2013.02.25
関西人の「さん」付け言葉は、「敬意のあらわれ」か「丸くてかわいい」の2つに分類できる
日本経済新聞 - お豆さん・天神さん…関西人はなぜ「さん」付けが好き?(2013/1/19 6:30)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASIH0900A_Q3A110C1AA2P00/

<「お豆さん」「お日さん」「おはようさん」。関西では食べ物や自然、果てはあいさつまで幅広く、まるで人を呼ぶかのように「さん」を付けて丁寧に呼ぶ。温かみのあるやさしい言葉だが、どんな歴史や背景があるのだろうか>。

少し前に日経にのっていた、おもしろい記事。



<関西に限らず全国のスーパーでよく見かけるパック入り総菜「おまめさん」。神戸市に本社を置くフジッコが1976年に発売した人気商品だ。広報担当者によると、当初は関西限定の商品だったという。「広く親しまれるよう『さん』を付けました。関西弁という認識です」>

「おまめさん」って、私の子供の頃からあり、「フジッコ~のおま~めさん!」というCMもやっていた。たしかに「さん」付けの名前だ。「おまめさん」のフジッコは神戸の会社だったのか。

<関西では神仏や社寺も「さん」付け。「神さん」「仏さん」「住吉(すみよ)っさん(住吉大社)」「天神さん(各地の天満宮)」と、フレンドリーな呼び方だ>。

たしかに、関西弁では神も仏も、「さん」付けのようだ。そのほうが関西弁になじんでいる。

<関西弁を研究する北海道大学の山下好孝教授(56、日本語教育学)に聞くと「『御所ことば』を基に上方の女性らが新しい丁寧語を創ったのが始まり、との説が有力」と教えてくれた>。

<御所ことばとは宮中や公家に仕えた女官や侍女(女房)らが用いた言葉。「女房ことば」ともいう。「お○○」という丁寧語も、御所ことばが由来とされる。出入りの商人らが「宮中ではこんな言葉を使う」と話題にし、市中に広まったようだ>。

京都はたしかに、「さん」付けの言葉が多いという印象がある。もともとは「御所(ごしょ)ことば」「女房ことば」で、宮中や公家に仕えた女官や侍女(女房)らが使っていた、とのこと。それが出入りの商人を通じて、市中に広まったそうだ。

<山下教授は「最初にさん付けしたのは食物」と推察する。「女房らは、皇族や公家が『召し上がる』ものを自分らの食物と区別し、敬意を示し別の呼び方をしたはず。これが庶民にも広まったのでは」>

<食物以外に「さん」を付けるのも、敬意の表れという。例えば「お馬さん」とは言うが「お牛さん」とは言わない。馬上の武士や公家への敬意から、馬もさん付けで呼ぶようになった可能性がある。社寺をさん付けで呼ぶのもこのパターンだ>。

神や仏の「さん」付けや、「御所(ごしょ)ことば」などは、「敬意の表れ」パターンだという。いっぽう、それとは別のパターンもあるとのこと。

<一方、山下教授は「さん付けする食物は、丸くてかわいい共通点があります」とも指摘する。豆や芋は丸い。おかゆやつゆも丸い椀(わん)に入っている。「愛着のある食物を上品に言いたいという女性の気持ちの表れでは」>

「丸くてかわいい」ものに、「さん」付けがおこなわれたとのこと。これはおもしろい。

<大阪で「あめちゃん」と呼ぶアメも、丸くてかわいい。実は京都や滋賀では「あめさん」とも呼ぶ。3年前から「あめちゃん」というアメを販売している製菓会社「パイン」(大阪市天王寺区)の木下堅太・開発部次長(44)は「他人に薦める際、押しつけがましくないよう配慮して食物に『ちゃん』や『さん』を付けるようになった、との説もあります」と話す>。

大阪の「あめちゃん」も、「さん」ならぬ「ちゃん」付け言葉だ。アメもたしかに「丸くてかわいい」。



まとめると、「さん」付け言葉は、

- 「敬意のあらわれ」パターン
- 「丸くてかわいい」パターン

の2つがあるわけだ。「敬意のあらわれ」パターンは、

- 自然 : 「お日さん」「お月さん」
- あいさつ : 「おはようさん」「お疲れさん」「おめでとうさん」
- 神仏 : 「えべっさん」「住吉っさん」「観音さん」など

の3つに分類できるとのこと。なるほど~。


関連エントリ:
仙台弁ではジャージのことを「ジャス」と呼ぶ
http://mojix.org/2013/02/09/sendai-jas