亀井金融相のジンバブエ路線 地獄への道は「友愛」で敷き詰められているのか
MSN産経ニュース - 支払い猶予法案は「友愛」 「総理は更迭できっこない」 亀井金融相(2009.9.27 15:53)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090927/fnc0909271554002-n1.htm
<亀井静香金融担当相は27日、テレビ朝日の番組で、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済を3年程度猶予する「モラトリアム法案」をめぐり、政府内でも異論があることについて「(反対なら)鳩山(由紀夫)総理が私を更迭すればいい。できっこない」として猶予法案は与党三党の合意事項であることを強調した。詳細は週明けから本格化する与党三党との協議や金融界、産業界からの意見聴取を経た上で決める意向だが、調整は難航必至の情勢だ。
亀井金融相は終了後、記者団に対し、「『友愛』を返済猶予でやっていくという話なので、鳩山さんも喜んでいると思う」と話した。また、中小企業に与える影響について、28日にも直嶋正行経済産業相と協議する考えを明らかにした>。
<この猶予法案をめぐっては、金融界が「経営を圧迫する」などと強く反発している。制度を導入すると、かえって信用収縮が起こり貸し渋り・貸しはがしが増えるとの見方もあるが、亀井金融相は「そんな理不尽なことを金融庁にはさせないようにする」と強調した>。
何度読んでも、絶望的な気持ちにさせられるニュースだ。
亀井金融相が1人で暴走しているのではなく、すでに「与党三党の合意事項」だったのか?ここまで自信満々に語っているところを見ると、おそらくそうなのだろう。
亀井金融相だけならまだしも、鳩山首相までこれに賛成しているのだとすれば、経済オンチにもほどがある。こんなことをすれば銀行がカネを貸さなくなることくらい、子供でもわかるのではないか。
鳩山首相は亀井金融相を更迭するどころか、亀井金融相の肩を持つ可能性すらあるわけだ。
亀井金融相の「そんな理不尽なことを金融庁にはさせないようにする」というのは、完全にジンバブエ路線であり、重度の「規制脳」だ。自分の「正義」を推し進めるためならば、どんな無茶な規制でも増やしていくわけだ。「理不尽」なのはどう見ても亀井金融相である。
鳩山内閣は「友愛」の名のもとに、独裁政治をやる気なのか。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉が、日に日に現実味を増してくる。地獄への道は「友愛」で敷き詰められているのか。
日経ネット - 亀井金融相、金利の支払い猶予「視野にある」(2009.9.27 20:50)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090927AT3S2700827092009.html
<亀井静香金融・郵政担当相は27日のテレビ朝日番組で、中小企業などを対象にした債務の返済猶予(モラトリアム)制度の法案化に異論が出ていることについて「(反対なら)鳩山由紀夫首相が私を更迭すればいいが、できっこない」と、反対論を強くけん制した。金利の支払い猶予に関しても「もちろん視野にある」と、検討を進める考えを示した。
返済猶予の法案化には藤井裕久財務相や平野博文官房長官が慎重論を唱え、民主党の枝野幸男元政調会長も27日のさいたま市内の集会で「現実的な政策ではない」と指摘するなど政府・与党内に批判が広がっている。
鳩山由紀夫首相は訪米中、記者団に「3党でよく議論して金融の閣僚委員会も必要かもしれない。結論をできるだけ早く出す」と語っている>。
鳩山首相は「3党でよく議論して」と言っているところから見ても、少なくとも亀井案をナンセンスとは思っておらず、反対ではないという姿勢が感じられる。亀井金融相の言うとおり、やはり「与党三党の合意事項」になっているのかもしれない。
こんなメチャクチャな案は絶対に許されないのはもちろん、鳩山首相がこういう考え方に疑問を感じないのだとすれば、それ自体も大問題だろう。その経済感覚の無さは国のリーダーとしてふさわしくないのはもちろん、1人の政治家としても問題のあるレベルではないだろうか。それも、スタンフォードの博士号を持っているほど頭のいい人がどうしてこうなるのか、不思議でたまらない。
