解雇規制がなくなり、雇用流動性が増すとどうなるのか
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はてなブックマーク - IT産業を呪縛する 「変われない日本」 - Zopeジャンキー日記
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://mojix.org/2008/06/02/kawarenai_nihon
私が思っていたよりも反発が少なく、むしろ同意の声が多くて、意外なくらいだった。はてなユーザは経済学や経営の観点から見れる人が多いからだろうか。もし一般レベルでこの話をしたら、きっと7~9割くらいは反対だろうと思う。
このなかのコメントにも、もし解雇規制がなくなったら、企業は正社員をみんな解雇して、派遣やバイトにしてしまうのでは?といった趣旨のものがあった。これはおそらく、一般レベルでも多数出てくるはずの意見だと思う。
この「解雇規制がなくなったらどうなるのか」について、ここでは書いてみたい。
解雇規制をなくすと、雇用流動性が上がる。雇用流動性は「労働力が動きやすい度合い」で、会社と社員がフィットしない場合に、社員が別の会社に移りやすい度合いだ(ここでの「社員」には非正規雇用も含む。以下も同様)。
「会社と社員がフィットしない」状況には、主に以下の2つがある。
1) 会社から見て、社員の生産性や能力が十分でなく、ペイしていない。
2) 社員から見て、給料や待遇、仕事内容、職場環境などに不満がある。
1)については、現状では会社が容易に解雇できないので、「ペイしていない社員」も会社が抱えている。これによって、会社の収益や他の社員の給料が下がっている。
2)については、現状でも会社を辞めること自体には特に障害がないが、転職先が見つからない場合がある。
これが、解雇規制をなくして雇用流動性が上がると、こうなる。
1)については、「ペイしていない社員」が解雇される。
2)については、待遇が上がり、転職先も見つかりやすくなる。
解雇規制がなくなったときに解雇されるのは、「ペイしていない社員」だけだ。つまり、会社がその社員に対して払っている給料や、かかっているコストに対して、それ以上の価値を生み出していないと判断された社員だ。
逆に「ペイしている社員」、コスト以上の働きをしてくれている社員は、解雇する理由がない。それどころか、雇用流動性が増せば、2)のように魅力的な転職の機会が増えるので、他社へ流出するリスクが高まる。「ペイしている社員」に辞められては困るので、むしろ給料や待遇を上げる必要がある。
そして、契約社員・派遣・アルバイトなど非正規雇用の社員は、全員「ペイしている社員」なのだ。これらの非正規雇用の場合、解雇規制がないので、会社から見て、ペイしていないのに雇いつづける理由がない。むしろ、多くの場合は「かなりペイしている」のであり、その「あがり」で、「ペイしていない社員」が養われているわけだ。
こうしてみると、解雇規制がなくなることによって、何が変わるのかがわかる。現状は、
「ペイしていない社員」のコストを、会社と「ペイしている社員」が負担している
という状態だ。これが、解雇規制がなくなって雇用流動性が増せば、
全員が「ペイしている社員」になるよう、会社・社員のマッチングが最適化される
という方向に向かうのだ。
このプロセスでは、現状「ペイしている社員」の待遇が良くなる。また特定の会社では「ペイしていない社員」と見なされた場合でも、他社で活躍しはじめるというケースも多発するだろう。会社と社員にも、人間と同じように「相性」があるからだ。
まとめると、解雇規制がなくなって雇用流動性が増した場合、社員から見るとこうなる。
・現状で「ペイしている社員」は、いまよりも待遇が良くなり、魅力的な転職機会も増える。
・現状で「ペイしていない社員」は、他社で活躍する機会が増える。
会社から見ると、
・「ペイしている社員」は流出しやすくなるので、待遇を改善する必要がある。
・「ペイしていない社員」を抱える必要がなくなり、経営が効率化する。
となる。
この「待遇改善」には、契約社員・派遣・アルバイトの「正社員採用」が含まれる。これが多数の正規雇用を生み出す。
また「ペイしていない社員」を解雇しても、人を減らしたままで会社が回るとは思えないので、そのぶん新規採用が必要であり、よってこの部分で正規雇用はほとんど減らない。
このようにして、正規雇用の総数は大きく増えることになるのだ。
ちなみに、解雇規制がなくなって雇用流動性が増すと、ダメな会社からは人材がことごとく流出する。これによって、会社がつぶれたり、経営者がクビになるので、ダメな経営者も淘汰される。
関連エントリ:
IT産業を呪縛する 「変われない日本」
http://mojix.org/2008/06/02/kawarenai_nihon
