田中真紀子文部科学相が新設3大学を不認可に 問題は何か
毎日新聞 - 田中文科相:3大学の新設認めず…審議会の答申覆す(2012年11月02日 12時36分(最終更新 11月02日 14時08分))
http://mainichi.jp/select/news/20121102k0000e040200000c.html
<田中真紀子文部科学相は2日、閣議後の記者会見で「大学設置認可の在り方を抜本的に見直す」と述べ、認可を厳格化する方針を示した。また、大学設置・学校法人審議会が1日に来春の開学認可を答申していた秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大(愛知県)の3件の4年制大学を不認可とした。文科相が審議会答申を覆したのは、省内に資料が残る30年間で初めてで、極めて異例の判断>。
<学校法人が大学を開校したり学部を新増設したりする場合、文科相は審議会にその可否を諮問し、答申を受けて決定する。田中文科相は全国に4年制大学が780(国公立181、私立599)校あることに触れ「大学教育の質が低下している。そのために就職できないことにもつながっている」とし、当面は新設を認めない方針を示した。今後、検討会を設け、メンバーの多くが大学の学長や教授で占められている審議会の在り方を見直す>。
朝日新聞デジタル - 田中文科相、3大学設置認めず 審議会答申覆す(2012年11月2日19時48分)
http://www.asahi.com/politics/update/1102/TKY201211020192.html
<田中真紀子文部科学相は2日、来年度の新設を申請していた3大学について、不認可と決めた。いずれも前日には文科省の大学設置・学校法人審議会が認可を答申していた。答申が覆された例は、少なくとも過去30年間はないという。田中文科相は、同審議会のあり方を抜本的に見直す方針を示した>。
<不認可とされたのは、秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大(愛知県)。いずれも来春の開学を予定していた。藤村修官房長官は2日の記者会見で「文科大臣の政策的な判断」としている。新設するには再申請しなければならず、開学は早くても2014年度になる>。
<同審議会は、大学の学長ら有識者の委員で構成され、学校法人、大学、短大、学部の新設や廃止の妥当性について、文科相の諮問を受け、答申するのが役割。今回、3大学については、法令に適合しているとして、1日に新設を認める答申を出していた>。
<同省によると、審議会の大学設置分科会の正委員15人のうち、10人は現役の学長や教授らで、大学・短大に所属している。田中文科相は2日午前の閣議後会見で、委員の大半が大学関係者であることを問題視し、「多様な視点が必要。大学同士だと遠慮があるかもしれない」と指摘した>。
<また、現在783校ある4年制大学について「競争が激化していて、質や運営に問題があるところがある」とも指摘。また、「事前規制ということではない。イノベーション、改革だ」と説明した。不認可となった3大学の関係者からは「理解できない」「到底承服できない」などの声が上がっている>。
文科省の大学設置・学校法人審議会が11月1日に認可を答申していた3大学について、田中真紀子文部科学相は11月2日、不認可にしたとのこと。すでに大きな反響があるようだが、たしかにこれはめちゃくちゃだ。
「大学の質が低下している」とか、「審議会の人選に問題がある」という認識自体は正しいかもしれない。だからといって、審議会がこれまで調査を進めてきて、前日に認可としていた決定を、その翌日にひっくり返すというのは筋が通らないだろう。すでに進んでいる案件は、特に問題がなければ通して、今後入ってきた案件からは、あたらしい基準を適用すればいい。
今回の田中文科相による不認可決定は、それが「唐突である」「正当な不認可理由がない」「審議会の決定を無視している」「対象の3大学に迷惑・損害を与える」といった点で、問題があるだろう。しかし、より本質的には、「既得権益を守り、あたらしい参入者を排除している」点がもっとも問題だと感じる。
今回、田中文科相が3大学を不認可とした理由は、「大学の質が低下している」ということのようだ。このこと自体は、田中文科相に限らず、比較的多くの人が共有する認識だろう。だとしても、それが新規参入の3大学を排除する理由にはならない。
「大学の質が低下している」ことが問題ならば、やるべきことは「新規参入を認めない」ことではなく、「質の悪い大学を排除する」ことだ。大学の質を判定するために、なんらの認定試験なり判定基準なりを作って、それを満たさない大学は、認可を取り消せばいい。これがいちばんフェアな方法だろう。
田中文科相は、単に前例を踏襲するのをよしとせず、改革・イノベーションを志向する、という基本的なスタンス自体は悪くないと思う。しかし、前日の審議会の決定をひっくり返すのはめちゃくちゃで、唐突すぎる。これでは官僚はもちろん、国民からも共感を得られないだろう。そして何よりも、「大学の質が低下している」という問題を解決するために、「新規参入を認めない」というのでは、むしろ「既得権益を守る」ことになってしまうのだ。これでは改革と逆行してしまう。
大学の質を高め、審議会の人選を見直すといった改革を進めるためにも、今回の3大学は認可として、それとは別に、大学を選別する方法を考えるなり、審議会の人選を見直せばいいと思う。
関連:
NHKニュース - 認可見送り 田中大臣決定に波紋広がる(2012年11月2日 20時51分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121102/k10013215801000.html
スポニチ - 真紀子文科相暴走“史上初”答申覆し3大学不認可(2012年11月3日 06:00)
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/11/03/kiji/K20121103004472990.html
関連エントリ:
大学が多すぎる
http://mojix.org/2012/07/07/daigaku-oosugi
「下流大学」はなぜ必要とされるのか