藤井財務相、平野官房長官、枝野元政調会長といった人たちも、普段は私にとってあまり共感できない人ばかりだが、これについてはマトモな感覚を持っているようで、なんだかホッとさせられる。基本的に「左寄り」の鳩山内閣のなかでも、鳩山首相と亀井金融相という2人は、理想に燃える左翼学生のような「熱さ」や「正義感」という点ではおそらく飛びぬけていて、たしかに似た気質を感じる。この2人に比べれば、他の人がまだマトモに思えるから不思議だ。
鳩山内閣発足時のエントリで、私はこのように書いた。
<「脱官僚」はいいのだが、鳩山政権で最も問題なのが「経済の無策」だ。無策というよりも「反経済政策」と言ったほうがいいかもしれない。経済成長につながりそうな政策がどこにも見当たらないばかりか、労働規制の強化や、無茶な排出目標など、市場を冷やす「規制脳」的な動きばかり出てくる。亀井氏からさっそく出てきた支払猶予制度(モラトリアム)の話も、これまた市場に強制介入するもので、「政府の失敗」である>。
<「規制脳」は「正義脳」といってもよく、経済の動きを無視して、「これが正義だ」という勝手な基準を強制的にゴリ押しする態度である。民主党はこの傾向が強いようで、この点では「古い自民党」よりもさらに悪い。「古い自民党」は、政・官・財の癒着という負の側面もあったが、だからこそ、経済というものをそれなりに理解していたという面もあった。これに比べると民主党は、鳩山論文に象徴されるように、自由経済や資本主義への根本的な疑念があるように思われる。市場や企業を「性悪説」的に捉えていて、だから規制で縛る必要がある、というような態度が感じられるのだ>。
<これからよほどの路線変更でもない限り、増税+規制強化は避けられないだろう。だとすれば、日本経済がさらに弱っていくのは間違いない。しかしその失敗を通じて、国民が政治というものの重要性に今度こそ気づき、真剣に考えるようになるのなら、いちど派手に失敗して「無知のコスト」を払う価値はあると思う。ただし、日本が潰れてしまわないことが前提だが>。
これを書いたのは10日ほど前だが、まさか支払猶予制度(モラトリアム)の話が潰れずに、ここまで大きくなってくるとは夢にも思わなかった。
日本はいちど派手に失敗して、国民が「無知のコスト」を払う価値はある、と思っているのはその通りなのだが、「日本が潰れてしまわない」ことが前提なのだ。モラトリアムは、ほんとうに日本経済を壊滅させてもおかしくない。
亀井金融相の発言の影響で、すでに銀行株が下がりはじめているが、モラトリアムが現実化しそうな流れが強まれば、外資も本気で逃げ出して、さらに大きく下がっていくだろう。銀行でもおそらく、すでに貸し渋り・貸しはがしの態勢に入りはじめていて、中小企業の資金調達はすでに難しくなりはじめているのではないか。銀行の立場で考えれば、いつ返ってくるかもわからないカネを貸せるはずがない。
「まさか本当にやらないだろう」と思っている人が大半だと思うが、予断を許さない状況になってきた。
関連:
MSN産経ニュース - 支払い猶予法案は「友愛」 「総理は更迭できっこない」 亀井金融相(2009.9.27 15:53)
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日経ネット - 中小の返済猶予「反対なら私を更迭すればいい」 亀井金融相 (2009.9.27 13:19)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090927AT3S2700227092009.html
日経ネット - 亀井金融相、金利の支払い猶予「視野にある」(2009.9.27 20:50)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090927AT3S2700827092009.html
asahi.com - 「私の発言で株価下がるような銀行は…」勢いづく亀井節(2009.9.27 22:17)
http://www.asahi.com/politics/update/0927/TKY200909270162.html