雇用規制撤廃と減税で日本経済は再生する
http://mojix.org/2008/05/28/revive_japan_economy
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私が思っていたよりも反発が少なく、むしろ同意の声が多くて、意外なくらいだった。はてなユーザは経済学や経営の観点から見れる人が多いからだろうか。もし一般レベルでこの話をしたら、きっと7~9割くらいは反対だろうと思う。
このなかのコメントにも、もし解雇規制がなくなったら、企業は正社員をみんな解雇して、派遣やバイトにしてしまうのでは?といった趣旨のものがあった。これはおそらく、一般レベルでも多数出てくるはずの意見だと思う。
この「解雇規制がなくなったらどうなるのか」について、ここでは書いてみたい。
解雇規制をなくすと、雇用流動性が上がる。雇用流動性は「労働力が動きやすい度合い」で、会社と社員がフィットしない場合に、社員が別の会社に移りやすい度合いだ(ここでの「社員」には非正規雇用も含む。以下も同様)。
「会社と社員がフィットしない」状況には、主に以下の2つがある。
1) 会社から見て、社員の生産性や能力が十分でなく、ペイしていない。
2) 社員から見て、給料や待遇、仕事内容、職場環境などに不満がある。
1)については、現状では会社が容易に解雇できないので、「ペイしていない社員」も会社が抱えている。これによって、会社の収益や他の社員の給料が下がっている。
2)については、現状でも会社を辞めること自体には特に障害がないが、転職先が見つからない場合がある。
これが、解雇規制をなくして雇用流動性が上がると、こうなる。
1)については、「ペイしていない社員」が解雇される。
2)については、待遇が上がり、転職先も見つかりやすくなる。
解雇規制がなくなったときに解雇されるのは、「ペイしていない社員」だけだ。つまり、会社がその社員に対して払っている給料や、かかっているコストに対して、それ以上の価値を生み出していないと判断された社員だ。
逆に「ペイしている社員」、コスト以上の働きをしてくれている社員は、解雇する理由がない。それどころか、雇用流動性が増せば、2)のように魅力的な転職の機会が増えるので、他社へ流出するリスクが高まる。「ペイしている社員」に辞められては困るので、むしろ給料や待遇を上げる必要がある。
そして、契約社員・派遣・アルバイトなど非正規雇用の社員は、全員「ペイしている社員」なのだ。これらの非正規雇用の場合、解雇規制がないので、会社から見て、ペイしていないのに雇いつづける理由がない。むしろ、多くの場合は「かなりペイしている」のであり、その「あがり」で、「ペイしていない社員」が養われているわけだ。
こうしてみると、解雇規制がなくなることによって、何が変わるのかがわかる。現状は、
「ペイしていない社員」のコストを、会社と「ペイしている社員」が負担している
という状態だ。これが、解雇規制がなくなって雇用流動性が増せば、
全員が「ペイしている社員」になるよう、会社・社員のマッチングが最適化される
という方向に向かうのだ。
このプロセスでは、現状「ペイしている社員」の待遇が良くなる。また特定の会社では「ペイしていない社員」と見なされた場合でも、他社で活躍しはじめるというケースも多発するだろう。会社と社員にも、人間と同じように「相性」があるからだ。
まとめると、解雇規制がなくなって雇用流動性が増した場合、社員から見るとこうなる。
・現状で「ペイしている社員」は、いまよりも待遇が良くなり、魅力的な転職機会も増える。
・現状で「ペイしていない社員」は、他社で活躍する機会が増える。
会社から見ると、
・「ペイしている社員」は流出しやすくなるので、待遇を改善する必要がある。
・「ペイしていない社員」を抱える必要がなくなり、経営が効率化する。
となる。
この「待遇改善」には、契約社員・派遣・アルバイトの「正社員採用」が含まれる。これが多数の正規雇用を生み出す。
また「ペイしていない社員」を解雇しても、人を減らしたままで会社が回るとは思えないので、そのぶん新規採用が必要であり、よってこの部分で正規雇用はほとんど減らない。
このようにして、正規雇用の総数は大きく増えることになるのだ。
ちなみに、解雇規制がなくなって雇用流動性が増すと、ダメな会社からは人材がことごとく流出する。これによって、会社がつぶれたり、経営者がクビになるので、ダメな経営者も淘汰される。
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http://mojix.org/2008/06/02/kawarenai_nihon
雇用規制撤廃と減税で日本経済は再生する
http://mojix.org/2008/05/28/revive_japan_economy