スカイマークは「消費者独裁国家」日本に風穴をあける
現代ビジネス - スカイマーク社長 西久保愼一 批判されてもあえて言い続ける「顧客の苦情を受け付けない経営哲学」(2012年07月03日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32898
<〈客室乗務員は収納の援助をいたしません〉〈客室乗務員の私語等について苦情を頂くことがありますが、(中略)お客様に直接関わりのない苦情についてはお受けいたしかねます〉〈ご不満のあるお客様は『スカイマークお客様相談センター』あるいは『消費生活センター』等に連絡されますようお願いいたします〉>
<低価格運賃を武器に業績を伸ばしている航空会社「スカイマーク」が、今年5月から機内の座席ポケットに備え付けた「サービスコンセプト」は大きな波紋を呼んだ>。
<スカイマークの指針に対して、「傲慢だ」「客を客とも思わぬ対応」という批判が巻き起こる一方、一部には「些細なことにもケチをつけるクレーマー対策としてもっともな主張だ」と評する声もある。消費者庁は「苦情を公的機関に振り分ける姿勢は容認できない」として同社へ文書の撤回を指示した>。
<客を無視する傲慢か、それとも勇気ある正論か---。この文書を作った真意について同社の西久保愼一社長(56歳)に聞いた>。
「苦情を受けつけない」と明言し、物議を醸しているスカイマーク。スカイマークの西久保社長が、そのポリシーをわかりやすく語ったインタビュー記事。
<言うまでもないことですが、安全運航が大前提。それはどの航空会社も同じです。しかし、われわれは、JALやANAといった大手と運賃競争をするために世に出てきたベンチャーです。最大のサービスは運賃の安さ。客室乗務員が愛想笑いを浮かべながら提供する表面的なサービスより、運賃で勝負しようというスタンスで経営をしてきました>。
<クレームは、言った本人はもちろん、機内でそれを聞いている他のお客さんも不快になる。われわれにとっては、出発前の機内でクドクドと苦情を述べられると運航に影響することにもなる。だからそういうときには当然、かなり強い口調で「出て行ってください」と言います>。
終始、このように明快な説明が並んでいる。このあたりまえのことが、「消費者独裁国家」である日本では、なかなかむずかしい。スカイマークのやり方が物議を醸すのは、この「消費者独裁」に対する「反逆」だからだ。
しかし、この「消費者独裁」こそ、日本を閉塞させている根本原因なのである。スカイマークのような企業は、この閉塞を打ち破り、日本に風穴をあけてくれる存在だろう。
<飛行機を降りた後でも2時間も3時間も苦情を言われる方もいます。その間、最低一人の係員がそのお客さんに専有されてしまう。機体の効率的な運用を追求しているわれわれは、次のフライトまでの空港での折り返し時間が他社に比べて15分ほど短いんです。時間的にギリギリですから、ヘビークレームに対応する余裕がないんですね>。
一部のクレーマーのおかげで、コストが上がり、サービスの値段が上がってしまう。「消費者独裁」のコストは、他の客も負担させられているのだ。スカイマークは、この「消費者独裁」に応じないことで、コストを下げ、サービスの価格を下げられる。これによって、クレーマーではない大部分の客はトクをする。
「消費者独裁」をやめることでトクをするのは、客だけではない。
<「サービスコンセプト」を出すことを一番歓迎したのは客室乗務員です。会社から「そこまでサービスする必要はない」と告げていても、機内でお客さんに他社並みのサービスを求められる場面は多い。「その板挟みにあってちょっと窮屈でした。会社からハッキリした姿勢を示してもらって仕事がしやすくなりました」とほぼすべての客室乗務員が言っています>。
「消費者独裁」をやめることで最も救われるのは、従業員なのだ。従業員は、よほど強い権限を与えられていない限り、客を拒絶したり、追い出すのはむずかしい。しかし、このようにサービスポリシーが最初からはっきりしていれば、堂々と拒絶できる。
「消費者独裁国家」である日本では、消費者はつねに「弱者」かつ「正義」であり、企業はつねに「強者」かつ「悪」と見なされる。消費者を過剰に保護することによって、企業側のコスト上昇を招き、そのコストは従業員や他の消費者にまでひろがる。これが市場取引を減らしてしまい、全体として国の経済を失速させている。
「消費者独裁」では、一部の消費者がコストを押し上げて、そのコストを他の消費者や従業員、会社が負担する、という構造になっている。つまり、「一部の消費者」が全体にタダ乗りしている格好だ。
スカイマークは、この「消費者独裁」を拒絶することで、「消費者独裁」のコスト構造と弊害を、わかりやすく浮き彫りにしてくれる。「消費者独裁」がなくなって困るのは「一部の消費者」だけであり、他の人はみなトクをするのだ。
関連エントリ:
あいさつしないと入店できない駄菓子屋 こういう店はもっとあってもいい
http://mojix.org/2010/12/11/aisatsu-dagashiya
こんにゃくゼリー窒息死訴訟、両親の訴えを棄却 「消費者真理教」に乗らないフェアな判断
