科学技術政策にまで影響しかねない「・」に込めた思いとは――＞。
まだ引っぱっているらしいこの話題。これについては、これまでに２回書いているが（「「科学技術」じゃなくて、「科学・技術」にする？」、「「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい」）、今回の記事もどうも納得いかないので、再度コメントしたい。
＜科学者の代表機関である日本学術会議は昨年８月、科学技術基本法を改正して同法で使われる「科学技術」という用語を「科学・技術」に変えるよう菅直人首相に勧告しました。勧告は同会議で最も重い意思表示。「科学技術」のままでは、「科学と技術」ではなく「科学に基礎付けられた技術」の意味に取り違えられ、政策が成果主義に偏り、科学軽視・技術重視になりかねないとの危惧があるからです。一例を挙げれば「科学はロケット発射技術のためだけに存在するわけではない」ともいえます＞。
＜国の科学技術政策の方針を決める総合科学技術会議も同じ立場。１年前に閣議決定された政府の新成長戦略で「科学・技術」が採用され、同会議のホームページにも「科学・技術関係予算の重点化」などと表記し始めました。しかし順調に事は進みません。今回の原発事故で見直しが決まりましたが、昨年末に答申した「第４期科学技術基本計画」(2011～15年度)では従来案にあった「・」を抜き、「科学技術」に戻されたことで法改正への歩みが後退しました＞。
日本学術会議や総合科学技術会議が、「科学・技術」にしろという立場らしい。＜「科学技術」のままでは、「科学と技術」ではなく「科学に基礎付けられた技術」の意味に取り違えられ、政策が成果主義に偏り、科学軽視・技術重視になりかねないとの危惧がある＞とのことだ。
＜「日本語としておかしい」「『総合科学・技術会議』といった表記にするのか」。官僚側の根強い反発もあります。総合科学技術会議の議員を兼ねる日本学術会議の金沢一郎会長は「『科学技術』のままでは（当面の実用を前提としない）基礎科学だけでなく、（本来は文系の領域である）人文・社会科学も『科学技術』の一部として不当に扱われてしまう。だからまず法律で明確に区別し、誤解を招かないようにすべきだ」と法改正の意義を訴えます＞。
いっぽう、官僚側が根強く反発しているとのこと。このように、この記事ではおよそ、
科学者側：「科学・技術」にしろ
官僚側：「科学技術」でいい
というふうに、立場の違いを図式化している。
以前の「「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい」で採り上げたasahi.comの記事では、金田一秀穂教授（日本語学）のコメントがあり、「・」は必ずしも入れなくてもいい、と述べていた。
今回の日経の記事では、「科学技術」陣営は＜官僚側の根強い反発＞と書かれているだけで、具体的な人名も、コメントもない。「科学・技術」にしろという科学者側のコメントばかり載せていて、まるで「科学技術」側はワルモノ扱いである。
私は新聞が公平であるべきとは思っておらず、むしろ偏るのが当然だと思っているので、この日経の記事が「不公平だ」とは思わない。単に、「この記事はわかってないな」と思うだけである。
新聞の論調という意味でいえば、私は朝日よりも日経に共感することのほうが多いが、この話題については、朝日の昨年12月の記事のほうがはるかに良かったと思う。今回の日経の記事は、「科学・技術」側に寄るのは別にいいとしても、あまりにも雑だ。
「科学技術」と「科学・技術」のどちらがいいかというのは、政策ではなく、むしろ日本語の問題だろう。日本学術会議とか、総合科学技術会議といった人たちは、単に政策提言をしているつもりかもしれないが、これはむしろ、日本語を改変しようとしているのに近い。
別に日本語を一切変えるなとは思わない。変えたほうが便利になるならば、どんどん変えればいいと思う。しかし、「科学技術」を「科学・技術」に変えて、便利になるのだろうか。むしろ、不便になるような気がする。
「科学技術」か「科学・技術」かというのは、政策論争というよりは、日本語の話だろう。ましてや、科学者と官僚の対立といった安直な図式におさまるはずもない。私は官僚の味方でもなんでもないが、日本語を使う１人の日本人として、「科学技術」のままでいいと思う。
関連エントリ：
「科学技術」を「科学・技術」にするか、という話でまだモメているらしい
http://mojix.org/2010/12/17/kagaku-gijutsu2
「科学技術」じゃなくて、「科学・技術」にする？
http://mojix.org/2010/03/09/kagaku_gijutsu