2012.10.05
日本維新の会、みんなの党と選挙協力模索へ この柔軟性が橋下氏の強みだ
朝日新聞デジタル - 維新・橋下代表「みんなの党と固まりに」 選挙協力模索(2012年10月4日22時31分)
http://www.asahi.com/politics/update/1004/OSK201210040147.html

<日本維新の会の橋下徹代表は4日、報道陣に「次の衆院選では自民、民主、第三極という構図を国民に提示するのが我々の責務。みんなの党とは一つの固まりになるのが本来のあり方だ」と述べ、次期衆院選でみんなの党との選挙協力を模索する意向を示した。
 橋下氏は「みんなの党と日本維新の会が別個独立のグループのまま次の衆院選を迎えるのは国のためにならない。(みんなと)一つの固まりに見えるようにする」と松井一郎幹事長を窓口に交渉を進めるとした>。

一時はやや険悪な感じもあった維新の会とみんなの党だが、選挙協力を模索するとのこと。これはいい動きだ。

毎日新聞 - 維新の会:みんなの党と選挙協力模索…橋下氏が方針転換(2012年10月04日 23時37分)
http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m010085000c.html

<新党「日本維新の会」代表の橋下徹大阪市長は4日、次期衆院選での連携協議が事実上頓挫していたみんなの党との関係について、「一つの固まりとして有権者に選択肢を提示するのが本来のあり方だ」と記者団に述べ、選挙協力を含め連携を模索する考えを示した。民主、自民両党に対する「第三極」の結集を図り、存在感を高める狙いがあると見られる。【津久井達】>

こちらもほぼ同じ内容だが、タイトルに「方針転換」という言葉が入っている。たしかに、これは「方針転換」だろう。そして、この「方針転換」の意味は小さくない。

橋下氏は良くも悪くも、この種の「方針転換」をたびたびやる。この柔軟性、すなわち「現実主義」こそ、橋下氏の強みだろう。

橋下氏はなぜ「方針転換」して、みんなの党と協力することにしたのか。私の考えでは、主に3つあると思う。

理由1) 自民党で安倍晋三元首相が新総裁になった
理由2) 維新の会に対する支持率・注目度が低下している
理由3) 維新の会の候補者育成が難航している

まず理由1)の、「自民党で安倍晋三元首相が新総裁になった」について。安倍氏が自民党の新総裁に選ばれたのは、おそらく橋下氏にとって誤算だったと思う。安倍氏は橋下氏にとって、「イヤな相手」なのだ。なぜならば、安倍氏の政策的スタンスは、橋下氏のものと比較的近いからである。日本維新の会をまだ模索していたとき、橋下氏は安倍氏に対して、党首になって欲しいと誘ったと報じられている。それくらい「近い」わけだ。

毎日新聞 - 安倍新総裁:橋下市長「考え一致せず」…自民と対決姿勢(2012年09月26日 22時13分(最終更新 10月01日 12時31分))
http://mainichi.jp/select/news/20120927k0000m010101000c.html

<新党「日本維新の会」代表に就く橋下徹大阪市長は26日、安倍晋三元首相が自民党総裁に選出されたことについて「消費税の地方税化やTPP(環太平洋パートナーシップ協定)、原発政策について考え方が完全一致ではない。選挙の時は戦わざるを得ない」と述べ、次期衆院選で全国に候補者を擁立し、自民党を含めた既成政党と対決する考えを示した。市役所で記者団に述べた。
 橋下氏は安倍氏について「非常に信頼のおける政治家だと思っている」と評価。その上で「議席結果によって、しっかり政策協議を進めたい」と述べ、衆院選後の連携には含みを残した>。

これは、安倍氏が自民党新総裁に決まったことを受けて、橋下氏のコメントを紹介した記事だ。消費税・TPP・原発政策など、考え方が違うところをわざわざ列挙している。トータルに見れば「近い」としても、いまや安倍氏は自民党の総裁なのだから、橋下氏は距離を置くしかないのだ。

日本維新の会にとって、選挙の段階で自民党と協力するということはありえないし、もちろん民主党と協力することはそれ以上にありえない。よって、民主でも自民でもない「第三極」になるしかない。しかしこの「第三極」という位置は、維新が出てくるまではみんなの党がずっと占めていた位置だし、それなりに支持も伸ばしてきている。よって、維新はみんなの党と協力したほうが、選挙ではうまくいくだろう。そもそも政策がかなり近いので、支持層も重なっている。よって、わざわざ選挙で戦えば、支持層の票が割れてしまい、民主と自民を喜ばせるだけだ。

