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日本経済の「実力」と「自信」をどう見るか 構造改革派と金融緩和派の違い
実力があるのに、自信がなさすぎる、という人がいる。これはもったいない。
反対に、実力がないのに、自信がありすぎる、という人もいる。これも困りものだ。
実力があり、それを根拠として自信をもつ、というのがいちばんいい。
いまの日本経済をどう見るかという議論は、日本経済の「実力」と「自信」をどう見るかという議論だと考えると、わかりやすいと思う。
構造改革派「日本は実力自体が落ちている。その障害は制度的要因なので、規制改革が必要だ」
金融緩和派「日本は実力があるのに、自信がないだけ。名目的に成長させて、雰囲気を明るくすればよい」
大体、こんなところだと思う。
このように見立てが違うので、構造改革派は「実質の成長」を重視するし、金融緩和派は「名目の成長」を重視する。
私は構造改革派なので、日本は実力自体が落ちている、と見ている。しかし、これは制度的要因によるものであって、要するに政治がダメなだけだ。
「日本人の本来の実力」は、すごく大きいと私は思っている。しかし、制度がダメなために、その実力が発揮できないのだ。
この制度的要因、つまり「構造」を変えずに、いくら金融緩和して、「名目」の雰囲気だけ明るくしても、ダメだと思う。
むしろ、金融緩和すればいいという安易さが優勢になると、「構造」を改善しようという正論がふっとんでしまい、ダメな制度が温存される。
金融緩和すると、一時的にバブルが生まれて、好調に見えるようになる。しかし、バブル下では真の成長力はつかないので、バブルがはじけたとき、その被害も大きくなる。
実力がないのに自信たっぷりの人を信じてしまうと、被害が起きる。サブプライム問題がまさにこれだった。
サブプライム問題では、そもそも住宅を買えるほど収入のない「サブプライム」な層に住宅を買わせてしまった。さらにバブルによってその不動産が値上がりして、その住宅ローンから金融商品が何重にも派生した。高いレバレッジを効かせていたのだ。
つまり、実力がない人に自信を与えてしまい、さらにそれを実力だと皆が信じて、そこに高いレバレッジまでかけていたわけだ。これでは、ほんとうは実力がないということが発覚した瞬間に、バブル的に積み上げられた信用は、すべて崩壊する。
いったん信用が崩壊しはじめると、実力に問題のない住宅ローンや債権まで疑われはじめ、しまいには銀行自体が疑われ、みんながカネを引き出そうとする「取りつけ」が起きる。これが金融危機だ。
バブルというのは「振り子」のようなもので、バブルが大きいと、それがはじけたとき、反対側にも大きく戻ってしまうのだ。
昨年、ハイエクとケインズに扮した２人が経済学ネタでラップする、「Fear the Boom and Bust」という動画が一部で話題になった。
ケインズvsハイエクの経済ラップ合戦 「Fear the Boom and Bust」日本語字幕つき
http://mojix.org/2010/02/10/fear_the_boom_and_bust_ja
YouTube - ケインズvsハイエク
http://www.youtube.com/watch?v=3EkcQJkudoY
（日本語字幕はbradexさんによるもの）
これはほんとうによくできていて、何度見てもおもしろい。ケインズとハイエクの学説が、ラップの詞に反映されているのはもちろんだが、ケインズとハイエクのふるまいそのものも、主張に合っているのだ。
ケインズは最初はノリノリで、金遣いも荒く、地味なハイエクを誘って、豪華なタクシーで街に繰り出す。しかしケインズは酒をたくさん飲みすぎて、酔いつぶれてしまう。翌朝も二日酔いに苦しみ、情けない姿で、トイレで吐いてしまう。いっぽう地味なハイエクは、ずっと安定して元気なのだ。
構造改革派と金融緩和派の考え方の違いは、おおむね、ここでのハイエクとケインズの違いにあてはまる。構造改革派と金融緩和派の違いを説明するのに、これ以上わかりやすい教材はないだろう。私が上に書いたような、バブルはむしろ有害だといった話も、ハイエクのラップとして出てくる。
より専門的な内容に興味がある人には、先日も言及した、小林慶一郎氏の「デフレ脱却をめぐる思想の対立」（2004年）がオススメだ（昨年の紹介文）。ここでもやはりハイエクが出てくる。
関連エントリ：
小林慶一郎「デフレ脱却をめぐる思想の対立」（2004年）
http://mojix.org/2010/09/23/kobayashi-deflation
ケインズvsハイエクの経済ラップ合戦 「Fear the Boom and Bust」日本語字幕つき
http://mojix.org/2010/02/10/fear_the_boom_and_bust_ja
ハイエクとケインズの経済ラップ「Fear the Boom and Bust」
