2008.07.14
公立図書館から「無料貸本屋」「無料自習室」の機能を分離すべきだ
asahi.com - 財政難図書館、不要本に埋まる 寄贈募るが多くは廃棄
http://www.asahi.com/national/update/0712/TKY200807120078.html

公立図書館が財政難のため寄贈に頼っているが、持ち込まれるのは不要本ばかり、という記事。

それはありがちな話で驚かなかったのだが、以下の記述に驚いてしまった。

<神奈川県秦野市の市立図書館は「貸し出し予約が集中している本を寄贈いただけると助かります」と昨年12月からホームページで呼びかけている。07年度の本・CDなどの購入予算は2162万円で、03年度の3463万円から4割近く減少。ここ数年は、「どんなに人気がある本でも、同じ本の購入は10冊程度まで」と徹底されている>。

<同図書館の「予約ベスト10」(11日現在)をみると、「ホームレス中学生」(田村裕著)は、所蔵11冊に対し予約137人。「流星の絆(きずな)」(東野圭吾著)は、所蔵10冊に予約130人。借りるまでに半年かかる本もあるという。だが、こうした人気がある本の寄贈は「残念ながら少ない」と担当者はいう>。

年間予算が2000~3000万円規模の図書館で、こんなベストセラー本を10冊も買うものなのか!?

こういうベストセラー本を、半年も待ってまで図書館で借りたいという人も私は理解できないが、そもそも図書館で同じ本を10冊も買う意味がわからない。ましてや、予算も少なく、場所も限られているというのに、大半は「賞味期限」の短いベストセラー本を10冊も買うというのは、間違っていないか。

ベストセラー本ならどこの新刊書店でも売っているし、半年も待てるなら、ブックオフへ行けば100円で買えたりする。そういう本を1冊ならまだしも、リクエストが多いからといって、公立図書館が10冊も買うというのは正当化されるのか。買うときに予算を10冊分使うだけでなく、場所も10冊分取るのだから、そのぶん他の本が置けなくなる。

図書館が購入する本をリクエストの数だけで決めていけば、図書館は「無料のブックオフ」になるだろう。図書館の衆愚化だ。

私はブックオフも大好きだが、あれは古本屋のチェーン店でありビジネスだから、あれでいいのだ。しかし図書館がブックオフと同じような品揃えでいいはずがない。それでは図書館の意味がなくなってしまう。

図書館でベストセラー本を借りたい人にとって、図書館は「無料の貸本屋」みたいなものだろう。また、図書館をもっぱら自習室として使っている人にとっては、図書館は「無料の自習室」だろう。

そういう需要があることも事実だし、私はそれを否定しないが、それは図書館の本来の役割ではない。現状は「図書館」という名のもとに、実体としては「無料貸本屋」「無料自習室」として使われてしまっている部分が多そうだ。

そういう機能は図書館から分離して、名称も、建物も、予算も分けるべきだと思う。そうしないと、図書館を図書館としてまともにディレクションできず、教育や文化普及という図書館本来の役割が果たせない。

そういうふうに図書館の機能・役割を分けて考えると、「無料貸本屋」「無料自習室」の部分は純粋な教育とはいえないので、これに税金を使うのはやめて、民営化すべきだろう。民営化したとしても、広告やスポンサーを集めてうまく経営すれば、無料のままやっていける可能性があると思うし、有料でも使うという人もそれなりにいるから、じゅうぶん成立すると思う。

こうすればベストセラーを10冊ずつ買う必要もなくなり、財政難も解決して、公立図書館がその本来の役割に戻るだろう。