まず、日本を分割せよ
池田信夫氏が、もし憲法改正ができるなら、政党の大連立も正当化されるのではないかと述べている。
アゴラ - 無政府状態に入った政治(2011年02月18日)
http://agora-web.jp/archives/1248916.html
<今の無政府状態は、終戦直後にドタバタでつくられた憲法の欠陥が、自民党による実質的な独裁が終わってようやく顕在化してきたものといってもいいでしょう。現在の憲法は、民主主義国の制度として致命的な欠陥を抱えており、少なくとも軍の創設(それにともなう文民統制などの制度化)と衆議院の絶対的な優越を明記しないと、何も決まらないまま日本の政治経済が破綻するおそれが強い>。
<ところが自民党の石破政調会長も「改憲は不可能という前提で考えるしかない」と、最初からあきらめています。もちろん短期的には無理でしょうが、長期的に考えると、憲法を変えないで政治を正常化するのはむずかしい。大連立が正当化されるとすれば、この点でしょう>。
私の意見では、政党の大連立をしてでも取り組むべきテーマにふさわしいのは、むしろ「地方分権」ではないかと思う。
地方分権は、与党である民主党も推進派だし(言い方は「地域主権」だが)、野党でも自民党・みんなの党は明確に推進派である。与党と野党の大部分が、おおむね改革の推進派であるという珍しいテーマだと思う。もちろん、地方の首長も大部分が賛成だろう。地方の権限・財源が増えるのだから。
地方分権は、それ自体が政策というよりも、国の枠組み、「設計」を変えるという話である。日本を「州」に分割して、大部分の権限や財源を渡し、国に準じた扱いにするというものだ。
この分割をまずやってしまえば、規制をどうするか、税金をどうするか、再分配をどうするかといった政策の話は、それぞれの「州」のなかでやれるようになる。意思決定の規模が小さくなるので、政治にスピードがつくはずだ。さらに、「州」のあいだで政策競争が起きるので、自然にいい政策が出てきて、いい政策が勝ち残っていくだろう。
この地方分権に反対する勢力があるとすれば、霞が関だろう。日本が「州」に分割されて、大部分の権限や財源が「州」に行ってしまえば、中央政府のかなりの部分は「解体」されるからだ。
官僚という人種は、ひとりひとりを個別に見れば、おおむね優秀で、善良な人たちだろうと思う。しかし、個別には優秀で善良な人たちなのに、政府という「システム」に組み込まれると、国民のためよりも「省益」のために行動するようになりやすい。その理由は、官僚もただの勤め人であり、日本の雇用制度に組み込まれているからだ。自分の信念を貫き通すと、いまの立場を失いかねないので、保身のほうを優先してしまう。
日本が州に分割されれば、官僚の大部分もひとまず「分割」されて、それぞれどこかの州に行くことになるだろう。これはその官僚にとっても、けっこう面白いんじゃないかと思う。それぞれの州は、「国」として新たに出発するわけだから、その「国」を作っていくという仕事は、きっとやりがいがある。
日本を「州」に分割するというのは、明治維新以来の大変革になる。一種の「お祭り騒ぎ」が起きて、国民も盛り上がるのではないか。それも、地方分権の主役は文字通り「地方」であり、そこに暮らす住民である。自分たちのことを、自分たちで決められるようになるわけで、いわば「独立」だ。自己決定できる範囲が大きく増えて、政府からあれこれ口出しされることが減るのだから、これに反対する人は少ないと思う。
自民党から民主党に政権交代しても、日本の政治はぜんぜん変わらなかった。民主党もいずれ、次の勢力に取って代わられるだろう。しかしそのとき、日本の政治は今度こそ変わるのだろうか。私には、とてもそうは思えない。
いまの日本は中央集権体制なので、国全体の規模で意思決定しなければならない。これでは意思決定の単位が大きすぎて、意見がまとまりにくい。日本のように先進国で、かつ人口も大きな国が、連邦制になっていないことのほうが、むしろおかしいと思う。日本の政治がいつも停滞するのは、この「意思決定の単位が大きすぎる」という構造に、根本的な原因があるのではないか。
この「意思決定の単位が大きすぎる」という構造をそのままにしていては、いくら政権交代して、いくら新しいリーダーがやってきても、日本の政治はおそらくあまり変わらないように思う。
まずは日本を「州」に分割して、それぞれ自由にやらせればいいのだ。これだけで、州政府のあいだに競争が起きるし、住民も政治について関心を深めて、「お上」任せの発想から脱却するだろう。これで、日本の政治のレベルはぐっと上がるはずだ。
中野雅至氏の言う「決断ができないならば、日本を分割せよ」というのは、まったくその通りだと思う。まず最初に、日本を分割せよ。
関連:
ウィキペディア - 連邦
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E9%82%A6
関連エントリ:
前大分県知事・平松守彦 地方分権の三本柱は「分権」「分財」「分人」
http://mojix.org/2011/02/05/bunken-bunzai-bunjin
中野雅至「決断ができないならば、日本を分割せよ」
http://mojix.org/2011/01/18/nakano-nihon-bunkatsu
日本も連邦制にすればいいのでは
