2006.02.12
テクノロジー、ビジネスモデル、社風
梅田ブログ梅田本でグーグルの記述が多いことは誰でも気がつくが、梅田氏がなぜグーグルをそれほど「買う」のかは、テクノロジーではなくビジネスの視点に立たないと、なかなかわからないのではないか。

グーグルがまぎれもなく「テクノロジー・カンパニー」であるのは確かだが、グーグルが「テクノロジー」だけでは成立しないのも確かだと思う。私もグーグルにとても興味があるが、それはテクノロジーの側面だけでなく、ビジネスの側面からも見ても面白いからだ。グーグルが新しいサービスを出すたびに、私はいつもビジネスモデルの側面を考え、いつも感心させられる。

テクノロジーを持つ会社はこれまでもたくさんあったし、いまでもたくさんあるのに、グーグルみたいな会社がこれまで存在しなかったのはなぜか。梅田氏がグーグルにこだわるのも、きっとそこだと思う。

これはチープ革命とかWeb 2.0といった時代状況が見方した側面もあると思うが、私はグーグルこそ、「テクノロジー」というよりも「ビジネスモデル」の会社であり、また「社風」の会社だと思う。グーグルのテクノロジーはもちろんすごいが、それを生かした「ビジネスモデル」と「社風」こそが、これほどのポジションを可能にしていると思う。

「ビジネスモデル」「社風」の結合が強みになっているテクノロジー・カンパニーで、グーグル以外で私が最初に思いつくのは、マイクロソフトだ。私はマイクロソフトの内部は知らないので(もちろんグーグルの内部も知らないが)、外から見た印象に過ぎないが、外から見た限り、

1) テクノロジーのトレンドや、テクノロジーそのものを生み出すほどテクノロジーに強い

2) きちんと収益が出て競争力のあるビジネスモデルを確立している

3) 自由な「社風」みたいなものを感じさせて、並の組織マネジメント以上のものがある

この3つを、マイクロソフトは兼ね備えていると思う。そして、スタイルは違うが、グーグルにもそれを感じる。

どちらの会社も「強い」ので、外に対しては威圧的な「パワー」にも感じられるが、強いことは疑いがないし、その強さを生み出し、維持する仕組みが備わっていることも確かだと思う。

マイクロソフトがグーグルの「追撃」を公言しており、それがネットスケープ以来だというのも、わかる気がする。マイクロソフトは、何が自分たちを脅かすのか、よく見えているのだろう(もちろん、見えるまでにやや時間がかかったかもしれないが)。

グーグルやマイクロソフトに限らず、私は会社を見るとき、わりと「テクノロジー」「ビジネスモデル」「社風」に注目する。

ますますネットが重要になるこれからの社会では、技術系の会社でなくても、「テクノロジー」は避けられない要素だろう。自前で技術を持たない場合でも、できるだけ理解する必要がある。「わからない」ままアウトソースするとコントロールを失い、技術が役立つどころか大きな損失につながることもある。

「ビジネスモデル」はもちろん、ビジネスのキモになる。ちゃんと収益が上がらないと、ビジネスは続かない。いっぽうで、とにかく儲かればいいわけでもない。どのように収益を上げているのかが、その会社の社会的な価値や責任に直結する。

そして「社風」とは、いわば「人」だ。どんな人がいるのか、どんな価値観で動いているのか。これからの会社は、ロボットみたいな人ではダメだし、人をロボット扱いするような組織もダメだと思う。人間としてクリエイティヴである必要があり、またそのクリエイティヴな価値・才能を生かせる組織でなければならないと思う。

このように「テクノロジー」「ビジネスモデル」「社風」を考えている私にとって、グーグルやマイクロソフトは、非の打ちどころのない完璧な会社ではないかもしれないが、じゅうぶんに素晴らしい会社だ。そして日本のはてなにも、もちろん注目している。