2010.01.04
企業が通貨を発行する時代 通貨という「プラットフォーム」
創業記 - 企業通貨の未来(2009/11/11)
http://yy.dsigr.com/?eid=805377

<私達は、普段気楽にJALのマイレージや家電量販店のポイントを貯めています。しかしこのポイントは、実は、ものすごい破壊力と可能性を秘めています。ポイントというと可愛らしく聞こえますが、実際には2005年の時点で、4500億円、しかし実は10兆円を超えて発行されていると予測されます。
 私達が貯めているポイントカードは、実は立派な企業通貨です>。

<今後、母体の信用をベースに発行されたマイレージやポイントが、流通され、他のポイントとくっつく(ペックされる)ことによって、独自の企業通貨経済圏が出来てくると思います。
 企業は、国に縛られず、世界中に展開することができるので、そのうち国が発行する通貨よりも強い企業通貨が現われるかもしれません。
 実際、アフリカの小国が発行する通貨よりも、トヨタとウォルマートが共同して発行するお金の方が信用力が強いかもしれません。
 企業通貨は大きな可能性を秘めているといえそうです>。

まったく同感だし、ポイント事業を推進している企業側も、当然こう考えているはずだ。

そしてこの話は、情報技術における「プラットフォーム」争奪戦と切っても切れない関係にあると思う。私は以前、「最有力のIT・ネット企業6社「GAMANA(ガマナ)」がしのぎを削るプラットフォーム争奪戦」というエントリで次のように書いた。

<「GAMANA」のプラットフォーム争奪戦は、OSやブラウザ、ライブラリ、技術標準といったテクノロジーを超えて、決済システムやポイントなどの金融、「通貨」まで巻き込んだ競争になる。そこではコンテンツや「カネ」が飛び交うことになるので、これをどう扱うかは、国の命運すら左右してもおかしくない。その激しい進化がもたらす恩恵を受けるには、知的財産権や金融などの規制をどんどん見直すような勇気とスピード感が必要だろう>。

ここで挙げた「GAMANA」(Google、Apple、Microsoft、Amazon、Nokia、Adobe)のような会社が情報技術のプラットフォームをつかもうとするのは、さまざまなコンテンツやアプリケーションがその上に立つ「基盤」をつかんでしまえば、「胴元」として手数料をピンハネしたり、その「基盤」をどうするかという意思決定を通じて、自社が有利な状況に持っていきやすいからだ。

そしてこうしたプラットフォームの上では、すべてが無料ではビジネスにならないので、必ず「決済」プロセス、つまりカネのやりとりが発生する。よって、情報技術のプラットフォームをとりにいく「GAMANA」のような会社は、必ず「決済」について考えている。つまり、情報技術のみならず、「金融」や「通貨」のレベルでも一定の「権力」を狙っているはずだ。

すでに、ツバルのような小国が自国のドメインをまるごと売る、といった例があるが、今後は例えば、そうした小国がGoogleのような企業と組んで、国の通貨や金融システムをまるごとその企業にアウトソースする、といったこともありうるかもしれない。そうなれば、小国であることがハンディやデメリットではなく、国の仕組みをスピーディにどんどん変えていけることがむしろ強み・メリットになるかもしれない。

ネットはすでに国境を越えているが、通貨や法はまだ国に縛られている。情報技術のプラットフォーム上で有償のコンテンツやサービスを増やし、決済をやろうと思えば、必ず通貨や法が問題になってくる。つまり情報技術のプラットフォームと、金融や通貨は「地続き」なのだ。もし仮に、Googleのような企業が小国と組んで、その通貨や法を動かせるようになれば、その小国のイノベーションはきわめて速くなり、情報技術を中心とした人や企業を世界じゅうから引きつけるかもしれない。今後の世界では、情報技術の比重・重要性がますます高まっていくことは間違いないから、そうなれば、世界の中でのその小国の存在感も高まっていくことは間違いない。

「GAMANA」のような企業が情報技術のプラットフォーム争奪戦をおこなっているのとまったく同じように、今後は世界じゅうの国どうしが、通貨や法という「プラットフォーム」をより魅力的なものにして、人や企業を呼び込むという競争が起きるだろう。シンガポールや香港などはすでに、完全にこの視点で動いているように思う。日本はその反対に、人や企業をわざと逃がそうとしているようにしか見えない。

ポイントというものを「企業通貨」として考える場合、その通貨の価値や競争力は、それが結びつく情報技術のプラットフォームや、それが存在する国の仕組み・あり方と連動してくるだろう。この視点で見ると、日本は情報技術のプラットフォームでもまったくプレゼンスがないし(「GAMANA」には日本企業が入っていない)、国の仕組み・あり方という点でも、規制と既得権益でがんじがらめになっていて変化が遅い上に、経済成長も見込めず、将来性が感じられない。これでは、いくら日本のなかでそれなりに有力な「通貨」であっても、世界には通用しない、まさに「地域通貨」に留まるだろう。


関連エントリ:
最有力のIT・ネット企業6社「GAMANA(ガマナ)」がしのぎを削るプラットフォーム争奪戦
http://mojix.org/2009/10/20/gamana_platform
田村耕太郎参議院議員「日本を30のシンガポールに分ける」
http://mojix.org/2009/10/01/30_singapore_in_japan