2012.10.11
クラウドがファイルシステムを不要にする
先日の「ファイルシステムのないPC」では、一般向けのPCは今後、iPadのように「ファイルシステムのない」方向に進んでいくのではないか、といったことを書いた。

なぜ「ファイルシステムのない」方向に行くかというと、ファイルシステムを使いこなすのがむずかしいからだ。しかし、これまではそれがあたり前で、むずかしいファイルシステムをみんな使っていた。ではなぜ、今後はファイルシステムを使わなくてもよくなるかというと、やはり「クラウド」が大きいだろう。

iPad(iOS)では、ファイルシステムが隠蔽されていて、アプリが前面に出ている。アプリから独立したファイルというものはなく、ユーザはファイルを直接さわれない。ファイルを扱う場合は、ファイルを扱えるようなアプリを使って、アプリを通じてファイルを操作する感じになる。

これは従来のPCの感覚でいうと、たしかに面倒だ。しかし、いまはEvernoteやDropboxのようなクラウドサービスがある。このようなクラウドサービスのアプリを使う場合、アプリが操作するデータはネット上にあるので、手元のPCのファイルシステムはどっちみち関係ない。

同じことは、TwitterやFacebookといったサービスのアプリにも言える。これらのアプリが操作するデータはネット上にあるので、手元のPCのファイルシステムはやはり関係がない。

「Web 2.0」の生みの親としても知られるティム・オライリーは、「Web 2.0」を言い出す前、「インターネットOS」という考え方を提唱していた(「CNET Japan 「オライリーのインターネットOS論」」)。「インターネットOS」とはまさに、EvernoteやDropbox、TwitterやFacebookのように、「アプリ」がネットサービスとして提供されるというアーキテクチャのことだ。アプリの実体はPCにインストールされるのではなく、ネット上にある。iOSやAndroidに入れるアプリは、あくまでも操作画面を提供するクライアントアプリに過ぎず、役割としては基本的にブラウザと同じである。

このように、ネットサービス、クラウドサービスがあたりまえの「インターネットOS」時代には、ファイルを手元のPCに置くことはだんだん少なくなる。ブラウザや、そのサービス専用のクライアントアプリを通じて、ネット上にあるデータを操作するわけだ。

ファイルシステムというものがむずかしいのに加えて、アプリがどんどんネット化、クラウド化していき、データもネット上に置かれるようになるにつれ、手元のPCにファイルシステムがある必要性は、だんだん薄くなっていると思う。


関連エントリ:
ファイルシステムのないPC
http://mojix.org/2012/10/08/no-filesystem
Webのターニング・ポイントをとらえた重要文献、ティム・オライリーの 「Web 2.0とは何か」
http://mojix.org/2005/10/01/183828
CNET Japan 「オライリーのインターネットOS論」
http://mojix.org/2004/01/20/120400