ゼロベース石橋さんの「上司不要論」、21世紀のMBA
ゼロベース石橋さんの最新エントリが面白い(いつも面白いのだが)。
ZEROBASE BLOG - ペナルティはインセンティブ/社内通貨/上司不要論/マネジメント2.0
http://zerobase.jp/blog/2009/02/post_42.html
まず、社内における正と負のインセンティブ、すばやいフィードバックの仕組みとして「社内通貨」に触れている。
<同僚から「ありがとう」のスタンプをもらって集める仕組みなども広義の「社内通貨」と考えられるし、もっと本格的な「地域通貨」の仕組みもありえる。その定義は「定量的な対価」です。コピー取りやお茶だしのお礼に渡すもの。その作業の量や質によって対価が変わるとしたら、これは「貨幣」です。交換の媒介、価値の尺度、価値の貯蔵という機能を持っている>。
この「社内通貨」は、<社内に市場メカニズムを導入すること>になり、それは<上司を不要にすること>につながる、としている。
<人をマネジメントするその人(マネジャ)自身は、経済に対してまったく付加価値を生んでいない。もし社内取引を定量化すれば、部下へのマネジメント・サービスによって「稼いでいる」ことが明らかになるかもしれない。しかし、社内取引は相殺されるので決算書には出てこない。あるいは従業員が「ボスがいたほうが仕事の成果が出るから、それは社内通貨で購入する」というなら、それは「社外からも購入できるコーチング・サービス」を買っているのであって、やはり「実態のよくわからないマネジャという存在」そのものに価値があるわけではない>。
<私は中間管理職という人間を不要にして、システム化することを模索しています。そのヒントは自由市場メカニズムにあります>。
「社内通貨」によって会社内を「市場化」し、上司・部下のあいだの「サービス」も定量化すれば、いわゆる上司や中間管理職がどのくらい価値を生み出しているのか、生み出していないのかもはっきりする。
<個人事業主に上司はいない。人は上司がいなくても働ける。これは「会社」という概念の発明以前からの真実です>。
<私は「会社」以前の労働観のルネサンスが必要だと主張しているのです。そもそも「近代企業として経営はどうあるべきか」といった議論には関心がない。「この21世紀において人々はどのように働くのが幸せなのか」を問うているのです>。
<フォーディズムという言葉があるように20世紀初頭の大量生産によって近代企業システムのひな形ができた。それを理論化・体系化してきたのがテイラーやドラッカーやバウアーです。彼らの功績は偉大ですが、私の興味はすでに20世紀型マネジメントにはありません>。
このエントリだけでなく、石橋さんのブログは「21世紀のMBA」みたいなところがある。いま本屋に並んでいるビジネス本にはまだ書かれていない、最新の経営学だ(今回のエントリでアンカテの「「経営の未来」に従業員の未来を見る」が引用されているが、アンカテにもそういうところがある)。
以前のCTOの話などもそうだったが、石橋さんは斬新で原理的な思考が徹底しており、ステレオタイプな「経営者」というイメージにはほど遠い人だ。今回のエントリにしても、「会社」や「経営」を語りながら、「個人」に価値を置いていることがわかる。「個人」の価値を最大にするために、「会社」や「経営」をどういう仕組み・システムにしたらいいかを考えているのだ。
「21世紀のMBA」は、ITやネットで激変しつつある社会や経済の状況を前提として、自らも空気のようにITやネットを使いながら、「ビジネス」を問い直すようなものになるだろう。ITやネットによって「個人」の力が強まり、大組織や大資本の優位性は薄れてきている。経営学もMBAも、空気のようにITやネットを使う最新世代によって「改訂」されていくだろうが、それは以前よりもはるかに「個人」に重点を置いた内容になることは間違いない。
かつては大部屋くらいあったコンピュータも、どんどん小型化・チープ化して、いまや1人で複数台持つのも当たり前になった。同じように、会社もどんどん小型化していって、1人で複数持つのが当たり前の時代がきっと来ると思う。会社はしょせん「システム」であって、個人が自分の価値を最大に発揮し、自由と富を最大化することが目的なのだから、会社システムという「手段」は、時代によって変わらざるを得ないし、変えていかなければならない。
関連:
ポール・グレアム「本当は上司なんて必要ない」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20080526
関連エントリ:
PICSYの鈴木健がはてなの近藤淳也を「平成の松下幸之助」と評している
http://mojix.org/2005/08/22/143215
