2009.02.14
大前研一「全員契約社員にする方が合理的」
大前研一氏が、富士通と東芝が副業を容認したことを評価しつつ、さらに踏み込んで、正社員をなくして「全員契約社員にする」ことを提言している。

大前研一「ニュースの視点」 - 電機大手各社巨額赤字~会社に依存しない生き方を考える
http://www.ohmae.biz/koblog/viewpoint/1239.php

<今までの日本企業は就業規則で副業禁止を定め、その代わり「一生会社が面倒を見ます」という姿勢でした。それが大きく変化したというのは注目するべきだと思います。
 ただ、私ならもっと大きな提案をしたいと考えます。例えば、中途半端に正社員のままにするのではなく、全員契約社員にする方が合理的だと思います。
 夫婦で働いているなら自分達で会社を設立してその会社から東芝や富士通に派遣されているという契約にするのです>。

<そうは言っても、正社員でなくなるのは不安だと感じる人もいるでしょうが、もはや正社員でもリストラを避けられない状況になってきています。
 電機大手のリストラ計画を見ると、非正社員で留まっていたのは昨年末で終わり、今年になってから正社員にまで配置転換や人員削減は及んできています。
 正社員にしがみつくことだけを考えていても、いざリストラにあったらスキル不足で困り果てるという結果になってしまいます>。

まったくその通りだと思う。

ここまで経済が悪くなれば、どんな大会社でも、もう会社の存続すら危うくなりかねない。いくら解雇規制があっても、現実的にはもう正社員を切らないわけにはいかないだろう。

「全員契約社員にする」というこの大前氏のアイディアは、一見きびしいようでいて、むしろ「思いやり」のある案だと思う。

このまま正社員として雇い続けて、もし会社の業績がどんどん下がっていけば、会社はどんどんリストラしていくしかなくなる。切られた正社員も、何も準備がないまま放り出される格好になってしまう。

しかしいまの段階で契約社員にしておけば、雇用は継続されるし、社員のほうも気持ちを切り替えて、別の仕事を始める余裕がまだある。仕事の掛け持ちはリスク分散になるし、また契約社員のほうが、会社側は正社員のように手厚い保護をしなくていい分、手取りはむしろ増える可能性もある。

そして何よりもいいのは、会社との関係が契約ベースになれば、個人事業主にせよ会社化するにせよ、立場としては「経営者」になることだ。経営者になれば、ビジネスパーソンとして格段にスキルアップするし、社員の立場からは見えなかった「風景」が見えるようになる。

結局のところ、市場経済とは「売買」であり「交換」なのだから、自分が提供した価値と、自分が受け取るお金は大体つりあっていなければおかしい。終身雇用や解雇規制という「保護」は、つねに競争がおこなわれている「市場」という外の世界から、正社員を隔離してしまう。市場の競争にさらされない安全な環境に長くいると、自分の提供する価値に鈍感な、競争力の低い人材になりやすい。

まだ会社が倒れていないいまのうちから、会社との関係を契約ベースにすれば、社員の側も、会社の側も、市場競争力が高まる。こういう動きが拡大して、大企業から独立する人が増えてくれば、日本も面白くなってくると思う。


関連エントリ:
終身雇用の崩壊
http://mojix.org/2009/02/05/shuushinkoyou_houkai
すべての労働者が「自分の労働力を管理する会社」を持つようにしたら、どうなるか
http://mojix.org/2009/01/24/my_labour_company
タッド・バッジ 「終身雇用は、企業を、従業員をダメにしていく」
http://mojix.org/2008/11/29/you_can_do_it