2010.04.14
「増税でデフレ解決」だって?冗談じゃない、デフレの原因は政府の「悪政」だ
NHKニュース - 菅大臣“増税 使途で景気よくなる”(4月12日 17時28分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100412/t10013786771000.html

<菅副総理兼財務大臣は日本外国特派員協会で講演し、「増税しても使い道をまちがえなければ景気はよくなる」と述べ、消費税などを念頭に、増税が経済にプラスに働く側面を訴えていく考えを示しました>。

<この中で菅大臣は「物価の下落が続くデフレは、日本経済にとって、たいへんなマイナスであり、政府・日銀は決して今のままデフレを容認するつもりはない」と述べました。そのうえで菅大臣は「デフレの解決にはお金の循環が必要で、国民に税による分担のお願いも必要だ。増税しても使い道をまちがえなければ景気はよくなるということを検証させており、必要な増税をすれば日本経済がよくなるという認識を国民に共有してもらいたい」と述べ、消費税などを念頭に、増税が経済にプラスに働く側面を訴えていく考えを示しました>。

増税して、政府がそれを財政出動し、その使い道をまちがえなければ、デフレを解決できるとのこと。そんなわけない。

そもそもデフレがなぜおこるかというと、日本経済の先行きが暗いので、国民も企業もカネを使わず、カネを貯め込む傾向が強まるからだ。なぜ経済の先行きが暗いかというと、政府がどんどん間違った政策を進めていて、それをあらためる様子がまったく見えないからだ。

菅大臣はいつも、デフレをまるで自然現象であるかのように他人事(ひとごと)として語り、それを日銀のせいにしつづけている(これは亀井大臣も同じ)。そして今度は、増税と財政出動で解決すると考えているらしい。これも菅氏独自の「第三の道」論からいって当然なのだろうが、もう「増税」を口にするのもためらわず、「大きな政府」にまっしぐらという感じだ。だんだん亀井大臣と見分けがつかなくなってきた。

デフレの原因は日銀のせいでも、国民や企業のせいでもなく、政府の「悪政」である。デフレは「政府が作っている」のだ。

デフレをほんとうに解決したいなら、民間経済の成長力が増す方向に、政府が「制度設計」を変えるしかない。具体的には、「規制緩和」と「減税」の2つだ。政府がこの2つをおこなえば、企業は猛然と投資を始め、人を雇いはじめるので、すぐに経済が活気づくだろう。海外流出していた企業も戻ってきて、むしろ海外からの投資・進出が増えるだろう。

こんなことは経済学者でなくても、ごく普通の「経営視点」さえあれば、すぐにわかることなのだ。しかし鳩山政権は、お坊ちゃんや社会主義者、労働組合の代表者といった人たちばかりで、「経営視点」というものをまったく欠いている。実業家としても大成功した李明博(イ・ミョンバク)が大統領をやっている韓国とは正反対だろう。鳩山政権の面々は、そのへんの中小企業の社長や、フリーランスの人なら誰でも持っているレベルの「経営感覚」すら、おそらく誰も持っていないんじゃないだろうか。「稼ぐ」という視点がどこにもなく、「稼ぐ」ことを敵視すらしているんだから、「稼ぐ」人を困らせても平気なのだ。いっぽう「使う」ほうには熱心で、「コスト意識」がない。どこかからカネが湧いてくると思っているのだろう(カネがなければ刷ればいい、と考えているのかもしれない)。

小泉・竹中時代に日本がバブル崩壊後を抜け出し、景気が底を打って経済が回復しはじめたのは、不良債権処理が進み、政府が規制改革や民営化をおこなう姿勢を見せたからだ。政府に対する「信頼」が生まれ、「日本は良くなるかもしれない」「これで景気は底を売ったかもしれない」と感じる人が増えれば、企業は投資を増やして生産や雇用を活発にしはじめ、株や不動産にも「買い」が入り始めて、景気は回復していく。

いまの鳩山政権は、郵政再国有化に象徴されるように、小泉・竹中路線を完全否定し、まったくその反対のことをしている。「規制強化」と「増税」なんて、経済をもっとも悪くする最悪コンビだ。これで経済が良くなると考えているらしいのだから、救いようがない。

JBpress - 菅副総理の「第2のケインズ革命」発言(2010.04.13)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3241

<参院選前に策定される可能性が取り沙汰される追加経済対策の規模・内容を含め、財政政策の今後を大きく左右する立場にある菅直人副総理・財務・経済財政相が12日、日本外国特派員協会で講演した。市場で材料視されることはなかったようだが、注目すべき内容が含まれていたと筆者は考えている。以下のような発言があったと報じられている>。

この上野泰也氏による記事でも、菅氏の次のような発言が採り上げられている。

「政府内ではある程度の財政出動が必要だという認識は一致しているが、財源を国債発行にするのか、税制改正で確保するのかは議論がある」

「(日本経済の成長低迷とデフレ状況の原因について)土地を中心としたバブル(の発生)と崩壊が尾を引いている」

「第2のケインズ革命を起こすことで、この状況を打開できる」

「お金を循環させることがポイント」

「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える。日本にあるお金を循環させることで、日本の回復は十分可能だ」

「場合によっては、増税をしても景気は悪くならず、逆に使い道を間違わなければ景気は良くなるということを部下に検証させている」

このような菅氏の見方に上野氏も疑問を呈しており、

<政府が半ば計画経済的に部門を選んでお金を投じて雇用を生み出そうとしても、どこまでうまくいくのだろうか。市場メカニズムに任せずに政府がトップダウンで資源配分を行おうとするわけであり、それが最終的に効率的な形で成功する保証は、どこにもない>。

といった指摘がある。この菅氏の考え方は、記事中で

<菅副総理が12日の講演で述べた、政府による需要創出論(明らかに一種の財政出動論)は、内閣府参与に2月26日付で就任した小野善康大阪大学教授の影響を強く受けたものとみられる>。

と紹介されている通り、小野善康教授の影響を強く受けたものらしい。「第2のケインズ革命を起こす」とまで言い切っているくらいで、菅氏は持論の「第三の道」を裏づけてくれるものとして、ケインズ主義に染まりつつあるようだ。

増税して、そのカネで財政出動するという考え方は、上野氏も書いているように「計画経済的」である。あなたが持っているカネを、あなたが自由に使うよりも、政府が税金として取り上げて、それを政府が使ったほうがいい、というのがこの考え方だ。こんなことをして、経済が回復するはずがあるだろうか?そんなことをする政府を、あなたは支持するだろうか?


関連エントリ:
なぜリフレ政策より構造改革が重要なのか 日本に足りないのはカネではなく成長力や投資機会である
http://mojix.org/2010/04/08/kouzou_kaikaku
ケインズvsハイエクの経済ラップ合戦 「Fear the Boom and Bust」日本語字幕つき
http://mojix.org/2010/02/10/fear_the_boom_and_bust_ja
竹中平蔵vs菅直人 「現実が変わった」ことを受け入れられない日本
http://mojix.org/2009/12/17/takenaka_kan