そして、理由2)の「維新の会に対する支持率・注目度が低下している」について。この要因も大きそうだ。もし9月上旬くらいまでの維新人気が続いていたら、誰が自民党の総裁になろうが、ものの数ではないだろう。しかし、維新への支持率・注目度は落ちてきているようなのだ。

朝日新聞デジタル - 比例投票、維新4%…世論結果に橋下氏「冷静になれる」(2012年10月3日12時6分)
http://www.asahi.com/politics/update/1003/OSK201210030043.html

<朝日新聞社が1~2日に実施した全国緊急世論調査(電話)で日本維新の会が衆院比例区投票先で4%だったことについて、橋下徹代表は3日午前、報道陣に「維新への応援の実像に近づいてきた。メンバーも浮かれていたところがあるが、冷静になれるんじゃないか。候補者選定がすべてだ」と述べ、今後は候補者選定に力を入れ、支持の拡大に努める考えを示した。
 橋下氏は「今までは既存政党に対する不満から維新の会しかないかという感じの応援だったが、今後は積極的な応援を受ける政治グループにならなければ」と話した。幹事長の松井一郎大阪府知事は「大阪でしか活動してきていないので、全国の皆さんにどういう集団か理解されていないのは仕方がない。愚直に政策を訴えるしかない」とした>。

毎日新聞 - 橋下・大阪市長:「浮かれるな」 維新支持率低下、国会議員団にクギ(2012年10月03日)
http://mainichi.jp/area/news/20121003ddf041010008000c.html

<新党「日本維新の会」代表の橋下徹大阪市長は3日、報道各社の世論調査で維新の支持率が低下したことについて、「だんだん維新の実像に近づいている。メンバーも浮かれていたところがあった」と述べ、維新の国会議員団にパフォーマンスに走らないよう注意したことを明らかにした。
 毎日新聞が9月29、30日に実施した世論調査では、維新の支持率は8%で、前回調査(9月15、16日)から3ポイント下がった>。

この調査はいずれも、安倍氏が自民党新総裁に決まったあとにおこなわれているので、まずはそれがあるだろう。いまの政権に失望している人(民主党を支持しない人)のうち一定数が、安倍氏の総裁決定を受けて、自民党支持に流れたと考えられる。

また、自民党の総裁選とは無関係に、「維新ブーム」のようなものが一段落した、というのもあるだろう。「維新八策」のラディカルな内容が各方面で不評を買ったり(ちなみに私は資産課税を除いてほぼ支持)、日本維新の会の発足前におこなわれた、国会議員との公開討論会があまり盛り上がらなかった(?)のもあるかもしれない。

橋下氏は上の記事で、「メンバーも浮かれていたところがあった」と語っているが、橋下氏自身ももちろん、浮かれていなかったはずがない。だからこそ、次の衆院選では200人以上当選させるといった鼻息の荒い「急進主義」を示していたのだろう。もちろん、橋下氏は「維新ブーム」のバブルも自覚していて、だからこそ「だんだん維新の実像に近づいている」という言葉が出てくるのだろう。しかし、「維新ブーム」が熱いうちに選挙をやりたかった、というのが橋下氏の本音ではないだろうか。

そして3)の「維新の会の候補者育成が難航している」。これは維新の会の内部を見たわけではないので、私の勝手な予想に過ぎない。しかし、維新の会であろうとなかろうと、政党を発足させた矢先に、衆院選の候補者を何百人も立てるというのは、きわめて難しいだろう。もちろん、橋下氏自身は力もあり、経験も積んでおり、カリスマ性もある。さらに、維新の会には力のある有識者や首長経験者などが多数、ブレーンとして集まっているようだ。しかしそれでも、新規に集めた何百人もの人材を、(中には経験者がいるとしても)衆院選の候補者に短期で育成するというのは、ものすごく困難だろう。

いまの維新の会はおそらく、その困難さが身にしみているところではないだろうか。だからこそ、「第三極」の先輩であり、人材も選挙ノウハウもそれなりに持ち、全国的な支持もひろげつつある、みんなの党と組みたいと思ったのではないだろうか。選挙でみんなの党と組めば、擁立する候補者は力のある人に絞ったり、選挙態勢でもみんなの党と協力したりできる。

理由はともかく、この橋下氏の「方針転換」は大賛成だ。重要なのは、政党の勝ち負けではなく、「政策」の勝ち負けである。維新の会とみんなの党が協力して、ぜひ正しい政策を勝たせてもらいたい。


関連エントリ:
自民党新総裁に安倍晋三元首相
http://mojix.org/2012/09/27/abe-jimin
大阪維新の会「維新八策」 経済政策・雇用政策・税制について
http://mojix.org/2012/09/08/ishin-hassaku-keizai
みんなの党と大阪維新の会の違い
http://mojix.org/2012/08/25/minna-osakaishin