2011.03.22
競争によるリスク分散
今回の福島第一原発での事故は、その原因の一端が、東京電力の体制や対応にあったことは間違いないように思う。

また、その原発事故によって電力の供給が減り、計画停電せざるをえなかったというのも、首都圏の電力というインフラが、東京電力という一社にいかに依存しているかを浮き彫りにした。

こういう独占的な体制のまま、いくら「東京電力、もっとしっかりしろ」と言ってもダメだろう。それはちょうど、中央集権という政治体制を残したまま、「政府はもっとしっかりしろ」といくら言ってもダメなのと似ている。

いま必要なことは、「もっとしっかりする」ことではなく、独占的な体制をなくして、「競争」を導入することだ。「もっとしっかりする」という精神論ではなく、具体的な仕組み、「構造」を変えるという制度論が必要だろう。

原発は、必要なのか必要でないのか。原発は、安全なのか安全でないのか。それをいくら議論していても、キリがないところがある。どこまでいっても、考えが違う人どうしが、完全に納得することはないだろう。

「いっさい原発をやらない」と断言する電力ベンチャーが出てきて、東京電力に挑戦すればいい。いまなら出資もたくさん集まるだろうし、少しぐらい料金が高くても、その電力ベンチャーのほうを利用したいという人もたくさんいるはずだ。このような競争が生まれれば、原発をやらない電力ベンチャーのほうを選ぶという選択肢ができる。もし、そのような電力ベンチャーが出てくることを阻む制度的要因があるのであれば、まさにいまこそが、その制度を見直す好機だろう。

また、日本を連邦制にして、自治体(「州」)のレベルでも「競争」すればいい。「原発は安全だ」という推進派の自治体と、「原発はいらない」という反対派の自治体が、両方あっていいと思う。推進派の人は推進派の自治体に住んで、リスクを引き受けつつ、原発による恩恵を受ける。反対派の人は反対派の自治体に住んで、高い料金を払って、推進派の自治体から電気を分けてもらう。万が一、推進派の自治体にある原発から放射能が漏れたりして、反対派の自治体に迷惑をかけたら、膨大な賠償金を払う。賠償金が払えない自治体は「倒産」するので、原発推進というポリシーもろとも消滅する。

こういうふうに、企業のレベルでも、自治体のレベルでも、つねに「競争」があるようにしておけば、独占による腐敗は起きにくい。また、いろいろなやり方が「競争」しているということ自体が、リスク分散になる。どのやり方が正しいのかは、事前にはわからないからだ。


関連エントリ:
まず、日本を分割せよ
http://mojix.org/2011/02/21/nihon-bunkatsu
「パナーキー(Panarchy)」 複数の政府が共存し、自分が属する政府をかんたんに変更できる
http://mojix.org/2011/02/10/panarchism
日本も連邦制にすればいいのでは
http://mojix.org/2010/08/04/renpousei