2005.09.29
革命か、トンデモ本か - 中根康雄 『絶妙な速メモ(速記)の技術』
中根康雄 『絶妙な速メモ(速記)の技術』という本がスゴい。


中根康雄『絶妙な速メモ(速記)の技術』(明日香出版社)

著者は中根速記学校の理事長で、そこで教えている「中根式」は、日本の四大速記方式(衆議院式、参議院式、早稲田式、中根式)の1つだという。その中根式を元に書かれたのがこの本だ。

中根式は、書かなくてもわかるものは、なるべく書かないという一種の「情報圧縮」を用いている。
この本のタスキに出ている例でいうと、

「販売月間」 → 「

となるのだ(「ハ」「バ」「カ」は上つき、「ゲ」は下つき。「バ」はそれに下線)。

このように漢字でできた単語は、「ハン」「バイ」「ゲッ」「カン」のように、音読みが多い。音読みでは、このように「○ン」「○イ」「○ッ」「○ー」のような音が多いので、その2文字目を省略し、上つきや下つき、下線、ひらがな表記などであらわすという方法だ。


同書p.97のイラストより

以前、カナモジカイ漢字について書いたが、私は日本語の表記方法にとても興味がある。この本を見たときも、私のそのアンテナが「ピンときた」のだった。

まだ途中までしか読んでいないが、ここまでラディカルな「日本語の解体」はちょっと見たことがない。この荒療治を見ると、カナモジカイ流のカナ表記すら、ソフトに思えてくる。

この本で提案されている表記は、通常の表記とあまりにもかけ離れているので、一見、トンデモ本のように見えなくもない。しかし私は、革命的なものを感じた。そしてこの表記自体は使えないと思う人でも、日本語の表記に興味のある人にとっては、面白い論点がたくさん含まれているので、ぜひ一読をオススメする。

この本の想定読者は、マインドマップ(コンセプトマップ、ミームマップ)、ライフハックなどに興味のある「ネット世代の若いビジネスパーソン」だろう。

しかしカタカナをベースにして、促音(「○ッ」)を省略するあたりは、「ケテーイ」といった2ちゃんねる用語にも近い感触がある。2ちゃんねる用語や、ギャル文字をよろこんで使うような若い世代も、この速メモ表記を「感覚的に」すんなり受け入れやすい気がする。

「日本語のカナ表記」は、このネット・ケータイ時代に、福沢諭吉や前島密、山下芳太郎らがまったく予想しなかったかたちで、よみがえりつつあるのかもしれない。