http://mojix.org/2010/08/04/renpousei
アゴラ - 無政府状態に入った政治(2011年02月18日)
http://agora-web.jp/archives/1248916.html
<今の無政府状態は、終戦直後にドタバタでつくられた憲法の欠陥が、自民党による実質的な独裁が終わってようやく顕在化してきたものといってもいいでしょう。現在の憲法は、民主主義国の制度として致命的な欠陥を抱えており、少なくとも軍の創設(それにともなう文民統制などの制度化)と衆議院の絶対的な優越を明記しないと、何も決まらないまま日本の政治経済が破綻するおそれが強い>。
<ところが自民党の石破政調会長も「改憲は不可能という前提で考えるしかない」と、最初からあきらめています。もちろん短期的には無理でしょうが、長期的に考えると、憲法を変えないで政治を正常化するのはむずかしい。大連立が正当化されるとすれば、この点でしょう>。
私の意見では、政党の大連立をしてでも取り組むべきテーマにふさわしいのは、むしろ「地方分権」ではないかと思う。
地方分権は、与党である民主党も推進派だし(言い方は「地域主権」だが)、野党でも自民党・みんなの党は明確に推進派である。与党と野党の大部分が、おおむね改革の推進派であるという珍しいテーマだと思う。もちろん、地方の首長も大部分が賛成だろう。地方の権限・財源が増えるのだから。
地方分権は、それ自体が政策というよりも、国の枠組み、「設計」を変えるという話である。日本を「州」に分割して、大部分の権限や財源を渡し、国に準じた扱いにするというものだ。
この分割をまずやってしまえば、規制をどうするか、税金をどうするか、再分配をどうするかといった政策の話は、それぞれの「州」のなかでやれるようになる。意思決定の規模が小さくなるので、政治にスピードがつくはずだ。さらに、「州」のあいだで政策競争が起きるので、自然にいい政策が出てきて、いい政策が勝ち残っていくだろう。
この地方分権に反対する勢力があるとすれば、霞が関だろう。日本が「州」に分割されて、大部分の権限や財源が「州」に行ってしまえば、中央政府のかなりの部分は「解体」されるからだ。
官僚という人種は、ひとりひとりを個別に見れば、おおむね優秀で、善良な人たちだろうと思う。しかし、個別には優秀で善良な人たちなのに、政府という「システム」に組み込まれると、国民のためよりも「省益」のために行動するようになりやすい。その理由は、官僚もただの勤め人であり、日本の雇用制度に組み込まれているからだ。自分の信念を貫き通すと、いまの立場を失いかねないので、保身のほうを優先してしまう。
日本が州に分割されれば、官僚の大部分もひとまず「分割」されて、それぞれどこかの州に行くことになるだろう。これはその官僚にとっても、けっこう面白いんじゃないかと思う。それぞれの州は、「国」として新たに出発するわけだから、その「国」を作っていくという仕事は、きっとやりがいがある。
日本を「州」に分割するというのは、明治維新以来の大変革になる。一種の「お祭り騒ぎ」が起きて、国民も盛り上がるのではないか。それも、地方分権の主役は文字通り「地方」であり、そこに暮らす住民である。自分たちのことを、自分たちで決められるようになるわけで、いわば「独立」だ。自己決定できる範囲が大きく増えて、政府からあれこれ口出しされることが減るのだから、これに反対する人は少ないと思う。
自民党から民主党に政権交代しても、日本の政治はぜんぜん変わらなかった。民主党もいずれ、次の勢力に取って代わられるだろう。しかしそのとき、日本の政治は今度こそ変わるのだろうか。私には、とてもそうは思えない。
いまの日本は中央集権体制なので、国全体の規模で意思決定しなければならない。これでは意思決定の単位が大きすぎて、意見がまとまりにくい。日本のように先進国で、かつ人口も大きな国が、連邦制になっていないことのほうが、むしろおかしいと思う。日本の政治がいつも停滞するのは、この「意思決定の単位が大きすぎる」という構造に、根本的な原因があるのではないか。
この「意思決定の単位が大きすぎる」という構造をそのままにしていては、いくら政権交代して、いくら新しいリーダーがやってきても、日本の政治はおそらくあまり変わらないように思う。
まずは日本を「州」に分割して、それぞれ自由にやらせればいいのだ。これだけで、州政府のあいだに競争が起きるし、住民も政治について関心を深めて、「お上」任せの発想から脱却するだろう。これで、日本の政治のレベルはぐっと上がるはずだ。
中野雅至氏の言う「決断ができないならば、日本を分割せよ」というのは、まったくその通りだと思う。まず最初に、日本を分割せよ。
関連:
ウィキペディア - 連邦
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E9%82%A6
関連エントリ:
前大分県知事・平松守彦 地方分権の三本柱は「分権」「分財」「分人」
http://mojix.org/2011/02/05/bunken-bunzai-bunjin
中野雅至「決断ができないならば、日本を分割せよ」
http://mojix.org/2011/01/18/nakano-nihon-bunkatsu
日本も連邦制にすればいいのでは
http://mojix.org/2010/08/04/renpousei