関連エントリ:
「困っている人を救いたい」という気持ちは正しいが、それを「他人に強制する」のは間違いだ
http://mojix.org/2009/09/26/kyuusai_kyousei
日本は再び「大きな政府」路線へ 鳩山「未体験ゾーン」内閣
http://mojix.org/2009/09/17/hatoyama_mitaiken
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090927/fnc0909271554002-n1.htm
<亀井静香金融担当相は27日、テレビ朝日の番組で、中小企業向け融資や個人向け住宅ローンの返済を3年程度猶予する「モラトリアム法案」をめぐり、政府内でも異論があることについて「(反対なら)鳩山(由紀夫)総理が私を更迭すればいい。できっこない」として猶予法案は与党三党の合意事項であることを強調した。詳細は週明けから本格化する与党三党との協議や金融界、産業界からの意見聴取を経た上で決める意向だが、調整は難航必至の情勢だ。
亀井金融相は終了後、記者団に対し、「『友愛』を返済猶予でやっていくという話なので、鳩山さんも喜んでいると思う」と話した。また、中小企業に与える影響について、28日にも直嶋正行経済産業相と協議する考えを明らかにした>。
<この猶予法案をめぐっては、金融界が「経営を圧迫する」などと強く反発している。制度を導入すると、かえって信用収縮が起こり貸し渋り・貸しはがしが増えるとの見方もあるが、亀井金融相は「そんな理不尽なことを金融庁にはさせないようにする」と強調した>。
何度読んでも、絶望的な気持ちにさせられるニュースだ。
亀井金融相が1人で暴走しているのではなく、すでに「与党三党の合意事項」だったのか?ここまで自信満々に語っているところを見ると、おそらくそうなのだろう。
亀井金融相だけならまだしも、鳩山首相までこれに賛成しているのだとすれば、経済オンチにもほどがある。こんなことをすれば銀行がカネを貸さなくなることくらい、子供でもわかるのではないか。
鳩山首相は亀井金融相を更迭するどころか、亀井金融相の肩を持つ可能性すらあるわけだ。
亀井金融相の「そんな理不尽なことを金融庁にはさせないようにする」というのは、完全にジンバブエ路線であり、重度の「規制脳」だ。自分の「正義」を推し進めるためならば、どんな無茶な規制でも増やしていくわけだ。「理不尽」なのはどう見ても亀井金融相である。
鳩山内閣は「友愛」の名のもとに、独裁政治をやる気なのか。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という言葉が、日に日に現実味を増してくる。地獄への道は「友愛」で敷き詰められているのか。
日経ネット - 亀井金融相、金利の支払い猶予「視野にある」(2009.9.27 20:50)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090927AT3S2700827092009.html
<亀井静香金融・郵政担当相は27日のテレビ朝日番組で、中小企業などを対象にした債務の返済猶予(モラトリアム)制度の法案化に異論が出ていることについて「(反対なら)鳩山由紀夫首相が私を更迭すればいいが、できっこない」と、反対論を強くけん制した。金利の支払い猶予に関しても「もちろん視野にある」と、検討を進める考えを示した。
返済猶予の法案化には藤井裕久財務相や平野博文官房長官が慎重論を唱え、民主党の枝野幸男元政調会長も27日のさいたま市内の集会で「現実的な政策ではない」と指摘するなど政府・与党内に批判が広がっている。
鳩山由紀夫首相は訪米中、記者団に「3党でよく議論して金融の閣僚委員会も必要かもしれない。結論をできるだけ早く出す」と語っている>。
鳩山首相は「3党でよく議論して」と言っているところから見ても、少なくとも亀井案をナンセンスとは思っておらず、反対ではないという姿勢が感じられる。亀井金融相の言うとおり、やはり「与党三党の合意事項」になっているのかもしれない。
