2009.04.28
図書館の切り抜き被害 これも「解消」すべき問題
asahi.com - 「本を壊すな」図書館動く 切り抜き被害にマナー本配布
http://www.asahi.com/national/update/0425/OSK200904250065.html



<全国一の貸出冊数をほこる大阪市立中央図書館(西区)で、年間2千冊近い本や雑誌が、借り主に切り抜かれたり破られたりして廃棄されている。ファッション雑誌の人気モデルの欄や韓流スターのページがまるごと切り取られるなど、えげつない。たまりかねた図書館は25日、本を壊さないよう呼びかけるマナーブックの配布を始めた>。

<一番のターゲットは人気雑誌。ファッション誌や女性誌では、流行する髪形や着こなし、人気モデルの欄が切り抜かれる。次は料理本や健康本、旅行本などの実用本。レシピや特集が切り取られる。都市部を中心に汚破損本は増えているが、同図書館で窓口に立つ女性は「同じ俳優の写真が根こそぎなくなるなど、度の過ぎた被害はよそでは聞いたことがない」という>。

たしかに切り抜く人間が悪いのだが、そもそも、コンビニでも売っているファッション雑誌のようなものを、図書館に置く必要があるのだろうか。ベストセラー本をたくさん買う必要があるのか、というのと同じ問題だ。

雑誌が1冊500円程度として、図書館はそれを購入するところから始まって、その登録や管理、置き場所の確保、貸出・返却などの手続き、そしてこういう被害や破損リスクも含めたトータルなコストに、一体いくらかかっているのか。すべて人間が動くのだし、場所も取るから、その10倍、100倍くらいかかっていてもおかしくない。それは結局、すべて税金でまかなわれているのだ。さらに「マナーブック」まで作って、配布しているらしい。

切り抜き被害を防ぐために、個人情報管理を強めるという方向もあるかもしれないが、それはますますコストを増やすだけだし、個人情報のリスクも増やしてしまう。そこまでして、ファッション誌みたいなものを図書館に置く意味があるとは思えない。

けっきょくはこれも、公共図書館というものの「ディレクション」、その役割は何なのかという点があいまいだというところに帰着する。

図書館に限らず、国のバラマキ予算でも、生活保護でもなんでもそうだが、税金をどう使うかというポリシー、ディレクションがあいまいなので、そこにつけ込むフリーライダーが出てきて、タダ乗りされてしまう。そのコストは税金で払われるのだ。

ここでもやはり、求められているのは「解決」というよりも、「解消」する発想だ。点検を強化する、管理を強める、マナーブックを作る、といった手間やコストを「増やす」方向ではなく、そもそもファッション誌などを置くのは「やめる」ことだ。これで問題が「解消」する。


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