http://mojix.org/2009/05/06/karyuu_daigaku
http://mainichi.jp/select/news/20121102k0000e040200000c.html
<田中真紀子文部科学相は2日、閣議後の記者会見で「大学設置認可の在り方を抜本的に見直す」と述べ、認可を厳格化する方針を示した。また、大学設置・学校法人審議会が1日に来春の開学認可を答申していた秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大(愛知県)の3件の4年制大学を不認可とした。文科相が審議会答申を覆したのは、省内に資料が残る30年間で初めてで、極めて異例の判断>。
<学校法人が大学を開校したり学部を新増設したりする場合、文科相は審議会にその可否を諮問し、答申を受けて決定する。田中文科相は全国に4年制大学が780(国公立181、私立599)校あることに触れ「大学教育の質が低下している。そのために就職できないことにもつながっている」とし、当面は新設を認めない方針を示した。今後、検討会を設け、メンバーの多くが大学の学長や教授で占められている審議会の在り方を見直す>。
朝日新聞デジタル - 田中文科相、3大学設置認めず 審議会答申覆す(2012年11月2日19時48分)
http://www.asahi.com/politics/update/1102/TKY201211020192.html
<田中真紀子文部科学相は2日、来年度の新設を申請していた3大学について、不認可と決めた。いずれも前日には文科省の大学設置・学校法人審議会が認可を答申していた。答申が覆された例は、少なくとも過去30年間はないという。田中文科相は、同審議会のあり方を抜本的に見直す方針を示した>。
<不認可とされたのは、秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大(愛知県)。いずれも来春の開学を予定していた。藤村修官房長官は2日の記者会見で「文科大臣の政策的な判断」としている。新設するには再申請しなければならず、開学は早くても2014年度になる>。
<同審議会は、大学の学長ら有識者の委員で構成され、学校法人、大学、短大、学部の新設や廃止の妥当性について、文科相の諮問を受け、答申するのが役割。今回、3大学については、法令に適合しているとして、1日に新設を認める答申を出していた>。
<同省によると、審議会の大学設置分科会の正委員15人のうち、10人は現役の学長や教授らで、大学・短大に所属している。田中文科相は2日午前の閣議後会見で、委員の大半が大学関係者であることを問題視し、「多様な視点が必要。大学同士だと遠慮があるかもしれない」と指摘した>。
<また、現在783校ある4年制大学について「競争が激化していて、質や運営に問題があるところがある」とも指摘。また、「事前規制ということではない。イノベーション、改革だ」と説明した。不認可となった3大学の関係者からは「理解できない」「到底承服できない」などの声が上がっている>。
文科省の大学設置・学校法人審議会が11月1日に認可を答申していた3大学について、田中真紀子文部科学相は11月2日、不認可にしたとのこと。すでに大きな反響があるようだが、たしかにこれはめちゃくちゃだ。
「大学の質が低下している」とか、「審議会の人選に問題がある」という認識自体は正しいかもしれない。だからといって、審議会がこれまで調査を進めてきて、前日に認可としていた決定を、その翌日にひっくり返すというのは筋が通らないだろう。すでに進んでいる案件は、特に問題がなければ通して、今後入ってきた案件からは、あたらしい基準を適用すればいい。
今回の田中文科相による不認可決定は、それが「唐突である」「正当な不認可理由がない」「審議会の決定を無視している」「対象の3大学に迷惑・損害を与える」といった点で、問題があるだろう。しかし、より本質的には、「既得権益を守り、あたらしい参入者を排除している」点がもっとも問題だと感じる。
今回、田中文科相が3大学を不認可とした理由は、「大学の質が低下している」ということのようだ。このこと自体は、田中文科相に限らず、比較的多くの人が共有する認識だろう。だとしても、それが新規参入の3大学を排除する理由にはならない。
「大学の質が低下している」ことが問題ならば、やるべきことは「新規参入を認めない」ことではなく、「質の悪い大学を排除する」ことだ。大学の質を判定するために、なんらの認定試験なり判定基準なりを作って、それを満たさない大学は、認可を取り消せばいい。これがいちばんフェアな方法だろう。
田中文科相は、単に前例を踏襲するのをよしとせず、改革・イノベーションを志向する、という基本的なスタンス自体は悪くないと思う。しかし、前日の審議会の決定をひっくり返すのはめちゃくちゃで、唐突すぎる。これでは官僚はもちろん、国民からも共感を得られないだろう。そして何よりも、「大学の質が低下している」という問題を解決するために、「新規参入を認めない」というのでは、むしろ「既得権益を守る」ことになってしまうのだ。これでは改革と逆行してしまう。
大学の質を高め、審議会の人選を見直すといった改革を進めるためにも、今回の3大学は認可として、それとは別に、大学を選別する方法を考えるなり、審議会の人選を見直せばいいと思う。
関連:
NHKニュース - 認可見送り 田中大臣決定に波紋広がる(2012年11月2日 20時51分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121102/k10013215801000.html
スポニチ - 真紀子文科相暴走“史上初”答申覆し3大学不認可(2012年11月3日 06:00)
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/11/03/kiji/K20121103004472990.html
関連エントリ:
大学が多すぎる
http://mojix.org/2012/07/07/daigaku-oosugi
「下流大学」はなぜ必要とされるのか
http://mojix.org/2009/05/06/karyuu_daigaku