2010.11.19
こんにゃくゼリー窒息死訴訟、両親の訴えを棄却 「消費者真理教」に乗らないフェアな判断
asahi.com - こんにゃくゼリー窒息死訴訟、両親の訴えを棄却(2010年11月17日12時9分)
http://www.asahi.com/national/update/1117/OSK201011170022.html

<兵庫県の男児(当時1)が「こんにゃくゼリー」をのどに詰まらせて死亡したのは食品としての安全性に欠陥があったとして、両親が製造物責任(PL)法に基づいてマンナンライフ(群馬県富岡市)と同社社長らに約6240万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、神戸地裁姫路支部であった。中村隆次裁判長は「通常の安全性を備えており欠陥はない」と述べ、両親の請求を棄却した。こんにゃくゼリーの製造元の責任をめぐる判決は初めて。原告側は控訴する方針。
 判決によると、男児は1歳9カ月だった2008年7月29日、マ社のこんにゃくゼリー「蒟蒻畑(こんにゃくばたけ)」を祖母から凍らせた状態で与えられてのどに詰まらせ、約2カ月後に亡くなった>。

<判決は(1)こんにゃくゼリーの「冷やすと硬さや付着性が増す」などの特性はこんにゃく自体のもので、通常のゼリーと食感が異なることは消費者も十分認識できた(2)当時、外袋に子どもや高齢者への注意を呼びかけるイラスト入りの警告表示があった――などと指摘。幼児らに与える際には食べやすい大きさに加工するのが通常と考えられるとして、製品にPL法上の欠陥はないと結論づけた。
 判決後に会見した原告側代理人の土居由佳弁護士は「不当な判決」と述べた。マ社代理人の松坂祐輔弁護士は「冷静に結論を出してもらった。食物による窒息事故で毎年4千人以上が亡くなっており、そのうちこんにゃくゼリーは(年間)1.7人。国はこんにゃくゼリーだけでなく対策を考えてもらいたい」と話した>。

これはいい判決。

ストーブが爆発したといった事故ならともかく、こんにゃくゼリーを凍らせたものを祖母が1歳の子供に与えていたそうだから、これを企業の責任にするのはどう考えてもおかしい。1歳の子供はそれを食べることのリスクを自分で判断できないので、これは周囲の家族の責任である。

日本では「消費者は弱者でありいつも正しく、企業は強者でありワルモノである」という考え方、いわば「消費者真理教」「企業ワルモノ論」が根強い(「日本は「消費者独裁国家」である」)。消費者側にはリスクを負担させず、そのコストを企業側にツケ回すことが「正義」だ、というのが日本の通例である。これが制度を歪め、企業が取引するインセンティブを減らし、その結果として経済が失速している(その代表例が解雇規制)。

しかし、この神戸地裁の判決は、消費者がいつも正しいわけではないことを司法判断で示した。中村隆次裁判長は、「消費者真理教」「企業ワルモノ論」に乗らず、フェアな判断を下したと思う。

「消費者真理教」「企業ワルモノ論」とは、国民が政府に甘え(「クニガキチント」)、政府が国民を甘やかす(パターナリズム)、という親子的な相互依存関係のあらわれである。これを乗り越えた今回の司法判断は、クレーマーのような国民に対して「甘えるのもいいかげんにしろ!悪いのはオマエ自身だ!」と言っているような感じで、ちょっと画期的だと思う。


関連エントリ:
日本は「消費者独裁国家」である
http://mojix.org/2010/03/14/shouhisha_dokusai
こんにゃくゼリーの事故対策に税金はいくらかかっているのか
http://mojix.org/2010/01/15/konnyaku_zeikin