http://mojix.org/2010/11/19/konnyaku-soshou
日本は「消費者独裁国家」である
http://mojix.org/2010/03/14/shouhisha_dokusai
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32898
<〈客室乗務員は収納の援助をいたしません〉〈客室乗務員の私語等について苦情を頂くことがありますが、(中略)お客様に直接関わりのない苦情についてはお受けいたしかねます〉〈ご不満のあるお客様は『スカイマークお客様相談センター』あるいは『消費生活センター』等に連絡されますようお願いいたします〉>
<低価格運賃を武器に業績を伸ばしている航空会社「スカイマーク」が、今年5月から機内の座席ポケットに備え付けた「サービスコンセプト」は大きな波紋を呼んだ>。
<スカイマークの指針に対して、「傲慢だ」「客を客とも思わぬ対応」という批判が巻き起こる一方、一部には「些細なことにもケチをつけるクレーマー対策としてもっともな主張だ」と評する声もある。消費者庁は「苦情を公的機関に振り分ける姿勢は容認できない」として同社へ文書の撤回を指示した>。
<客を無視する傲慢か、それとも勇気ある正論か---。この文書を作った真意について同社の西久保愼一社長(56歳)に聞いた>。
「苦情を受けつけない」と明言し、物議を醸しているスカイマーク。スカイマークの西久保社長が、そのポリシーをわかりやすく語ったインタビュー記事。
<言うまでもないことですが、安全運航が大前提。それはどの航空会社も同じです。しかし、われわれは、JALやANAといった大手と運賃競争をするために世に出てきたベンチャーです。最大のサービスは運賃の安さ。客室乗務員が愛想笑いを浮かべながら提供する表面的なサービスより、運賃で勝負しようというスタンスで経営をしてきました>。
<クレームは、言った本人はもちろん、機内でそれを聞いている他のお客さんも不快になる。われわれにとっては、出発前の機内でクドクドと苦情を述べられると運航に影響することにもなる。だからそういうときには当然、かなり強い口調で「出て行ってください」と言います>。
終始、このように明快な説明が並んでいる。このあたりまえのことが、「消費者独裁国家」である日本では、なかなかむずかしい。スカイマークのやり方が物議を醸すのは、この「消費者独裁」に対する「反逆」だからだ。
しかし、この「消費者独裁」こそ、日本を閉塞させている根本原因なのである。スカイマークのような企業は、この閉塞を打ち破り、日本に風穴をあけてくれる存在だろう。
<飛行機を降りた後でも2時間も3時間も苦情を言われる方もいます。その間、最低一人の係員がそのお客さんに専有されてしまう。機体の効率的な運用を追求しているわれわれは、次のフライトまでの空港での折り返し時間が他社に比べて15分ほど短いんです。時間的にギリギリですから、ヘビークレームに対応する余裕がないんですね>。
一部のクレーマーのおかげで、コストが上がり、サービスの値段が上がってしまう。「消費者独裁」のコストは、他の客も負担させられているのだ。スカイマークは、この「消費者独裁」に応じないことで、コストを下げ、サービスの価格を下げられる。これによって、クレーマーではない大部分の客はトクをする。
「消費者独裁」をやめることでトクをするのは、客だけではない。
<「サービスコンセプト」を出すことを一番歓迎したのは客室乗務員です。会社から「そこまでサービスする必要はない」と告げていても、機内でお客さんに他社並みのサービスを求められる場面は多い。「その板挟みにあってちょっと窮屈でした。会社からハッキリした姿勢を示してもらって仕事がしやすくなりました」とほぼすべての客室乗務員が言っています>。
「消費者独裁」をやめることで最も救われるのは、従業員なのだ。従業員は、よほど強い権限を与えられていない限り、客を拒絶したり、追い出すのはむずかしい。しかし、このようにサービスポリシーが最初からはっきりしていれば、堂々と拒絶できる。
「消費者独裁国家」である日本では、消費者はつねに「弱者」かつ「正義」であり、企業はつねに「強者」かつ「悪」と見なされる。消費者を過剰に保護することによって、企業側のコスト上昇を招き、そのコストは従業員や他の消費者にまでひろがる。これが市場取引を減らしてしまい、全体として国の経済を失速させている。
「消費者独裁」では、一部の消費者がコストを押し上げて、そのコストを他の消費者や従業員、会社が負担する、という構造になっている。つまり、「一部の消費者」が全体にタダ乗りしている格好だ。
スカイマークは、この「消費者独裁」を拒絶することで、「消費者独裁」のコスト構造と弊害を、わかりやすく浮き彫りにしてくれる。「消費者独裁」がなくなって困るのは「一部の消費者」だけであり、他の人はみなトクをするのだ。
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http://mojix.org/2010/03/14/shouhisha_dokusai