2008.10.30
人気のメカニズム
「人気」は自己肥大しやすい。人気が出ると、さらに人気になり、雪だるま式に人気になる。これはなぜなのか。

人気を意に介さず、品質そのものを自己判断できるのは一部の先進的な人間だけだ。普通の人間はそんなことをせず、「人気のあるもの」だけを見る。

先進的な人間は、「人気のあるもの」だけを見るという安直さに納得できないし、誰でも知っているものでは満足できない。だから先進的なのだ。

しかし、先進的でありつづけることにはコストがかかる。たくさんのものを見なければいけないし、自分の選択眼をつねに磨きつづける必要がある。

だから普通の人間はそんなことをせず、「人気のあるもの」だけを見るのだ。コモディティでもいいから、「そこそこいいもの」で満足する。そのほうが「投資対効果」が高いからだ。

では、先進的な人間は「投資対効果」が低いのかというと、そうとも限らない。自分がこだわる分野に「投資」することで、少なくとも大きな満足を得ているはずだし、ある程度需要のある分野であれば、情報や商品・サービスの提供側に回ることで、専門家として稼ぐことも可能だろう。

おそらく誰でも、自分なりの「こだわり分野」というのがあると思う。本のジャンキー、服のジャンキー、音楽マニア、旅行マニア、食通など、自分なりに集中投資(浪費)している分野がある。その自分なりの「こだわり分野」においては、世間で人気があるレベルでは到底満足できない。

しかし、そういうこだわり人間であっても、自分がこだわる分野以外では、普通の人間だ。お金と時間のコストからいって、すべてにこだわることはできない。

けっきょく、ほとんどの人間がほとんどの分野で「普通の人間」なのだから、それほど多くのコストをかけずに、自然に目に入ってくる「人気のあるもの」だけを見ることになる。だから、「人気」は自己肥大するのだ。


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