2012.10.04
もし野球チームが100人だったら
もし野球チームが9人ではなく100人だったら、野球の試合はどんな感じになるだろうか。

守備では、100人の選手がグラウンドを埋め尽くす。内野にたくさん野手を置くとジャマになるので、主に外野に配置されるだろう。外野では、どこにボールが飛んでも、そこに野手がいるので、野手はほとんど走る必要がない。外野へのフライがヒットになることはほとんどなく、野手がエラーした場合だけだ。左中間とか右中間というものもないので、ヒットは出にくくなる。

いっぽう攻撃も、100人が打席に立つ。自分の打席が回ってくるのは、100回に1回である。ただでさえヒットが出にくい上に、自分の打席が100回に1回しか回ってこないのでは、1試合で打てる打者はせいぜい30~40人だろう。残りの選手はヒマでしょうがない。

このように、もし野球チームが100人だったら、1人が担当する守備も攻撃も少なすぎて、選手はじつに退屈である。いっぽう、この試合を見ている側も、ほとんどヒットが出ず、野手もほとんど動かないので、さっぱり面白くない。変化の余地が少なすぎて、スリルがないのだ。

チームが100人だと、スポーツ新聞もたいへんである。打順が100人になるので、字を小さくしないと掲載できない。あるいは、全部掲載はあきらめるかもしれない。守備も100人で、もはや決まった守備位置もないので、個々の選手を識別するのがむずかしくなる。全員がエキストラの映画みたいなものだ。1人の選手が活躍する余地が少なすぎて、「キャラ」が成立しなくなる。

ここからわかるのは、「ゲームデザイン」の良し悪しというものはたしかに存在する、ということだ。「チームは9人」という野球のルールは、「チームは100人」というルールよりも、よいゲームデザインなのだ。

つまり、「よいゲームデザイン」というのは、「ゲームがよりおもしろくなるルール」という意味である。「チームは100人」というルールのあたらしい野球を作っても構わないし、何かに違反するということもない。ただ、おもしろくないのだ。おもしろくないから、誰も参加してくれないし、普及していかない。

ゲームのルールをどうするかによって、ゲームの展開はまったく変わってくる。ゲームをやっている人にとっておもしろいかどうか、ゲームを見ている人にとっておもしろいかどうかは、ゲームのルールをどう設定するかによって、大きく変わってくる。


関連:
ウィキペディア - 野球
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8E%E7%90%83

関連エントリ:
ルールと法則の違い
http://mojix.org/2008/05/26/rule_and_law