http://mojix.org/2010/01/27/fear_the_boom_and_bust
反対に、実力がないのに、自信がありすぎる、という人もいる。これも困りものだ。
実力があり、それを根拠として自信をもつ、というのがいちばんいい。
いまの日本経済をどう見るかという議論は、日本経済の「実力」と「自信」をどう見るかという議論だと考えると、わかりやすいと思う。
構造改革派「日本は実力自体が落ちている。その障害は制度的要因なので、規制改革が必要だ」
金融緩和派「日本は実力があるのに、自信がないだけ。名目的に成長させて、雰囲気を明るくすればよい」
大体、こんなところだと思う。
このように見立てが違うので、構造改革派は「実質の成長」を重視するし、金融緩和派は「名目の成長」を重視する。
私は構造改革派なので、日本は実力自体が落ちている、と見ている。しかし、これは制度的要因によるものであって、要するに政治がダメなだけだ。
「日本人の本来の実力」は、すごく大きいと私は思っている。しかし、制度がダメなために、その実力が発揮できないのだ。
この制度的要因、つまり「構造」を変えずに、いくら金融緩和して、「名目」の雰囲気だけ明るくしても、ダメだと思う。
むしろ、金融緩和すればいいという安易さが優勢になると、「構造」を改善しようという正論がふっとんでしまい、ダメな制度が温存される。
金融緩和すると、一時的にバブルが生まれて、好調に見えるようになる。しかし、バブル下では真の成長力はつかないので、バブルがはじけたとき、その被害も大きくなる。
実力がないのに自信たっぷりの人を信じてしまうと、被害が起きる。サブプライム問題がまさにこれだった。
サブプライム問題では、そもそも住宅を買えるほど収入のない「サブプライム」な層に住宅を買わせてしまった。さらにバブルによってその不動産が値上がりして、その住宅ローンから金融商品が何重にも派生した。高いレバレッジを効かせていたのだ。
つまり、実力がない人に自信を与えてしまい、さらにそれを実力だと皆が信じて、そこに高いレバレッジまでかけていたわけだ。これでは、ほんとうは実力がないということが発覚した瞬間に、バブル的に積み上げられた信用は、すべて崩壊する。
いったん信用が崩壊しはじめると、実力に問題のない住宅ローンや債権まで疑われはじめ、しまいには銀行自体が疑われ、みんながカネを引き出そうとする「取りつけ」が起きる。これが金融危機だ。
バブルというのは「振り子」のようなもので、バブルが大きいと、それがはじけたとき、反対側にも大きく戻ってしまうのだ。
昨年、ハイエクとケインズに扮した２人が経済学ネタでラップする、「Fear the Boom and Bust」という動画が一部で話題になった。
ケインズvsハイエクの経済ラップ合戦 「Fear the Boom and Bust」日本語字幕つき
http://mojix.org/2010/02/10/fear_the_boom_and_bust_ja
YouTube - ケインズvsハイエク
http://www.youtube.com/watch?v=3EkcQJkudoY
（日本語字幕はbradexさんによるもの）
これはほんとうによくできていて、何度見てもおもしろい。ケインズとハイエクの学説が、ラップの詞に反映されているのはもちろんだが、ケインズとハイエクのふるまいそのものも、主張に合っているのだ。
ケインズは最初はノリノリで、金遣いも荒く、地味なハイエクを誘って、豪華なタクシーで街に繰り出す。しかしケインズは酒をたくさん飲みすぎて、酔いつぶれてしまう。翌朝も二日酔いに苦しみ、情けない姿で、トイレで吐いてしまう。いっぽう地味なハイエクは、ずっと安定して元気なのだ。
構造改革派と金融緩和派の考え方の違いは、おおむね、ここでのハイエクとケインズの違いにあてはまる。構造改革派と金融緩和派の違いを説明するのに、これ以上わかりやすい教材はないだろう。私が上に書いたような、バブルはむしろ有害だといった話も、ハイエクのラップとして出てくる。
より専門的な内容に興味がある人には、先日も言及した、小林慶一郎氏の「デフレ脱却をめぐる思想の対立」（2004年）がオススメだ（昨年の紹介文）。ここでもやはりハイエクが出てくる。
関連エントリ：
小林慶一郎「デフレ脱却をめぐる思想の対立」（2004年）
http://mojix.org/2010/09/23/kobayashi-deflation
ケインズvsハイエクの経済ラップ合戦 「Fear the Boom and Bust」日本語字幕つき
http://mojix.org/2010/02/10/fear_the_boom_and_bust_ja
ハイエクとケインズの経済ラップ「Fear the Boom and Bust」
http://mojix.org/2010/01/27/fear_the_boom_and_bust