2009.04.07
日本の強みは「文化」 経済は文化のしもべ
マイコミジャーナル - 技術的優位性がなくなったとき、日本はどうする? - gooラボ ネットの未来カンファレンス
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/04/05/goolabs/index.html

<ネットの未来について若手研究者や経営者が語る「gooラボネットの未来カンファレンス」(主催:NTTレゾナント/運営:アジャイルメディア・ネットワーク)が先月29日、日石横浜ホール(神奈川県・横浜市)で開催された。メインセッションとなる「ネットの未来放談・大喜利」。司会を務めた藤代裕之氏(NTTレゾナント)の「筋書きはまったくございません」との言葉どおり、チームラボ・猪子寿之氏、Cerevo・岩佐琢磨氏、マイクロソフト・楠正憲氏、勉強会コミュニティ GnZ・森正弥氏(楽天技術研究所代表)という濃いパネリストからはさまざまな話題が飛び出した>。

これは実に面白い内容。

ここに出ているパネリストは全員、ネットの現場感も、ビジネスの現場感もわかっていて、かつ日本の進むべき方向もわかっている、というスゴイ若手のようだ。この「3拍子が揃う」ことは日本では稀で、「ネットの現場」、「ビジネスの現場」、「日本の戦略」というのは普通、まったく違う「人種」がそれぞれ担当するものだ。

面白い発言がいろいろあるが、特に印象に残るのは、例えば以下のような発言。

<猪子 専門性は持ったほうがいい。でも、技術は客観的なものなので、いずれ先進国の優位性はまったくなくなると思っている。そのとき先進国の優位性と言えるものは「文化」のみ。文化は客観的に計れないから、優劣がつきにくい。だから、先に豊かだったほうが優位。「ただ先に豊かだった」という理由で。これからは文化のみが優位性になってくると思う。体で感じることのほうが重要になる>。

<楠 いまの話はとても重要だと思う。たとえば、NFSサーバを限界までチューニングして速く動かすとか、全然違うコードで互換性のあるプログラムを書くとか、そういう部分はインドに出せるけど、ユーザインタフェース(の開発)は発注できない。プランニングは、消費市場がある中国には出せるけど、自国内にマーケットがなくて、そういうものがある生活が想像できないインドではやれない。若いときに豊かな国にいたら、そこで体で感じられることをちゃんと感じておくことは大事>。

日本の強みが「文化」だというのは、まったく同感。技術や経済で追いつかれても、経営や政治がヘボでも、「文化」という日本の強みは揺るがない。

技術や経済、経営や政治といったものも重要だが、それらは「学習」可能なものであり、いわばコモディティだ。文化というのはもっと精妙なものであり、「学習」というよりも、理屈抜きに、時間をかけて「接する」ことによってのみ吸収できるもの、「体で感じる」しかないものなのだ。文化は「高速道路」的な学習や、グローバリゼーション的な「分散処理」が困難だからこそ、強みになる。

とはいえ、文化が強ければ、技術や経済、経営や政治がヘボでもいいかというと、そうも言っていられない。技術、経済、経営、政治といったものがしっかりしていてこそ、それらに支えられて、文化が維持できる。

ベネッセの福武總一郎は、「経済は文化のしもべである」と言った。私はこの言葉が大好きだ。文化のほうが重要であることを述べながら、それを経済で支える必要があることも含意している。


関連エントリ:
欧米コンプレックスの消滅
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http://mojix.org/2005/10/12/201118