パーソナル・カンパニー / 人間が会社に属するのではなく、会社が人間に属する時代
http://mojix.org/2005/07/17/124740
ZEROBASE BLOG - ペナルティはインセンティブ/社内通貨/上司不要論/マネジメント2.0
http://zerobase.jp/blog/2009/02/post_42.html
まず、社内における正と負のインセンティブ、すばやいフィードバックの仕組みとして「社内通貨」に触れている。
<同僚から「ありがとう」のスタンプをもらって集める仕組みなども広義の「社内通貨」と考えられるし、もっと本格的な「地域通貨」の仕組みもありえる。その定義は「定量的な対価」です。コピー取りやお茶だしのお礼に渡すもの。その作業の量や質によって対価が変わるとしたら、これは「貨幣」です。交換の媒介、価値の尺度、価値の貯蔵という機能を持っている>。
この「社内通貨」は、<社内に市場メカニズムを導入すること>になり、それは<上司を不要にすること>につながる、としている。
<人をマネジメントするその人(マネジャ)自身は、経済に対してまったく付加価値を生んでいない。もし社内取引を定量化すれば、部下へのマネジメント・サービスによって「稼いでいる」ことが明らかになるかもしれない。しかし、社内取引は相殺されるので決算書には出てこない。あるいは従業員が「ボスがいたほうが仕事の成果が出るから、それは社内通貨で購入する」というなら、それは「社外からも購入できるコーチング・サービス」を買っているのであって、やはり「実態のよくわからないマネジャという存在」そのものに価値があるわけではない>。
<私は中間管理職という人間を不要にして、システム化することを模索しています。そのヒントは自由市場メカニズムにあります>。
「社内通貨」によって会社内を「市場化」し、上司・部下のあいだの「サービス」も定量化すれば、いわゆる上司や中間管理職がどのくらい価値を生み出しているのか、生み出していないのかもはっきりする。
<個人事業主に上司はいない。人は上司がいなくても働ける。これは「会社」という概念の発明以前からの真実です>。
<私は「会社」以前の労働観のルネサンスが必要だと主張しているのです。そもそも「近代企業として経営はどうあるべきか」といった議論には関心がない。「この21世紀において人々はどのように働くのが幸せなのか」を問うているのです>。
<フォーディズムという言葉があるように20世紀初頭の大量生産によって近代企業システムのひな形ができた。それを理論化・体系化してきたのがテイラーやドラッカーやバウアーです。彼らの功績は偉大ですが、私の興味はすでに20世紀型マネジメントにはありません>。
このエントリだけでなく、石橋さんのブログは「21世紀のMBA」みたいなところがある。いま本屋に並んでいるビジネス本にはまだ書かれていない、最新の経営学だ(今回のエントリでアンカテの「「経営の未来」に従業員の未来を見る」が引用されているが、アンカテにもそういうところがある)。
以前のCTOの話などもそうだったが、石橋さんは斬新で原理的な思考が徹底しており、ステレオタイプな「経営者」というイメージにはほど遠い人だ。今回のエントリにしても、「会社」や「経営」を語りながら、「個人」に価値を置いていることがわかる。「個人」の価値を最大にするために、「会社」や「経営」をどういう仕組み・システムにしたらいいかを考えているのだ。
「21世紀のMBA」は、ITやネットで激変しつつある社会や経済の状況を前提として、自らも空気のようにITやネットを使いながら、「ビジネス」を問い直すようなものになるだろう。ITやネットによって「個人」の力が強まり、大組織や大資本の優位性は薄れてきている。経営学もMBAも、空気のようにITやネットを使う最新世代によって「改訂」されていくだろうが、それは以前よりもはるかに「個人」に重点を置いた内容になることは間違いない。
かつては大部屋くらいあったコンピュータも、どんどん小型化・チープ化して、いまや1人で複数台持つのも当たり前になった。同じように、会社もどんどん小型化していって、1人で複数持つのが当たり前の時代がきっと来ると思う。会社はしょせん「システム」であって、個人が自分の価値を最大に発揮し、自由と富を最大化することが目的なのだから、会社システムという「手段」は、時代によって変わらざるを得ないし、変えていかなければならない。
関連:
ポール・グレアム「本当は上司なんて必要ない」
http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20080526
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http://mojix.org/2005/07/17/124740