こんなメチャクチャな案は絶対に許されないのはもちろん、鳩山首相がこういう考え方に疑問を感じないのだとすれば、それ自体も大問題だろう。その経済感覚の無さは国のリーダーとしてふさわしくないのはもちろん、1人の政治家としても問題のあるレベルではないだろうか。それも、スタンフォードの博士号を持っているほど頭のいい人がどうしてこうなるのか、不思議でたまらない。
藤井財務相、平野官房長官、枝野元政調会長といった人たちも、普段は私にとってあまり共感できない人ばかりだが、これについてはマトモな感覚を持っているようで、なんだかホッとさせられる。基本的に「左寄り」の鳩山内閣のなかでも、鳩山首相と亀井金融相という2人は、理想に燃える左翼学生のような「熱さ」や「正義感」という点ではおそらく飛びぬけていて、たしかに似た気質を感じる。この2人に比べれば、他の人がまだマトモに思えるから不思議だ。
鳩山内閣発足時のエントリで、私はこのように書いた。
<「脱官僚」はいいのだが、鳩山政権で最も問題なのが「経済の無策」だ。無策というよりも「反経済政策」と言ったほうがいいかもしれない。経済成長につながりそうな政策がどこにも見当たらないばかりか、労働規制の強化や、無茶な排出目標など、市場を冷やす「規制脳」的な動きばかり出てくる。亀井氏からさっそく出てきた支払猶予制度(モラトリアム)の話も、これまた市場に強制介入するもので、「政府の失敗」である>。
<「規制脳」は「正義脳」といってもよく、経済の動きを無視して、「これが正義だ」という勝手な基準を強制的にゴリ押しする態度である。民主党はこの傾向が強いようで、この点では「古い自民党」よりもさらに悪い。「古い自民党」は、政・官・財の癒着という負の側面もあったが、だからこそ、経済というものをそれなりに理解していたという面もあった。これに比べると民主党は、鳩山論文に象徴されるように、自由経済や資本主義への根本的な疑念があるように思われる。市場や企業を「性悪説」的に捉えていて、だから規制で縛る必要がある、というような態度が感じられるのだ>。
<これからよほどの路線変更でもない限り、増税+規制強化は避けられないだろう。だとすれば、日本経済がさらに弱っていくのは間違いない。しかしその失敗を通じて、国民が政治というものの重要性に今度こそ気づき、真剣に考えるようになるのなら、いちど派手に失敗して「無知のコスト」を払う価値はあると思う。ただし、日本が潰れてしまわないことが前提だが>。
これを書いたのは10日ほど前だが、まさか支払猶予制度(モラトリアム)の話が潰れずに、ここまで大きくなってくるとは夢にも思わなかった。
日本はいちど派手に失敗して、国民が「無知のコスト」を払う価値はある、と思っているのはその通りなのだが、「日本が潰れてしまわない」ことが前提なのだ。モラトリアムは、ほんとうに日本経済を壊滅させてもおかしくない。
亀井金融相の発言の影響で、すでに銀行株が下がりはじめているが、モラトリアムが現実化しそうな流れが強まれば、外資も本気で逃げ出して、さらに大きく下がっていくだろう。銀行でもおそらく、すでに貸し渋り・貸しはがしの態勢に入りはじめていて、中小企業の資金調達はすでに難しくなりはじめているのではないか。銀行の立場で考えれば、いつ返ってくるかもわからないカネを貸せるはずがない。
「まさか本当にやらないだろう」と思っている人が大半だと思うが、予断を許さない状況になってきた。
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090927AT3S2700827092009.html
asahi.com - 「私の発言で株価下がるような銀行は…」勢いづく亀井節(2009.9.27 22:17)
http://www.asahi.com/politics/update/0927/TKY200909270162.html
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「困っている人を救いたい」という気持ちは正しいが、それを「他人に強制する」のは間違いだ
http://mojix.org/2009/09/26/kyuusai_kyousei
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http://mojix.org/2009/09/17/hatoyama_mitaiken