2010.03.30
「ノー」を言えない鳩山首相に、声の大きい亀井大臣が「つけ込む」
東洋経済オンライン - 塩田潮の政治Live! - 民意に反する「弱者の独走」(10/03/29 | 17:47)
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/a340ff7608d0d4c32433907cc64da97e/

<与党3党の間が再びぎくしゃくしてきた。国民新党の亀井金融・郵政改革担当相がゆうちょ銀行の預入限度額引き上げで「独走」している。一方、普天間問題で昨年暮れに「重大な決意も」と社民党の主張を声高に叫んだ福島消費者相が連立維持優先の柔軟路線に転じ、党内から不満が噴き出るという展開だ。連立の力学に微妙な変化が生まれている>。

<チーム内の少数派や弱体勢力が、言い分を聞かなければチームを抜けるぞと言って多数派や中核勢力を脅して要求を通そうとする手法を「弱者の恐喝」というが、社民党は昨年暮れ、このカードを振りかざした。だが、「社民党抜きで過半数」となったため、今度は「恐喝」に走れば、与党離脱、「政界の孤児」も覚悟しなければならない。他方、代わって「恐喝」カードを手にした国民新党が走り始めた。亀井氏はいまの構図は7月の参院選までと見通していて、民主党の弱体化が目立ついまが「恐喝」の好機と見たのだろう>。

<だが、議席数は民主主義の下での民意の反映である。少数意見の尊重も大切だが、民意に反する「弱者の独走」を許せば、政権の正統性が疑われる。鳩山首相が衆参の選挙の結果を踏まえ、正論と王道に基いて連立政権を牽引する形を示せば、「漂流政権」の悪評を払拭する第一歩となるのではないか>。

まったくその通りだろう。

鳩山政権の支持率低下は、よく言われる「政治とカネ」が原因ではなく、むしろ「リーダーシップの欠如」「改革の後退」「反市場的な規制強化」「財政悪化を加速するバラマキ」が原因だと私は考えている。

鳩山首相自身、反市場的な考えの持ち主というのも問題ではあるが、それ以前に、鳩山首相が自身の考えをはっきり述べず、いつも八方美人的で煮え切らない態度を取り続け、リーダーシップを欠いているのが最大の問題だ。

トバイアス・ハリスも同じようなことを書いている。

ニューズウィーク日本版 : オブザーヴィング日本政治 - 民主党を救うただ1つの方法(2010年03月29日(月)17時46分)
http://newsweekjapan.jp/harris/2010/03/post-47.php

<鳩山政権の指導力の欠如は、鳩山首相個人の失態というより、民主党内や連立与党間の亀裂が原因だという見方もあるだろう。しかし、鳩山自身が指導力を発揮できれば、民主党内や連立与党間の不協和音はおそらく問題にならないと私は思う>。

<一部の閣僚(はっきり言えば金融・郵政改革担当相の亀井静香のことだが)は政権発足以来、首相の指導力欠如につけ込んできた。もし鳩山が力を行使できれば、もっとすんなりと閣僚に言うことをきかせ、小沢幹事長の影響力をはね返せたに違いない>。

鳩山首相がはっきり「ノー」を言わないために、特に声の大きい亀井氏がそこに「つけ込んできた」のだ。「つけ込む」という表現はまさにピッタリだろう。

鳩山首相が「いい人」であろうことはいつも伝わってくるのだが、敵を作らず、八方美人的で、「ノー」を言わない「いい人」では、政治家はつとまらない。

鳩山首相の「リーダーシップ欠如」のために、郵政再国有化に代表される「改革の後退」「反市場的な規制強化」「財政悪化を加速するバラマキ」を許してしまっている、というのが「鳩山政権の構造」だろう。

まずは、亀井大臣の暴走をしっかり抑えるところを見せるだけでも、鳩山政権の支持率は5%くらい上昇するのではないか。そもそも亀井氏がいまのポジションを得ている理由が、連立による過半数維持のために過ぎず、亀井氏の反動的バラマキ政策は国民も支持していないし、民主党もおそらく支持していないだろう。

ニューズウィーク日本版 : エコノMIX異論正論 - 「郵政国有化」で空中分解する鳩山政権(2010年03月25日(木)14時25分)
http://newsweekjapan.jp/column/ikeda/2010/03/post-152.php

<おまけに亀井氏は日本郵政の非正規職員20万人のうち「10万人を正社員にする」という構想をぶち上げた。これによって人件費は単年度で4000 億円ふくらみ、昨年3月期の純利益4200億円がほぼ吹っ飛ぶ。亀井氏は郵便局の整理・統合も撤回し、「ユニバーサルサービス維持のために消費税(5000億円)を免除しろ」と要求しているが、金融部門で損失が出たら、公的支援はその程度ではすまない。「金融社会主義」のコストは、結局は納税者に回ってくるのだ>。

<この郵政国有化案に対して鳩山首相も仙谷国家戦略相も、「聞いていない」と異論を唱えた。閣僚が記者会見で発表した政策を首相が否定するのも異例だが、亀井氏は「首相の了解を得たことだ」と譲らない。彼の案は衆参わずか6名の国民新党が、唯一の支持基盤である特定郵便局長会に迎合して生き残ろうという露骨な選挙戦術である。このまま放置すると彼の暴走はますますエスカレートし、「尻尾が胴体を振り回す」どころか、政権を空中分解させるおそれが強い。首相もいい加減に亀井氏を切る決断をしたほうがいいのではないか>。

まったく同感だ。亀井氏をスッパリ切れば、筋の悪い政策の発生要因がだいぶ減り、政権や国民がそれに振り回されるコストも大きく減る。これだけで、鳩山政権の支持率は10%くらい上昇してもおかしくないと思う。亀井氏をズルズル厚遇しつづけていることが、鳩山政権最大の問題点だろう。


関連エントリ:
亀井金融相のジンバブエ路線 地獄への道は「友愛」で敷き詰められているのか
http://mojix.org/2009/09/28/kamei_zimbabwe
日本は再び「大きな政府」路線へ 鳩山「未体験ゾーン」内閣
http://mojix.org/2009/09/17/hatoyama_mitaiken
鳩山由紀夫「A New Path for Japan」
http://mojix.org/2009/08/30/a_new_path_for_japan