「人を利用する」とか、「立場を利用する」というと、腹黒くて、悪い奴という感じがする。

しかし、「人を活用する」とか、「立場を活用する」というと、ぐっとイメージが良くなって、デキる奴という感じがする。

この違いはなぜ生じるのか。

その理由は、「人を利用する」「立場を利用する」というときの「利用」という言葉には、最初から悪いイメージがあるからだ。いっぽう「活用」という言葉には、最初から良いイメージがある。

つまり、「利用」という言葉が選ばれている時点で、そこには最初からマイナスの価値判断がある。「利用」という言葉は、しばしば批判的な文脈で使われる。

いっぽう「活用」という言葉が選ばれている時点で、そこには最初からプラスの価値判断がある。批判的な文脈で「活用」は使われない。つまり「活用」は褒め言葉なのだ。

「利用」と書くか、「活用」と書くか。その選択ひとつ取っても、そこに書き手の態度があらわれる。

書くということは、こうした「言葉の選択」の連続である。よって、書くということは、書かれる対象について伝えていると同時に、書き手自身の態度や価値判断についても伝えている。