2011.04.28
早い人がトク
以前、何かのセミナーだったかイベントだったか、早く申し込むほど料金が安い、というのを見たことがある。

この「早い人がトク」という料金システムは、とてもいいと思うのだが、それほど見かけない気がする。よく見かけるのは、飛行機のチケットくらいだろうか。

食品など、だんだん鮮度が下がるものの場合は、時間の経過にしたがって、むしろ安くなる。これは当然だろう。

しかしセミナーやイベント、パック旅行などの場合、たいてい事前に支払うので、鮮度が下がるわけでもない。販売側の立場としては、売れる数をできるだけ早く知りたいので、むしろ早く売りたい。よって、「早い人がトク」という料金システムをやる動機があるわけだ。

「早い人がトク」という仕組みは、料金システムに限らず、いろいろなところに応用可能だと思う。

例えば、日本では授業やセミナー、会社の会議などで、手をあげて質問する人が少ない傾向がある。私の知る限り、少なくともアメリカでは、くだらない質問でも「ハイ!ハイ!」と手をあげて、積極的に質問するのにためらいがない。日本では、「間違うこと」への恐怖が大きいのか、消極的である。

こういう場面でも、早く手をあげて質問した人は高評価、という仕組みになっていれば、積極的に質問する人が増えるだろう。

人間は結局のところ、「インセンティブ」にしたがって行動している。日本人がなかなか手をあげて質問しようとしないのは、「間違ったら恥をかく」とか、「目立つとロクなことがない」といった負のインセンティブが強いからだろう。これはつまり、「他人の間違いを責める」とか、「目立つ奴は叩く」という傾向が、日本社会には強いことを意味している。

これを例えば、「早く行動した人は、正しかろうと間違っていようと、その積極性を評価する」という評価基準に変えたら、どうだろうか。「早い人がトク」な料金システムと同じように、「他人より先に動くことはいいことだ」という見方を、評価基準やインセンティブ設計に落とし込むのだ。

日本では、他人の行動を見て、「空気」を読んでから動き出す、という傾向が強い。これは、そのようにふるまったほうがトクになるように、社会ができているからだろう。先に飛び出して、目立った人間が叩かれる、という場面を何度も見て、学習しているのだ。

日本には、「早い人がトク」になるような仕組みが、もっと必要だ。心がけや精神論ではなく、実際にトクになるようにインセンティブを設計すれば、人間の行動はかんたんに変わる。


関連エントリ:
アメリカ人は「希望駆動型」、日本人は「危機感駆動型」
http://mojix.org/2009/07/31/us_kibou_jp_kiki
わたしたちはつねに「インセンティブの場」を動き回っている
http://mojix.org/2008/10/29/incentive_field