2011.06.10
「ご協力をお願いします」の氾濫
私がよく通る道にあるポストに、落書きするなという旨の注意書きがあり、最後に「ご協力をお願いします」と書かれている。

電車ではよく、車内は禁煙であるというアナウンスが流れて、最後に「ご協力をお願いします」と言う。

日本には、この種の「ご協力をお願いします」がいたるところにあり、氾濫している。このような「ご協力をお願いします」は、日本語の使い方としても間違っているし、「協力」と「義務」の違いをあいまいにして、社会や公共に対する感覚をマヒさせてしまう。

ポストに落書きしたり、電車内でタバコを吸うのは、禁止されていることだし、禁止されるべき行為だ。禁止されていることをしないのは当然の「義務」であって、「義務」を守ることは「協力」ではない。

「協力」というのは、してもしなくてもいいが、やるとプラスになることをやることだ。逆に言うと、「協力」はしなくても何も問題ないし、とがめられるべきものではない。それが「義務」との違いだ。

何もしない状態が「ゼロ」だとすると、「協力」というのは「プラス」である。「プラス」はもちろん望ましいが、「ゼロ」でも別に問題はない。「プラス」にあたるのは、たとえば寄付とかボランティア、路上のゴミを拾う、といったものだろう。こうした行為は「プラス」だが、それをしなくても問題はない(関連:「善意を強制してはいけない」)。

逆に、ポストに落書きしたり、電車内でタバコを吸う、といった反社会的行為は「マイナス」である。何もしない「ゼロ」が当然で、それに対して「マイナス」の行為をおこなうものは、罰を受ける。

日本に氾濫している「ご協力をお願いします」には、こうした「マイナス」の行為をしないことに対して、「ご協力をお願いします」と述べているものが多い。これはおかしいのであって、「マイナス」の行為に対しては、「もしそれをやったら、罰金いくら」とか、「○年間、牢屋にブチこまれます」といった警告のほうが正しい。

「ポストに落書きしないよう、ご協力をお願いします」とか、「電車内でタバコを吸わないよう、ご協力をお願いします」というのは、「路上で人を殴らないよう、ご協力をお願いします」とか、「辺りの建物に放火しないよう、ご協力をお願いします」というのと、基本的には同じである。


関連エントリ:
善意を強制してはいけない
http://mojix.org/2011/05/23/zenni-kyousei
市の職員は災害時に有給を取ってはいけないのか? モラルとルールは違う
http://mojix.org/2011/05/12/shokuin-yuukyuu